(抜粋)
インフレという現象は、理屈で考えてみると、時々それがなぜそんな悪いことなのかわからなくなる時がある。ある意味で、経済発展の歴史というのは同時にインフレの歴史であるとも言えなくもない。実際百年も前には1 円であれ1 ポンドであれ1 ドルであれ、それは大変な値打ちをもっていた。しかしそれらの現在の価値は見ての通りであり、経済の発展過程では貨幣価値というものは概ね低下を続けるのが普通である。
これは形の上では数万倍の「インフレ」であるが、しかしだからといってわれわれが物価の数万倍の上昇に苦しんでいるわけではあるまい。つまりわれわれが稼いでいる給料の額も数字の上では数万倍にもなっており、給料と物価がともに同じ倍率で上昇する限り、実際の生活には何の変化もないからである。
疑問とはこのことで、要するにインフレとはただ面倒で苛立たしいだけのことに過ぎず、本当は誰も損をしているわけではないのではないかということである。
この疑問を本格的に発展させたものとして「貨幣の中立性」と呼ばれる考え方が存在している。貨幣の上で起こる数字の変化は実体経済に影響を及ぼす力をもたず、貨幣は経済に対して中立的な存在だということになるわけで、これが「貨幣の中立性」の考えである。
この考え方は、自由放任経済の「神の手」を信奉する人々がしばしば好む思考様式だと言えるだろう。
つまり人間にとって本当に必要な実体経済は神の手によってしっかりした秩序を与えられているということ。
こうした考えを色濃く反映した理論として「フィッシャーの貨幣数量説」などのものがあり、詳論は省くがこれは要するに先ほどのピラミッド型図形の要領で、社会内部の品物の総量にラベルの枚数を対応させれば、自動的にラベルの表面に数字- - これは物価水準に相当する- - が浮かび上がってくるわけだが、逆に言えばその数字に枚数をかければ、社会における貨幣経済全体の規模が割り出せるという話である。
いずれにせよ、例のピラミッド型図形のように単なる対応でラベルの上の数字が決定されるという基本思想には変わりはなく、もし本当にそれで貨幣のすべてが言い尽くせるとするならば、確かに実体経済への影響は基本的にはないと見るのが正しい。一方それに対してケインズ学派は、貨幣のもたらす撹乱要因は遥かに大きく、それが実体経済に及ぼす影響もしばしば馬鹿にならないものとみる。では本当のところはどうなのだろうか。
(コメント)
インフレが起きた歴史を眺めたいものだ。
貨幣は中立か否かで議論があるようだ。
中立でないとなにがおこるものなのか気になる。
インフレという現象は、理屈で考えてみると、時々それがなぜそんな悪いことなのかわからなくなる時がある。ある意味で、経済発展の歴史というのは同時にインフレの歴史であるとも言えなくもない。実際百年も前には1 円であれ1 ポンドであれ1 ドルであれ、それは大変な値打ちをもっていた。しかしそれらの現在の価値は見ての通りであり、経済の発展過程では貨幣価値というものは概ね低下を続けるのが普通である。
これは形の上では数万倍の「インフレ」であるが、しかしだからといってわれわれが物価の数万倍の上昇に苦しんでいるわけではあるまい。つまりわれわれが稼いでいる給料の額も数字の上では数万倍にもなっており、給料と物価がともに同じ倍率で上昇する限り、実際の生活には何の変化もないからである。
疑問とはこのことで、要するにインフレとはただ面倒で苛立たしいだけのことに過ぎず、本当は誰も損をしているわけではないのではないかということである。
この疑問を本格的に発展させたものとして「貨幣の中立性」と呼ばれる考え方が存在している。貨幣の上で起こる数字の変化は実体経済に影響を及ぼす力をもたず、貨幣は経済に対して中立的な存在だということになるわけで、これが「貨幣の中立性」の考えである。
この考え方は、自由放任経済の「神の手」を信奉する人々がしばしば好む思考様式だと言えるだろう。
つまり人間にとって本当に必要な実体経済は神の手によってしっかりした秩序を与えられているということ。
こうした考えを色濃く反映した理論として「フィッシャーの貨幣数量説」などのものがあり、詳論は省くがこれは要するに先ほどのピラミッド型図形の要領で、社会内部の品物の総量にラベルの枚数を対応させれば、自動的にラベルの表面に数字- - これは物価水準に相当する- - が浮かび上がってくるわけだが、逆に言えばその数字に枚数をかければ、社会における貨幣経済全体の規模が割り出せるという話である。
いずれにせよ、例のピラミッド型図形のように単なる対応でラベルの上の数字が決定されるという基本思想には変わりはなく、もし本当にそれで貨幣のすべてが言い尽くせるとするならば、確かに実体経済への影響は基本的にはないと見るのが正しい。一方それに対してケインズ学派は、貨幣のもたらす撹乱要因は遥かに大きく、それが実体経済に及ぼす影響もしばしば馬鹿にならないものとみる。では本当のところはどうなのだろうか。
(コメント)
インフレが起きた歴史を眺めたいものだ。
貨幣は中立か否かで議論があるようだ。
中立でないとなにがおこるものなのか気になる。