もともと石油というものには他の一次産品とは異なる特殊性があった。

それは、北側工業国の経済成長に伴ってほとんどそれに比例するように石油消費も増大し、ちょうどコバンザメのように石油による収入を増やしていくことができたということであり、この点で農産物などとは大きな違いがある。

北側工業経済のアキレス腱たる石油という切り札を手に、産油国は結束して原油の供給量を故意に削減し、原油価格の高騰を演出して、値上げ分を巨額のオイル・マネーとして北側からがっぽりせしめることに成功したのである。

ところでこの種の値上げカルテルを作る際には、誰かが抜け駆けして自分だけがこっそりと安い価格を提示し、市場の人気を集めて注文を独り占めしないよう、何か強力な結束の核が必要となる。

アラブ産油国にとっては、共通の敵であるイスラエルとの戦争こそがそれであり、彼らは結束の核として第四次中東戦争を引き起こし、それによって成功した原油値上げによって、北側工業国を石油ショックのパニックの中に投げ込んだのである。

産油国の繁栄に黄昏が訪れるにはさほど時間はかからなかった。産油国が調子に乗って値上げを続けている間、西側諸国は情報テクノロジーなど、石油をあまり使わない技術の開発に力を入れ、気づいたときにはちょっとやそっとの原油生産削減ぐらいでは追いつかないぐらいに需給関係が変化してしまっていたのである。

そのため80年代初頭に、「逆オイルショック」つまり原油価格の暴落が起こり、再び北側( というより西側) の圧倒的優位が確定して現在に至っている。

ただし、中国などが工業化して大量の原材料を要求するようになってくると、資源の奪い合いによって一次産品価格の急騰は現実のものとなるのではないかとの予測は、五分五分以上のものとして語られることが多いからである。


(コメント)
石油はいろんなところで産出するとは限らず、また工業国の経済成長と比例して需要があるためいろいろアラブ産油国はカードを持っているようである。

それと驚いたのは第四次中東戦争。彼らは結束の核のためにイスラエルとの戦争を起こしているというところ。wikipediaには書いてなかったが、戦争が起こる原因はシンプルというか、経済的な利益が原因なのかと思うとなんともいえん。産油国はもっとスマートに結束できないもんかなぁ。