昨年公開された『紺青の拳』がシリーズ最高の国内興行収入93.7億円を記録し、2012年の『11人目のストライカー』から8作連続で右肩上がりとなっている劇場版『名探偵コナン』シリーズ。必然的に24作目となる今年の『緋色の弾丸』でさらに記録を伸ばし、悲願でもある100億円の大台を狙いたいところではあるが、おそらく昨今の新型コロナウイルスの影響ばかりは避けて通れないだろう。



 現時点ですでに、春休みからゴールデンウィークにかけてのルーチンでもある東宝のアニメ映画の先陣を切る『映画ドラえもん』の最新作が公開延期となり、本作の前売り券も発売が見合わせとなっている。おそらく多くのファンが、いつ東宝が本作の公開に関する最新情報を発表するのかと、期待半分心配半分で待っていることだろう。急速に感染拡大が進んでいるヨーロッパ諸国やアメリカを中心に相次いで映画館が閉鎖され、営業を続けている日本国内でも大幅に動員が落ちているのが現状だ。しかも海外では大きなヒットが見込める作品や、日本国内では若年層をメインターゲットに据えた作品の多くが公開延期という選択を取っていることから考えるに、どちらにも該当する本作がその例に倣う可能性は非常に高いと考えられる。

 さて、閑話休題。今回の『緋色の弾丸』のストーリーについて現状でわかっていることを整理しておきたい。いかにも2020年というタイミングを意識したかのように、オリンピックを彷彿とさせる世界最大のスポーツの祭典“ワールド・スポーツ・ゲームス”の開催を控える東京を舞台にした本作。その裏で起きる連続拉致事件と、最高時速1000km/hを誇るリニアの暴走。そしてシリーズの人気キャラクターのひとりであるFBIの赤井秀一の過去が絡み合って展開していくということが、予告編の段階で判明している情報だ。

 近年の劇場版『名探偵コナン』シリーズがこれほどまでに好調をキープしつづけている理由を考えると、熟考するまでもなくそのスケール感と練り込まれた脚本によって生み出される娯楽性の高さにあると断言できる。毎週放送されているテレビ版はミステリーとキャラクターの整理に特化し、劇場版になるとそこにダイナミックなアクションと複雑に絡み合うドラマ性が加えられていく。もっぱら作画監督によるディテールの差こそあれど、テレビ版や劇場版の初期と比較しても全体的の絵のタッチに突飛な変化がないことや、毎回冒頭のオープニング映像で必要な前知識を提供してくれることなど、初めて『名探偵コナン』という作品に触れる人や、しばらく間隔が開いた人でも問題なく作品の世界に入ることができるという安心設計は特筆すべきポイントといえよう。

 しかも今回の脚本を務めるのは、シリーズ屈指の傑作(と筆者は信じてやまないのだが)『純黒の悪夢』や『ゼロの執行人』を手掛けた櫻井武晴となれば、否が応でも期待値は上がる。前者では赤井に加えて(赤井はそれ以前の『異次元の狙撃手』で大学院生の沖矢昴として登場しているが)、赤井と並ぶ人気を誇る公安警察の安室透を劇場版に初登場させると、後者でその安室の物語を深掘りして警察組織の闇に迫っていった。ということは、今回の『緋色の弾丸』は赤井が紐解かれる順番というわけだ。さらに『異次元の狙撃手』以来の劇場版登場となる世良真純、劇場版初登場となる羽田秀吉、そしてメアリー世良といった“赤井ファミリー”が集結するとなれば、これは想像を超えるドラマ性の高さも期待できるのではないだろうか。

 彼ら“赤井ファミリー”は原作の「ラム編」でも重要人物として描かれているだけに、おそらく劇場版で描かれる内容が原作の今後の展開に影響していくことは間違いない。いずれにしても、まずは当面の事態が収束して本作が無事に公開され、赤井が“100億の男”となることを願うばかりだ。ちょうどHuluで赤井の登場するテレビエピソードをまとめた特集が組まれており、近年の劇場版作品も続々配信されるとのことなので、念のためおさらいしておくというのも有意義な待ち方かもしれない。

久保田和馬