極楽金魚ビシャモン❶-②

「終わったら、お前持ち帰るなりどうにかしろよ」

プロデューサーは捨てゼリフを言って、まさか買ってくるなんてとぶつくさいいながら、現場から去っていった。

 

 本番では、見た目そのままの出演タレントの名前が出た。大きな目玉をおっぱいに例えたのだ。

衣装の煌びやかさも赤や金の色合いも似て、こんなにオッパイってパンパンに腫れ上がるのかと思うくらいのオッパイを張り出した謎の爆乳セレブタレント姉妹がターゲットにされた。

それはそれなりに笑いをとった。プロデューサーとディレクターの狙い通りにはなったようだけど。

撮影で使った金魚鉢とその中に出目金がケイスケの部屋に居座っているのだった。

ひどい二日酔いで金魚の目と同じように腫れぼったい眼をしたケイスケは、幻視の中に叫ぶ出目金を見ていた。“叫ぶ詩人の会”は知っているけど、叫ぶ出目金は知らない。

「あーあ。飲みすぎで頭完全にイカレてしまった。」

ケイスケはよろよろと立ち上げり、冷蔵庫にあるミネラルウォーターを探したが、昨日コンビニで買ってきたはずのボトルは見当たらなかった。水道水を飲んだ。

「不思議と東京の水はうまいよな。海外に行ったら水道水を飲むなんて、相当腹痛を覚悟しなければならないよな」

一人ごちながら、簡易ベッドに戻って横になった。

病院をロケセットに使うドラマのロケをしたときに、捨てるという病室の簡易ベッドをもらってきたやつだ。

ロケ中美術セットのセッティング待ち時間の雑談の中で

「自分は独身アパート住まいでベッドがないのだけど、こういうサイズのベッドは独身者にはちょうど良いですね」

などと話していたら、ロケ終了後プロデューサーが

「おい、イナトミ。このベッド、捨てるらしいからもらって帰って良いらしいぞ。自分で運べるなら」

お達しがありもらってきたやつだ。それは制作費で処分する予算がかからなくて渡りに船だとプロデューサーのせこい考えのはずだ。

終了後仲間に手伝ってもらって分解し、帰りのロケ車で自分のうちまでひと回りしてもらって手に入れたやつだった。

誰かがこのベッドの上でご臨終なさったベッドかもしれなかった。幻視や幻聴が聞こえるのは、崇りかもしれないと思いながら恐る恐る金魚鉢に眼をやった。

昨日は、ロケ終了後AD仲間とともに水が漏れないように蓋をして金魚鉢抱えながら飲み屋に直行した。

Thank you. See you again

 

YouTube動画小説・エッセイ投稿中(フリーBGM付き)