君と僕の物語(第六話) | 若宮桂のブログ・空と海がぶつかる場所
自宅近所にあるスーパーマーケット。
お店の前はちょっとした広場になっていて、夏にはこの辺りの人が集まって夏祭りなんか行われたりする。

自分は昨年引っ越したけど、転居先は同じ町内なので今も最寄りのスーパーとして変わらず。だいたい毎日利用している。

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この写真は、1995年10月1日に撮影されたもの。

そうあの頃。このスーパーへ買い物に出かけると、お店の前にいつも人懐っこいあいつがいて、よく歩み寄って来た。

スリスリ。

ゴロゴロ。

スーパーの前の広場で、行き交う人たちに、なんかチョーダイ!とばかりに。

可愛い女の仔。
チャームポイントは、先が二股に分かれていたしっぽ。

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この猫さんのことを妹は、ふたばと呼んでいた。

いつもはついて来たりしない猫さん。この写真を撮った日は、どういうワケか自宅下までくっついてきた。

ごはんをあげるとおいしそうに食べ、満足したのか、ひとりスーパーの方へ帰っていった。

人懐っこく、何でもよく食べ、聞き分けのよい大人しい猫だった。
一緒に暮らしたら楽しいだろう。

しかしこの頃家にはすでに先住猫がいた。
この物語では何度か書いてきたけど、部屋は狭く、多頭飼いできるような経済力も無かった。




お気に入りの場所 軒下の冷たいコンクリート
夜は星見上げ君と過ごした日々 思い出す

人見知りの僕 誰からも愛される君
対照的だけど いつもどこでも一緒だった

ある日、君がいなくなった みんな心配をしていた
どこへ行ってしまったの? なにも言わずに

君を探した 昼寝をした屋根の上 塀を越えた抜け道
君はいなくなった 僕をひとり、残して

お気に入りの場所 ママのひざの上 温かいな
心地いい眠気が 夢の世界へ連れてゆく

あの頃みたいに 駆け回ったりもできるんだ
君と競争した あの路地や森への迷路

目を覚ますとそこに 君はいるはずもなく
どこへ行ってしまったの?なにも言わずに

君を探した かくれんぼした草むらも 大きな駐車場も
僕は年をとった 君を、探し続けて

目も耳も悪くなって 身体も思うように動かない
君が帰ってきたら したいことが沢山あるのに

君を探した 昼寝をした屋根の上 塀を越えた抜け道
君はいなくなった 僕をひとり、残して

君を探した かくれんぼした草むらも 大きな駐車場も
僕は年をとった 君を、探し続けて

君を探した 戻らない日々の面影 薄れる君の記憶
僕は年をとった 君を想い続けて

僕は今も探してる

君の姿探してる

作詞作曲、吉崎硝子。「君と僕の物語」より。




ある日、ふたばはいなくなった。

来る日も来る日も、あのスーパーマーケットへ立ち寄っても、姿は無かった。
そうして1週間から10日ほど経った。

ふたばは、スーパーの辺りを歩いていた妹の前に突然現れたという。
自分も会いに行ったが、げっそりと痩せていた。

これは、あとで妹がスーパーの店員さんから聞いた話。

ふたばは、仔猫を生んだらしい。
しかしそれは死産、または生まれてすぐ全部死に、お店の周囲にいくつかの死体が横たわっていたらしい。
それを見た近所の住民が、ふたばを車に乗せて遠くへ運び、捨ててきたということだった。

しかし、ふたばは帰って来た。
よく、猫には帰巣する習性など無いと語られるが、あれは嘘だ。

げっそりと痩せこけたふたば。

ごはんをあげるくらいしか、自分にはできなかった。




吉崎硝子さんの楽曲を聴いていて思い出した、ちいさなちいさな、いのちの物語。「君と僕の物語」。
この日記は不定期で連載中です。
お読みくださり、ありがとうございます。

吉崎硝子さんは、本日3日より3日連続代官山NOMADでライブを行います。
自分の2月のライブ遠征は2月4日。ライブ3DAYSの2日目を観にいきます。

3月1日。
吉崎硝子ワンマンライブ「境界線はどこですか?」開催決定!

@ライブハウス代官山NOMAD
東京都渋谷区猿楽町3-9 アベニューサイド代官山3F
TEL/FAX 03-3770-3723

19時開場、19時半開演
チケット前売り\2,500(当日\2,800)+1drink

※当日ご来場の方全員に映像作品「君と僕の物語」限定DVDがプレゼントされます




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……その後のふたば。

聞いた話では、よくスーパーの前でごはんをあげていた、近所のおばあさんが連れて帰り、一緒に暮らすようになったそうです。