マイクソフト共同創業者が見る未来
人口知能(AI)は人類に破壊的影響をもたらすのか?
人々を失業に追いやってしまうのか?
専門家の間では議論百出だ。

米マイクロソフト共同創業者で億万長者のビル・ゲイツ氏が見る未来は前向きだ。われわれ全員が自分専用のAI秘書を持つようになる。近い将来に。

米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏 
ゲイツ氏はAIのポテンシャルに大きな期待を寄せている。

11月9日付のブログ記事で「2023年になってもソフトウエアは全然使いものにならない」と断じたうえで、「向こう5年以内に状況は劇的に変わる」と予測する。

自ら提案するAI秘書
どのように変わるのだろうか。

自分のデバイス上でさまざまな作業を行っているユーザーをイメージしてみよう。現状ではいくつものアプリをインストールして、それぞれを個別に操作しなければならない。

未来になるとそんな煩わしさから解放される。デバイスに向かって指示を出すだけでいい。日常会話で使う普通の言葉で。AIを搭載した「AIエージェント」が個人秘書として活躍してくれるからだ。

次はブログ記事からの引用だ。
近い将来、インターネットにさえつながっていれば、誰でも個人秘書である AI エージェントを持てるようになる。 AI エージェントはとても賢い。単に指示を待っているだけでなく、自ら提案できる。現在とは比べものにならないほど強力な AI を備えているからだ。
AIエージェントはさまざまなアプリを一括管理してどんな作業でも手際よく処理してくれる。そのうえ学習能力も備えている。時間と共にユーザーに関して詳しくなり、自己改良を続けていくのだ。

未来のAIエージェント
あなたが旅行を計画しているとしよう。現在利用可能なAIチャットボットに聞いたら、自分の予算に見合うホテルを見つけ出してくれるだろうか? まず無理だろう。

未来に登場するAIエージェントは違う。予算内に収まるホテルを探し出し、一覧にして見せてくれるだろう。
というのも、AIエージェントはあなたが毎年いつごろ旅行するのかを把握しているし、あなたが毎年同じ場所に行くのかどうか(あるいは毎年違う場所に行くのかどうか)も把握しているからだ。
それだけではない。あなたが楽しめそうなアクテビティ──アドベンチャーが好きならアドベンチャー関連──を提案してくれるし、あなたの好みに合ったレストランに予約を入れてくれる。

ゲイツ氏は「現状で同じようなサービスを受けるとなるとどうなるか」としたうえで、「おそらく旅行代理店を訪ね、担当者にいろいろと説明しなければならない。言うまでもなく時間も費用もかかる」と指摘する。


生産性向上のツールにもなる
AIエージェントの利用によって生産性も劇的に向上する、とゲイツ氏はみている。

米テック業界では、多くの企業が生産性向上をスローガンに掲げてAI開発競争を展開中だ。筆頭格がマイクロソフトとグーグル。前者は「コパイロット」、後者は「バード」を生産性向上ツールと位置付けている。

しかしコパイロットもバードも力不足で、未来のAIエージェントには太刀打ちできないという。

次もブログ記事からの引用だ。

いい事業アイデアをひらめいたとしよう。その場合、 AI エージェントに相談すれば、ビジネスプランやプレゼン資料の用意だけでなく、最終製品のイメージ画像作成までも支援を得られる。
生産性向上のため企業は全社的にAIエージェントを導入するようになる。

個々の社員は AI エージェントを与えられ、日常的に自由に活用できる。 AI エージェントと常に一緒だから、どんなミーティングに参加しても質問に的確に答えられる。

AIエージェントは安価で普及
米オープンAIのAIチャットボット「チャットGPT」が大成功したことで、AI業界には何十億ドル(何千億円)もの資金が流れ込むようになった。
そんななか、AI開発競争は激化する一方だ。主要プレーヤーはマイクロソフトとグーグルにとどまらない。中国のテック大手バイドゥ(百度)も強力だし、米実業家イーロン・マスク氏のスタートアップ「xAI」も侮れない。
しかし、AIエージェントに関する限り、圧倒的勝者は現れないという。競争が激しいからだ。

ゲイツ氏は次のように書いている。

2023年 だけでも無数の企業が AI 市場に参入している。つまり、未来の AI 市場はとんでもなく激しい競争にさらされているはずだ。必然的に AI エージェントは安くなり、広く普及する。
続けて未来のイメージも示している。

現在、 AI エージェントはワープロや表計算などのソフトに組み込まれている。だが、最終的には単独のソフトとして機能するようになる。仕事中であろうがなかろうが、あなたはいつも AI エージェントに頼れる。経営者がいつも個人秘書に頼っているように。

「友人に花束を贈りましょうか?」と提案するAI
最終的にはAIエージェントは事実上の万能秘書になるという。どんな活動であっても、どんな領域であっても、ユーザーの役に立てるというわけだ。

ゲイツ氏は具体例を二つ挙げている。

一つは友人の手術。AIエージェントはあなたに対して「友人に花束を送りましょうか?」と提案する。実際に花束を送ることになったら、あなたに代わって花屋に注文を入れることもできる。

もう一つは大学時代の旧友との再会。AIエージェントは旧友のAIエージェントと連携し、再会の場所と日時を確定する。さらに、再会当日になり、あなたに「旧友の長男が地元の大学に入学したばかりですよ」とリマインドする。


「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の発明者」で英科学者のティム・バーナーズ・リー氏 
「WWWの発明者」も予測
ゲイツ氏は以前にも「AI革命によって誰もがホワイトカラー秘書を持つ時代がやって来る」と語り、注目を集めたことがある。

だが、同様の予測を行ったテクノロジストはほかにも何人かいる。一人は「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の発明者」として知られる英科学者ティム・バーナーズ・リー氏だ。

同氏は2023年2月に米経済テレビ局CNBCのポッドキャスト番組「ビヨンド・ザ・バレー」にゲストとして登場。出演中に「AIはわれわれの個人データにアクセスし、個人秘書の役割を担うようになる」との見方を示した。

もう一人は英起業家ムスタファ・スレイマン氏。グーグル傘下にあるAI企業ディープマインドの共同創業者である。同年9月にメディアとのインタビューに応じ、「5年以内に誰もがAI搭載の個人秘書を持つようになるだろう」と予測している。