Genesis(ジェネシス)といえば,80年代中盤から「世界で最も忙しい男」と呼ばれたPhil Collins(フィル・コリンズ)が在籍したイギリスのプログレッシブ・ロック・バンドです。
1969年にアルバム「From Genesis to Revelation(邦題:創世記)」ででビューしました。
私がジェネシスと出会ったのは,1977年に発売された2枚組ライヴ「Seconds Out」でした。
そもそもヴォーカリストに存在意義を感じていなかったフィルが,それまでのヴォーカリスト Peter Gabriel(ピーター・ガブリエル)が脱退したため,ドラマー兼ヴォーカリストとして活躍をしだした時期です。
そんな彼も,しまいにはヴォーカリストとしてソロにまでなって大ブレイクしたのは,なんとも皮肉なお話です。
その過渡期のライヴ。
バンドはこのあと,少しずつポップさを加えていき,大作主義から脱却し,フィルが並行して行ったソロ活動でのヒットも手伝い,80年代から90年代前半にかけてポップ・チャートをにぎわすことになります。
だからこの「Seconds Out」の位置づけを考えると,「俺たちいつまで過去をひきずってるんだ?」「でもそもそも俺たちはプログレバンドだろ?」なんて自問自答の声が聞こえるようです。
で,私が紹介したい曲というのは1973年発表のアルバム「Selling England by the Pound(邦題:月影の騎士)」に収録されていた「Firth of Fifth(ファース・オブ・フィフス)」という曲です,
この曲は,いまだにこの「Seconds Out」の演奏を超えるものを聴いたことがありません。
それでは,動画を紹介する前に,私なりの動画解説?楽曲解説?を。
まずは,フィルを見て驚く。
「こいつはどこの新興宗教の教祖だ?」「怪しいことして誰か探してるんじゃないんか?」
なんて思わせるひげ面をしています。
もっと,すっきりした顔で歌って欲しいのに。
あらら,あんない怪しい腕の動きは,なにを取り込むためでしょうか。
なんて言われながらも,歌い出すとなんとまともなのでしょう。
そして,そのうち,ステージ前方にいたはずのフィルがいなくなってしまいます。
よく見ると,Tony Bnaks(トニー・バンクス)のキーボードのソロの後ろで静かにビートを打っているのがフィルですね。
トニーのソロの終盤,ドラムが盛り上がるだけでこんなにも音楽が盛り上がるではありませんが。
Steve Hackett(ステーヴ・ハケット)のギターでも同じようにドラムで盛り上げたりするのですが,その前にスティーヴの弾くギターは,速弾きを極力減らし,優しいフレーズを重ねたもの。
このフレーズがいつまでも心に残ります。
そしてフィルとChester Thompson(チェスター・トンプソン)のダブル・ドラムスで盛り上げていきます。
フィルのなんと楽しそうな叩き方。
スティーヴのソロが盛り上がった後,マイナー・キーで暗いイメージのフレーズを,ある1点でメジャー・キーに変わる。
この瞬間が大好きなんです。目の前がぱぁーっと開けたようで。
長いトンネルを抜け出て明るい日差しが舞い込んだような感覚を味わわせてくれます。
1小節のなかではなく,数小節を1つの枠と大きく考えて叩き方を作り込んでいくフィルのドラムはさすがです。
なんて,この曲の魅力は文字だけで表せるだけの語彙は私にはないようです。
ということで,あらためて今日は,この曲!
ジェネシスが1977年に発売したライヴ・アルバム「Seconds Out」から,「ファース・オブ・フィフス」をご覧下さい。