近年、中高年で転倒や転落による中心性頚髄となる方が増えています。
これは言葉のとおり、頚髄の中心部が損傷を受けて、中心部以外は損傷を免れる病態です。
頚髄の中心部は上肢の神経の通り道なので、肩を中心として上肢機能が非常に低下します。
よって、よくある症状として肩がほとんど上がらない、または動かないが、手指は少し動く、また体幹といって背中とお腹の筋肉(これを体幹筋群)と下肢は上肢と比べよく動くというようになります。
リハビリでは動かない上肢機能を高めようと、また、患者さんの希望である上肢機能を高めようと必死になって受傷早期から筋トレに励みます。
これが誤ったリハビリです。
神経に傷を負って、リハビリしても簡単には神経は回復しません。
原点に戻って考え直します。
まず、頚髄損傷になると整形外科医や脳神経外科医が頚椎の安定性が保たれているかどうかを評価し、手術の適否や安定性の確保の手技を検討します。
ほとんどの病院の術前・術後はベッド上安静で頚椎の固定です。
術後は頚椎カラーかハローベストなどの固定を強いられます。
頚椎が固定されると人間の体は自然と固定する方向、つまり筋肉を内部方向に収縮させ体の柔軟性を失わせます。
同時に、頚部の手術による術部の痛みも内部方向の固定に働き、益々、体を硬くしていきます。これにより背中や腰の筋肉を緊張させる方向に力が自然と働いてきます。
さらに、ベッド臥床では褥瘡予防のためのフカフカなマットレスに一日のほとんどを過ごすため、体は安定性を得ようとベッドを押し付ける方向、つまり頚椎を伸展させ、肩甲骨をベッドを押し付け、腰部も緊張する方向へ働きます。
以上により、体幹はかまぼこ板のようになり、柔軟性を失います。これにより座った時や立った時にバランスがとりにくくなり、ますます、体幹を緊張させてどんどん体幹は柔軟性を失います。
このような状態が継続すると、筋の硬さは完成し、不可逆的な組織の変性が起きてしまいます。
体は筋肉や皮膚を通じてすべてつながっているので、体の硬さは上肢や下肢にも悪影響を及ぼして、硬い動き、非効率な動き、美しくない動き、ロボット様の動きになっていくのです。
こんな体の状況で筋トレをしても、動けない体を作るだけです。
このような状況では、体幹の柔軟性を得るためのリハビリや、体幹筋の背部筋の緊張を落とす、または抜く(遠心性収縮を利用)、または体幹の前面筋を使うリハビリが重要となります。
もちろん、体幹の協調的な動きには上肢と下肢を連動させることが重要です。
患者さんは力がないから力をつけるためのリハビリをしたいと訴えるかもしれませんが、時期を誤った筋トレは百害あって一利なしです。
セラピストも患者側も共通理解をしてリハビリを進めていき、患者が持つポテンシャルを最大にまで引き上げていきたいですね。
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