日本経済新聞の「社長100人アンケート」で、原子力発電所の新増設を支持する声が過半となった。再稼働を進めるべきだとの答えも7割に達した。地政学リスクの高まりでエネルギー安全保障の重要性が増し、企業は安定供給を求める。世界的な脱炭素の流れの中で、再生可能エネルギー目標を引き上げるべきだとの声は8割を超えた。

アンケートは国内主要企業の社長(会長などを含む)を対象に5月29日~6月14日に実施し、144社から回答を得た。政府は2024年度中にまとめる次期エネルギー基本計画で40年度の電源構成目標を示す予定で、経営者に日本が向かうべきエネルギー政策の方向性などについて聞いた。

基本計画では、50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標の達成に向け再生エネと原子力の活用を促す。次世代革新炉の導入などで中長期的に原発を活用することも検討されている。

アンケートでは原発の新増設について「新型炉のみ新増設すべき」が32.1%、「新型炉以外も含め新増設すべき」が22.6%で、合わせて54.7%だった。

11年の東日本大震災後に全原発が一時停止。これまで12基が再稼働し、21基が停止中だ。既設原発の再稼働については、「進めるべき」との回答が71.3%に上った。理由(複数回答)は「安定供給」が90.9%と最も多く、「エネルギー自給率の向上」(77.9%)が続いた。

火力発電に依存する日本は、天然ガスや石炭価格に電気代が左右される。ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫でエネルギー供給のサプライチェーンが分断するとの懸念が生じたほか、円安も重なり電気料金は上がった。生成AI(人工知能)利用やデータセンター需要の拡大で、エネルギー使用量が増えることが予想される。安定した電力の確保は企業活動に欠かせない。

塩野義製薬の手代木功社長は「昨今の燃料費高騰やエネルギー安全保障の観点から火力発電一辺倒の状況は好ましくない」とし、「ベース電源となり得る原発の維持・拡大は必要」と指摘する。

政府の次期エネルギー基本計画では、電源構成目標が注目される。21年度に策定した現行計画は30年度に原発比率を20~22%(22年度は5.5%)にする方針を示した。

40年度の原発比率として妥当な割合を聞くと30年度計画と同じ「20~22%」が36.4%で最も多く、「23~29%」と答えた企業が20.0%と続いた。3割以上にすべきと答えた経営者も17%超いた。

6月の主要7カ国(G7)首脳会議では30年代前半を念頭に、排出削減対策をとらない石炭火力を段階的にゼロにする方針が示された。アンケートでは「段階的にゼロにすべき」または「ただちにゼロにすべき」との回答が約7割に上った。

再生可能エネルギーの拡大を求める声も多い。政府は22年度に21.7%だった再エネ比率を30年度に36~38%に高める目標を掲げた。40年度に目指すべき妥当な割合を聞いたところ、「39~49%」が41.1%、「5割以上」が40.2%となり、30年度の目標水準より高めるべきだと考える経営者が8割を超えた。