横浜の「黄金町」。
洒落た雑貨屋やギャラリーが並ぶ
アートの町として生まれかわったらしい。
黄金町のイメージと言えば・・・
黒澤明監督の「天国と地獄」では、
誘拐犯人の医学生が潜む
横浜屈指の暗黒街。
麻薬（ヒロポン）中毒患者と
売春婦がたむろしていた。
ほんの１０年ほど前まで、
京急本線の高架下周辺には、
飲食店を装った売春宿が
ひしめいていたそうだ。
黄金町の駅を降りて、
まず大岡川沿いに歩くと、
プレハブの建物が並んでいる。
間口の狭い一軒ごとに
レンタルスペースになっていて、
ギャラリーだったり
建築家のオフィスだったり
小説家の事務所だったり。
カフェだったりしている。
高架下にはガラス張りの
モダンな建物が新築され、
ギャラリー風の雑貨屋や、
アパレルショップや
古本屋などのあるが、
流行っている様子はない。
１０月１９日から
「黄金町バザール」という
イベントが開催されるので、
その時は賑わうのかもしれないが。
国内外のアーティストの
住まいと仕事場を提供して、
作品が展示されるらしのだけど、
ボクが訪れたとき（１０月５日）は
ギャラリーは作品制作中で、
町には人影も非常に少なかった。
地方都市とか、農村とかで
年に一度、アート祭りを開催して
観光客を呼ぶというのは聞くけど、
そういった類いなんだろうか？
二人がやっとすれ違えるほどの
奥まった細い脇道に入ると、
破屋のツレコミ旅館があったり、
怪しいマッサージ店跡などが
ぽつんぽつんと点在していて、
かつての麻薬の巣窟、売春街の
独特の佇まいが残っている。
そんな建物とアートの対比は
なんとも面白いのだけど・・・
自然発生的に面白い店が
集まってきたというのではない
妙な違和感を感じさせるのだ。
アート雑貨やアパレルも、
厳しいことを言わせてもらえば、
”いまさら”感のある
アーティストの創作で、
まったく新鮮さには欠けている。
正直、こんなお店やギャラリーで、
商売として成り立つのか？と
疑問に思えるクオリティの低さ。
（ごめんなさい）
なんとも釈然としない
気分でブラブラしていたら、
「らいむらいと」という
渋いネーミングのお店を発見！
黄金町バザールの中心エリア
黄金町駅と日ノ出町駅の
中間点あたりにある
三角州の一番目立つ場所に
過去の亡霊のように建っている。
廃屋にしかみえないが、
店内に人影が見えるし、
店の横には洗濯物があって、
生活感は感じられる。
ただ、干されていた洗濯物は、
龍の絵のTシャツで・・・
”素人”とは思えないテイスト。
すると、ポニーテイルの長髪の
髭面のおじいさんが店から出てきた。
何気に派手なTシャツで、
”元祖ヒッピー”？という感じ。
親しげに話しかけてきた
そのおじいさんと話をして、
いろんな謎が解けたのだった。
おじいさんは神奈川の生まれで、
終戦当時６歳で生みの親とは
何らかの理由で別れてしまったそうだ。
そこで闇市のあった黄金町へ
辿り着いて在日韓国人の夫婦によって
育ててもらったということ。
麻薬で捕まって６年刑務所暮らし。
スクラップ集めで生計を立て、
育ての親は焼き肉屋を
黄金町でしていたらしい。
育ての親が亡くなってからは、
中国系の女性と出会ったそうで、
おそらく、この女性と
「らいむらいと」という
お店をやっていたのだろう。
もしかして・・・
一階はスナック、
二階で売春という
営業していたのかもしれない。
ただ、２００４年末には
神奈川県警による徹底した
浄化によって売春宿は
すべて姿を消したようだ。
おじいさんが一緒にいた女性も
その時に去ってしまったらしい。
今では住所を取り上げられて、
立ち退きを常に迫られているという。
思えば・・・１９６０年代の
経済高度成長時期から、
日本の各地で再開発という名目で
貧しく虐げられてきた人々を
排除してきたような気がする。
ここ１０年ほどは
古民家を上手に再利用したり、
横丁のような古い一角を
”おしゃれ”と解釈する
風潮にはなってきているけど。
売春街のままで良かったのに、
とは思わないけれど、
行政の手による”アートな町”への
変革は何とも中途半端な気がする。
何らかの営利を生み出そうとする
民間の発想が出来ないかぎり、
本当の意味で人を呼び込む
町づくりなんてできない。
高架下に並ぶガラス張りの建物が、
あさはかな”町おこし”の象徴のように
ボクには見えてしまった。
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