(二次創作小説)必殺10・第二話 | けいていのブログ

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仕事のことを思いつくままに綴ります。

10月の締めは、9月末に第一話をUPしたきりの二次創作小説の第二話を。

とりあえず、第一話はアメ限定を解除しておきます。

まず、こちらからどうぞ!⇒第一話・はるなん登場その1


*なお、以下の小説は完全にフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。
その点をご理解の上、お楽しみいただければ幸いです。


 第二話・はるなん登場その2

彼女たち仕事人4人は絵師であるはるなんの作業場兼住まいで共同生活をしている。
はるなん=春菜は美人画の絵描き。それを神社や縁日で売っている。
あゆみん=亜佑美は町飛脚。仕事の早さは有名である。
まーは大道芸人。物まねや声まねで縁日を盛り上げる。
どぅも同じく。不思議な道具を作って注目を集めている。


ガヤガヤガヤ 「ただいまより新春富くじの抽選会を執り行います」
まるでウグイスのような綺麗に澄んだ巫女の声が神社の境内に響き亘る。
数段高い本殿前には大きなくじ引きの箱が置かれており、
その周りには仰々しい恰好の神職が並び、神社の長老・宮司の姿も見える。
境内は大勢の観客で埋め尽くされており、
それを取り囲むような出店の一角にはるなんたちは居た。
当然、はるなん・まーどぅの3人は集まる人目当ての商売に来ている。
「あ、始まったよ!」どぅは仕事の手を止め本殿の方を見やり、
「ほんとね、あゆみん、当たるといいわね。でも、由加ちゃん、かっこいいな・・・」
はるなんも同じように本殿の巫女の方へ目線を送った。
「それでは、一の当たりから」ウグイスの巫女の声が響くと共に、
「よーし、こい!」本殿前に陣取ったあゆみが気合いの声を上げる。
「やー!」そして、突き手の男が勢いよく箱の中へ錐を突き入れ、
取り出された札は神職が確認し、ウグイスの巫女に渡される。
「さくら組の・・・」
「おぉ!」
「11番!」
「あれま・・・」あゆみんのくじはハズレ。
「よーし、次だ!次!」
冨くじは次々と抽選がなされていく・・・

「突き止めはおとめ組の07番です」
ガヤガヤガヤ ウグイスの巫女から最後のくじの番号が発表された。
「ちぇ、結局、何も当たらねえでやんの・・・」
あゆみんはトボトボとはるなんたちの出店に戻ってきた。
「あゆみん、お疲れ様。そう簡単に当たるものじゃないわよ」
「うん・・・」
「でもでもぉ、なんか変だよぉ!」
「ああ、まーちゃんも気づいたか」
「ん?二人ともどうしたの?」
「ああ、当たった人って、米問屋の加賀屋さんの人が多かったような・・・」
どぅは歓声を上げて喜び合っている一団を見て言う。
「確かに当たり100本中、18本が加賀屋さんの関係者。
特に賞金の多い区切り番は10本中7本が加賀屋の番頭さんや親族ですね」
「な、そうだろ?って、おまえ、誰だよ!」
いつの間にか4人のそばに立っていた少女が詳しく解説を入れてきた。
「あ、六番町の道重屋の者で、さくらと言います」
「だから、何の用だよ!」どぅは不審なその少女に声を荒げるが、
「でも、かわいいーー!」まーが間に割って入ってきた。
「まーさん、有難うございます。いえ、皆さんの鋭い観察力に驚いたものですから」
あくまで、さくらと名乗った少女は丁寧に言う。
「う、あ、そう」どぅは彼女の妙な気迫に圧されてたじろぐ。
「何かイカサマでもされているのかな?」
はるなんは本殿でお辞儀をする知り合いの巫女・由加の方を振り返った。
「あ、でも、あなた、どうしてまーちゃんの名前を?」
そして、はるなんはさくらの方に向き直ったが、既にその姿はなかったのである。
「あれ?さくらぁ、どこ行った?」
「いつの間に・・・道重屋、何者?」
はるなんは全く気配を感じさせなかったその娘。に背筋が凍るのを感じた。


「ここね・・・」
次の日、賑やかな通りに面した大きな呉服屋・道重屋の前にはるなんは居た。
人通りが多いだけでなく、店への出入りもかなり多い。
「確か、若い女主人が切り盛りしてるって・・・」
はるなんは意を決して広い間口にかかった暖簾をくぐった。
「いらしゃいませ~」若い女の声が響いたかと思うと、
「何をお求めですか?」直ぐにその売り子の女が寄ってくる。
けっこうガタイのいいその女は満面の笑みではるなんに迫った。
「あ、あの・・・」はるなんはちょっとたじろいでいると、
「ようこそ」奥から穏やかな笑みを湛えた主人らしき女が出てきた。
「あ、はい・・・」はるなんはその美貌に一瞬見惚れたが、
「奥へどうぞ。お待ちしてました」
「は、はい・・・」予想通りの呼びかけに注意深く付き従ったのである。

「どうぞ」
「はい」はるなんは主人に客間に通され、
「おすず、お茶を」
「はっ!さゆみ様」主人は売り子の女にもてなしを命じた。
ビクッ 入室したはるなんは僅かな殺気を感じ、主人に気づかれないよう身構えたが、
「さ、お座りになって」主人は普通に自然に座布団を勧める。
「は、はい」はるなんは警戒を解かずにゆっくりと座った。
「この前はうちの子がごめんなさいね」
「あ、いえ・・さくらさんでしたっけ?」
「そうよ、驚かすのが好きな子でね。貴女を呼んできてって言っただけなのにね。
 でも、貴女はこうやって来てくれた。ま、一応役目は果たしたってとこね」
「私に何の用・・」「貴女には絵を描いてほしいのよ」二人の声が重なった。
「え、絵ですか?」
「ええ、うちで売る着物の見本絵をね」
「は、はい・・?」
「若い子向けに色々な組み合わせの見本を作ってほしいの」
女主人・さゆみの用件とははるなんの絵師としての力量を買ってのものらしい。
「え、ええ、私なんかでよければ・・・」
「ありがとう!お願いね。見本は用意させるわ」可愛くしなを作って微笑むさゆみに、
(「可愛い人だわ」)はるなんは警戒の心を少し緩めた。
「で、次は裏の稼業のことなんだけど・・・」しかし、さゆみの次の一言に、
ビクン はるなんは再び身を凍りつかせて、視線を強めた。
「貴女はいったい・・・」
「うふふふ」さゆみははるなんの心を見透かすような笑みを湛えている・・・。


その半刻後、はるなんは重い足取りで自宅へと向かっていた。
「急ぐことはないわ。ゆっくり考えて答えを聞かせてちょうだい」
さゆみの別れ際の言葉を何度も思い出しながら大通りを歩いていると、
タッタッタッ 「あ、はるなん!」
十字路の右側からあゆみんが飛び出してきた。
「え、ああ、どうしたの?」気付くのに遅れたはるなんは慌てる。
「ああ、あの石川神社の由加ちゃんが訪ねてきたんだよ」
「え、うちに?」
「ああ、はるなんを探してたよ。そして、手紙を預かったんだ」
「手紙?」
「ああ、どぅに預けてあるから」
「うん、でも、あゆみんはどうしてここに?」
「ああ、彼女、何か様子が変だったから後を付けてるんだ」
あゆみんは、はるなんの背後の人混みに目を遣る。
「どんなふうに?」
「ああ、すごく困ったというか、泣きそうな顔してた」
「あの人はいつもそんな顔してるけど・・・」
はるなんは由加の顔を思い浮かべて言う
「でもさ、ほんと悲壮な顔をしてた。今にも死にそうな感じだったから・・・
 あ、曲がった・・・私は後を追うから、はるなんは手紙を確認して!」
雑踏の向こうに消えた目標を追って、あゆみんは再び駈け始めた。
「うん、わかった。でも、由加ちゃんに何が・・・」

ガラッ 「あ、はるなん!」「はるにゃんこ!」神妙な面持ちで待っていた二人に、
「うん、あゆみんから聞いたわ。手紙、見せて」はるなんは手短に求める。
「ああ、これだけど・・・」「読んだ?」「まだだけど・・・」
どぅがおずおずと出した手紙をはるなんは急いで手に取り、封を開く。
「まーちゃん、開けずに待ってたんだぞ!えらいだろぉ」
「開けても読めないだろ。で、はるなん、何て書いてあるんだ?」
「あー、どぅ、そんなこと言っていいのかぁ!」
「えっ、えっ、そんな・・」二人のじゃれ合いを余所にはるなんの顔が強張る。
「たしか、あゆみんが追っていった方向は・・・
だ、ダメよ、そこは危ないよ、きっと。由加ちゃん!」

由加からの手紙には昨日の富くじの不正の件について書かれていた。
自分が所属している神社が米問屋・加賀屋と結託してくじの操作を行い、
売上金も賞金も独占しようとしていることを知ってしまい、
そのことを上司の参事(神主)に訊ねたが、逆に叱責された。
それが耐えられず、我慢できずに町奉行に直訴に行きたいと。
手紙は「春菜さん、どうしたらいい?」で終わっていた。
相談内容を手紙にしたため、はるなんに相談に来たが、不在だったので
意を決して独りで町奉行所へ向かったのだと想像できる。
しかし、不正を訴えに行ったところで、相手にされる訳がない。
下手をすると神社や米問屋から命を狙われかねないであろう。
「あゆみん、走れ! あゆみん、急いで! 彼女を守って」・・・


「へえ、同い年なんだ」「ええ、そうみたいですね」
はるなんは由加と初めて会った時のことを思い出している。
石川神社の境内で美人画の絵を売っていたところへ、
加賀国の同系列の神社から異動で来たばかりの由加が話しかけてきた。
そこから二人の関係は始まる。
「星を見上げるのが好きなんですよ」嬉しそうに青空を見上げ語る由加に、
「あー、私も!昔、親友とよく一緒に見てたなあ」同じようにはるなんは空を見た。
仕事の合間に何となく顔を合わせ語り合ううちに仲良くなっていき、
「春菜さん、やったよ!決まったよ!」
今回の富くじの仕切りが決まった時も嬉しそうに報告してきた・・・


「失礼します」夕闇迫る江戸南町奉行所の門前。出てきた由加が深くお辞儀をする。
「ふう、良かった・・・」
物陰で見張っていたはるなんは安堵の声を漏らし、
スタッ 「ま、申し立てだけで返されたようだよ」
「あ、あゆみん、お疲れ様」
塀の内側に忍び込んでいたあゆみんも戻ってきた。
「由加ちゃん!」
「あ、春菜さんに亜佑美さん」由加も二人を見つけ、ホッと表情を緩める。
「もう心配したわよ」はるなんの呼びかけにも、
「ええ、ごめんなさい。でも、やっぱり悪いことは許せませんから」
「でも、無茶だろ? 申し立てするなんてさ」あゆみんの言葉にも、
「でも、お奉行様にも申告して下さるそうですから」由加はしっかり返答した。
「そうなのね。でも、もうこのことは奉行所に任せましょう」

「どこへ行っていた?」石川神社の裏口で、
「友達に相談に行ってました。遅くなって申し訳ありません・・・」
由加は付き添ってきた二人を振り返ってから上司の問いに素直に頭を下げた。
「バカなことを言い出しおってからに・・・心配したぞ」
「はい、すみませんでした」
「もう夜だぞ。早く入って賄いを手伝いなさい」
「はい・・・春菜さん、亜佑美さん、ありがとう」
二人に頭を下げて由加は神社内へ入っていった。
「一応、殺意のような変な気はなかったけどな」
「うん、あの神主さんは、そんなことができる人じゃないわ」
はるなんとあゆみんは注意深く上司の雰囲気と神社内の気配を探っていた。
「どうしよう?見張りについた方がいいかな?」
「そうね。あゆみん、飛脚の仕事がないならお願いするわ。後で交代するから」
「わかった、変な動きがなければいいけど・・・」
(続く)


これで10月は一応、毎日ブログUPすることができた。
11月もまた色々と忙しい。