トゥールーズ・ロングステイ2023(2日目・その2) | 草木染の毛糸屋さん

トゥールーズ・ロングステイ2023(2日目・その2)

2023年9月6日(水)

街歩きに出る前に作戦を立てた。昨日買ったパス・ツーリズムは72時間有効なので、今日の午後から使い始めれば土曜日の昼まで有効だ。土曜日にシテ・ド・レスパスに行く予定(その週末にジャパンウィークがあるため)で、その入場料で割引を受けたい。なので、午前中は無料で見学できる教会(有料エリアを有する教会もある)を訪れることにした。

街の雰囲気を楽しみながら散歩を兼ねて、サン・エチエンヌ大聖堂まで歩くことに決めた。

 

ブランシュ通りから散歩に出発

【家】はガロンヌ川沿いのリュシアン・ロンバール河岸通りから一筋入ったブランシュ通りにある。サン・ピエール広場とラ・ドラード広場を結ぶ細い道(抜け道のような)で、昼間はよそ者が来るような通りではないのだけれど、夕方から営業する飲食店が案外に多くて、夜はけっこう明るい。騒々しいわけではない。わたしたちの【家】のある建物の隣はレストラン、その隣はスポーツバー、お向かいも飲食店やドーナツ屋さん、テイクアウト専門店などが並んでいる。エスニック料理の店も多い。

朝のブランシュ通り(サン・ピエール広場に向かって)

ブランシュ通りをラ・ドラード広場の方に出ると、一気に視界が開ける。左手に見えるのは小・中学校の裏門になるのかな? 夕方になると、子どもを迎えに来た親たちがたまっている。石畳が美しい。

さらに進むと、右手にラ・ドラード広場とガロンヌ川が見えてくる。ラ・ドラード広場は道路よりも低いところに設けられ方形の緑地で、階段またはスロープで降りていける。ラ・ドラード広場を囲むように道は大きく迂回しているのだが、迂回する道に沿ってラ・ドラード広場を見下ろすように、点々とベンチが置かれている。右上に映っているのが上の写真の小・中学校の裏門、中央上がブランシュ通りの入口だ。

ベンチは一人用と二人用があり、歩道に固定されている。こういうベンチはここのように歩道が広いところや車が制限されている道、広場やAlléeと呼ばれる緑道に置かれている。要所要所にベンチがあるのは旅行者にはありがたい。朝ホテルなり【家】を出たら、夕方帰るまで外にいることが多い旅行者にとって、カフェやレストランのような店に入らないと落ち着いて座れないというのは過酷だもの。旅行者でなくとも、多くのジモティが昼食時はもちろん、夕方にも憩いの時を過ごしていた。特に、ここはガロンヌ川の川風が気持ち良く、対岸の建物が夕日に映えて輝くさまを見るだけで和める。

トゥールーズにもホームレスはいる。いるけれど、彼らはこういうところには来ない。ホームレスの多くが観光ビザで入国した不法滞在者だと思われ、こんなところにいたら官憲の目に触れてしまうからだ。

この写真のもうひとつの肝は、右下に映っている自転車のピクトグラムだ。トゥールーズでは車道と歩道の間に自転車専用道路がある。自転車専用道路というのは自転車だけでなく、電動車いすや電動スクーターを含む。歩道が広いところでは、歩道の半分を自動車専用道路にしている。サン・ピエール広場では広場の中に自動車が通行してよい領域が指定されている。この写真ではわかりにくいのだが、ピクトグラムだけでなく、銀色の円が点々と配置されて自動車専用道路を示している。それができるほど広い歩道か車道がふつうであることは羨ましい限りだけれど、歩道を疾走してくる自転車ほど怖いものはないので、このような区分けはありがたい。

別の通りだが、こんなわかりやすいピクトグラムもある。

それから、ベンチのあるところにはごみ箱がひとつくらいはある。アイアンのフレームにナイロン袋が据え付けられたもので、分別は要求されていないから、あらゆる種類のごみが入っている。ゴミ処理センターで最低限の分別はされるのだと思いたい。写真はないのだけど、アイアンのフレームは円形で、1/4弧くらいはアイアンがなく、口が開いている。その口から作業員はナイロン袋を引っ張り出して、ごみを収集していた。環境の邪魔にならないデザインというだけでなく、作業効率を考えたデザインになっている。一般の可燃ごみは朝9時には収集されていて、その日の夜には結構な量がたまっているが、広場などのごみは1日に複数回収集されているのだと思う。滞在中あふれているのを見たことがなかった。オーバーツーリズムで悲鳴を上げている京都のごみ問題にも参考になるといいのだけど。まずいところに座られたくないのであれば、座るなと声高に言うのではなく、座っていい場所を設けるべきだし、ごみを放られたくないのなら、放っていい場所を指定してやるべきなのだと思う。美しい自然や街並みに溶け込みつつ、ジモティに迷惑を掛けない解決がデザインには可能だと思う。