ギリシア人は、日出る東の彼方の日本という国に非常に興味あるということは、わかった。お互い世界に類を見ない歴史の誇りを持っている仲間でもあるというように。
僕ら自身の心の復活祭でもあった。
旅の最後には、必ずと言っていいほどサントリーニ島で数日過ごした。
“フランコ”という洞窟のバーがあった。
スペイン人がオーナーのバーで、いかにも独裁者フランコへの逆説的バーだそうだが、フランコの名を冠していた。
絶壁に張り出したテーブルに座りウーゾやギリシアのワインレッティーナをがぶ飲みした。
エーゲ海を航行する豪華客船を真下に見て、酒も進んでいく。
洞窟の奥から流れてくるベートーベンの交響曲が“モルダウ”スメタナに変わった。
空は、雲一つなく真っ青である。見たこともない大きな太陽が目の前にあり、静かに海に沈んでいく。酔いの進み具合より太陽の沈み具合のスピードが増していく。
空が真っ赤に染まり始めたかと思うと瑞雲とは明らかに違う虹を構成する色が真っ青な空にグラデーションで鮮明に現れてくる。
「こんな色、見たことないね」
「日本じゃ見られないさ。どこにもないさ」
「一生に一度は、来るべき所だよね」
「極楽浄土の彩かな」
ゆっくり話している間もなく、どんと音がしたかのように太陽が落ちた。そして空は一瞬真っ黒になったかと思ったら満天の星が一気に現出した。
流れる星の隙間もないくらいの満天である。
「こんなに星ってたくさんあったのか」
「幸せを感じるのは、宇宙や自然と対話できた時だね」
「永遠の意味が分かった時だね。見えたか何が、永遠が、海に沈む太陽だ。ランボーの詩さ」
「何もあくせく生きていくことは、ないよね」
僕たちは、何も言う気がなくなった。無言は酒を勧めなかった。



