【幻惑酒場の誘惑】❻稀守池實
われ等のオープンカーを路上駐車し、とあるオープンカフェのテーブルにすわりビアを注文した。
また余談だが、ある日本人の女の友人が、ニューオーリンズで有名な「ハリケーン」というカクテルを飲みたくて、バーテンに注文するのだが、
「ハイネケン」が来た。仕方なくハイネケンビアを飲んで、次の店でもう一度ハリケーンを頼むのだが、ハイネケンしか来ない。イチャモンつけること出来なくて今度もハイネケンを飲み、今度こそはと次の店でオーダーするのだが、結局滞在中ハリケーンというカクテルにはありつけなかったそうだ。
「差別だわ!」
「違う。発音がなってないだけさ!」
キーラーゴでは、リゾート中のセレブレイティなアメリカ人が思い思いのスタイルで寛いでいた。
流石にギリシアのヌーディストビーチみたいにビーチク出しているモダンな女性はいなかったが。
地元の少年たちが、カフェの目の前のビーチで飛び込んだりして遊んでいた。
眺めながら僕たちはビアを飲んでいた。すると、そのカフェに突然巨人のように大きく臥体がっちりした兵士のような黒人の男が、
大またで進撃してきた。
何事か騒がしさを感じるようなその男は、店の奥に入っていった。
恐る恐る奥を覗くと、その大男はピアノの前にどかっと座り、グローブのような手でピアノを弾き始めた。否、叩き始めた。そして歌い始めた。サッチモの「ホワット ア ワンダフル ワールド」だった。
背筋がぞくぞくっとして、止まらなかった。
奇跡的タイミングだったのか、それとも毎日歌っているのか、そんなことは、どうでもよかった。僕たちとしては、感動的、アンビリーバブルなシーンであった。
横のテーブルの紳士淑女のカップルが教えてくれた。
「彼は、ベトナム帰りなのよ」
言い知れぬアメリカならではの衝撃的な感動だった。やっぱり来てよかった。
世界は感動に満ち溢れている!
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