極楽金魚ビシャモン❹―②
「まあ、ええがな。人生いろいろ。ビシャモンのコンセプトは“武士の心を持って、ハッピィ、ラッキィ、ネイチャー”なのです。楽しく、幸運を掴んで、自然体に、がモットーじゃ。心に留めて生きて行こう。しばらく私と付き合うと、わかりますよ。その意味が」
「わかりました。僕の頭が狂ったのか知れないけど、現実らしいからしょうがない」
「そうじゃ、居直りもイナトミも大切よ、人生は。な、いろいろあるかもしれんけどハッピィに生きようゼヨ。爽やかに行ってきなさい。えさも頼むで、中華は嫌いじゃ、やっぱ和風での」
「えさに、そんなのあるのかい。まあ、ハッピィに行ってくるよ。留守を頼んだぞ」
「おうよ、その調子。その調子」
ケイスケが着替えて金魚鉢みたら、出目金はすでに仰向けになって、マブタを閉じていた。するとおもむろに仰向けのままマブタをゾロっと開けて、
「ケイスケ君、もう一言言うことがあったワイ。ビシャモンのモットー“ハッピィ、ラッキィ、ネイチャー”はのう、どこにあるかというとじゃのう、君の足元や一番身近なところにあるということじゃ。忘れないことさ。このことを。身近なとこじゃ。青年よ進みなはれ。では、本日はさらばじゃ。寝るゼヨ」
「金魚にマブタあったっけ」
「わしはな、ドライアイじゃけんの」
ビシャモンは大きなマブタをゾロっと閉じた。
「水の中にいるのに、ドライアイなの。わからん。しかし金魚にまぶたあったっけ」
イナトミケイスケは首をかしげながら、アパートを出た。
❺-①に続く