トゥールーズ・ロングステイ2023(14日目・その5・終) | 草木染の毛糸屋さん

トゥールーズ・ロングステイ2023(14日目・その5・終)

2023年9月18日(月)

大人の文化祭?

この夜、この公園に来たのにはわけがあった。トゥールーズに着いてから、どこかの博物館か教会で夫がすてきな案内葉書を見つけてきたのだ。

【星空映画会 2023年夏】と書いてある。裏面には会場となる30弱の場所が星印で示された地図が載っている。それとQRコード。地図を見てもピンとこないのでネットで調べたら、この公園で18日午後9時から短編映画の上映があるという。それでいそいそ出てきたのだ。9月が夏かどうか、それが何月のイベントなのか確認せず、日にちと時間と場所だけを頼りに出てきたのだが、結果から言うと、それは8月のイベントで(夏と書いてあるだろ! 9月は秋じゃ!という声が聞こえてきそうだ)、簡単に言うと、そそっかしいというか単なる早とちりだった。

会場に来てみたら、映画会がありそうな雰囲気はまったくなかった。

そう言えば、昼過ぎくらいからずっと対岸から音楽が鳴り響いていた… 

公園には特設ステージが設けられ、いくつものテントが並んでいる。食べ物やアート作品を売っているみたいだ。

その時のわたしの気持ちは、【オズの魔法使い】のドロシーと同じ。「ここって映画会場じゃないみたい…」

それでも受付らしいものがあったので、「こんばんは。映画の上映があるかと思って来てみたんだけど」と聞いてみた。受付の筋骨たくましいひげ面の男性は「フランス語、わかる?大丈夫そうだね。今日から1週間ここでフェスが開かれるんだ。あなたが言ってる映画会ではないけど、音楽や映画、アートいろんな発表があるよ。パンフレットをあげる。その中にプログラムが書かれているから、興味がありそうなものを見ていって」

といって、60ページもある分厚いパンフレットをくれた。

【第12回 FIFIGROT】と書いてある。FIFIGROTって何?どうやら下に書かれた festical International du Film Grolandais de Toulouseの略のようだ。が、全くピン来ない。Grolandというのはウィキペディアによると一連のテレビ番組や映画の舞台となる架空の国で、フランスとヨーロッパの微小国家の風刺として作成されたという。場所は非公開だから、フェスの期間中はトゥールーズがGrolandの首都になるという設定で映画(およびアート)フェスが行われるらしい。中のプログラムを見てみると、短編映画が続々上映される予定。パンフレットには上映される映画の紹介などもあって、盛沢山だ。12回も続けているのだから、老舗のイベントだ。ただし、今夜は映画上映はなく、アペロコンサートとヴェルニサージ(展覧会などの会期前招待公開)が行われる。

なんだかよくわからないが、せっかく来たのだから少し楽しんでいこう。

メインステージではバンドがライブ中。女性もいたので語弊を承知で言えば、いかにも【おやじバンド】。その後に出てきたバンドも似たような感じ。大人の文化祭みたいなのだ。60年代っぽいハードロックがあったり、パンクがあったり… 自分たちが青春の頃に夢中になった音楽をやってる。川べりだから、だれにも遠慮することなく、大音響で大好きだった曲を演奏している、サイコーだよね。

テントを見て回ると、自作の漫画やイラスト絵葉書を売っている人たちもいる。みんな屋台で軽食をつまみ、音楽を聴きながらおしゃべりしたり踊ったり。

夜の川辺は昼間の熱波がどこへやら、涼しい川風に吹かれて、いい気分。

空中通路から見た会場の様子

ひとしきり会場の熱気を楽しんで、わたしたちは【家】に帰った。明日は初の遠足だ。夜更かしは厳禁なのだ。

トゥールーズの良いところは、夜10時近くに薄暗い橋の上や街路を歩いていても、治安の不安を感じないことだ。女性の一人歩きも見かけるし、少なくとも日本と同じくらい治安が良い。だからと言って、油断は禁物だけれど。