2023、11、27
エイブラハム・リンカーン(1809〜1865)
ー聖書と共に生きた大統領ー

「リンカーンの苦難の人生」

エイブラハム・リンカーンは南北戦争に勝利し、奴隷解放を行なった第16代大統領として知られています。しかし彼の人生は苦難の連続でした。
リンカーンは、1809年にケンタッキー州のロック・スプリングで大工トマス・リンカーンと妻ナンシーの第二子として生まれます。7歳の時に両親の農場が破産し、9歳の時には母ナンシーが栄養不良と過労のため34 歳でなくなります。彼は小学校を中退して、その後学校教育を受けることはありませんでした。

「リンカーンと聖書」

この苦難の人生でリンカーンを支えたのが聖書でした。リンカーンと聖書について考えるとき、母ナンシーの存在を忘れることができません。ナンシーは、朝早く起きて聖書を読み、祈りを欠かしませんでした。彼女は、リンカーンに「私はお前に百エーカー(12万2000坪)の農場を残すよりも、この一冊の聖書をあげることができて心からうれしく思います」と言い、聖書を読むことの大事さを教えました。リンカーンは、母の信仰から受けた影響について次のように述べています。
「私が まだ幼く文字も読めない頃から、母は毎日聖書を読んでくれ、いつも私の
ために祈ってくれた。丸太小屋で読んだ聖書のみことばと祈りの声が、今でも私の
心に響いている。私の今日、私の希望、私のすべてのものは、天使のような私の母
から受け継いだものだ。」
彼は1861年の大統領就任演説で、「この古い聖書は、母から私に受け継がれた聖書です。私は、この聖書によって大統領となり、この場所に立つことができました。私は聖書のみことばによってこの国を治めることを約束します。」と語っています。
このリンカーン聖書は、トランプ、そしてバイデンの大統領就任宣誓においても用いられました。
リンカーンが聖書について語った言葉、「聖書は神が人間に賜った最も素晴らしい贈り物である。人間の幸福にとって望ましいものは、すべて聖書の中に含まれています。」は有名です。この言葉は、解放された黒人奴隷たちが、リンカーンに革の聖書に金箔を施した高価な聖書(その表紙に黒人奴隷の足枷を解くリンカーンの姿が刻まれている)を送った時に、リンカーンが語ったと言われています。

「リンカーンの使命ー米国の統一と奴隷解放」

リンカーンが1961年3月に大統領に就任した時に、奴隷制を支持する南部諸州が既に中央政府からの分離を表明していました。彼の大統領の第一の課題は、再び統合を成し遂げ、連邦を再建することでした。しかし同時に、彼の最も重要な政策として奴隷解放がありました。彼は、奴隷制度がいかに神の意思に反しているかを、1854年10月12日の演説において語っています。
「奴隷制度は、正義と愛に反する人間の利己心に基づいています。80年余り前、こ
の国は神の下ですべての人間は平等に創造されたと宣言したことによって始まり
ました。確かな事実は、この二種類の異なった考えが共存することはできないとい
うことです。」
また彼は、大統領に当選してからの1862年の日記に、「私は、奴隷を解放すると神に約束した。」と書き記し、1963年1月に奴隷解放の大統領令を出します。

「南北戦争におけるリンカーンの祈り」

リンカーンは、奴隷制度維持を求める南部諸州との間で南北戦争を余儀なくされます。彼は、聖書に親しむと同時に祈りの人でした。南北戦争の初期の頃は北軍の敗戦の連続でした。南部軍には、ロバート・リー将軍という名将がいましたが、北軍の指揮官の無能ぶりは歴然としていました。大統領の執務室の側を通ると、祈っているリンカーンの声が聞こえてきたそうです。
「愛する神さま! 私はたりないしもべです。私の力では成すことはできません。新し
い力を与えて下さい。勇気を失わないように助けて下さい。最後まで神様と共に歩
めるように私をお守りください。この民族を哀れみ、一日も早く戦争が終わり、統
一した国を作ることができるように助けてください。戦争で死んでいく若者たち
をお守りください。」
ウクライナ戦争がおこなれている現在、このような悲痛な叫びを持って神に心を注ぎ出して祈る指導者は、日本に、そして世界にどれだけいるでしょうか。

「リンカーンの暗殺」

南北戦争で北軍が最終的に勝利したのは1865年4月9日でした。4月14日の午後、リンカーン大統領はフォード劇場で暗殺され56歳で死去します。暗殺される前に、リンカーンは妻のメアリー・トッドに次のように語っていたそうです。
「大統領の任期が終わったら、ヨーロッパ旅行を一度して、次に祝福の地カナンの
聖地旅行をしてみたいな。特にエルサレムの地を踏んでみたい。そこは、イエス様
の息づかいが感じられ、主の足跡がある所だから。主が直接私たちの罪の重荷を背
負ってくださり、苦しみの十字架にかけられたゴルゴダの丘、聖なるエルム。」
この言葉は、リンカーンがいかに主イエス・キリストの十字架の苦しみによって自分の罪が赦され、神との親しい交わりに導かれたかを示しています。
「キリストは自ら十字架の上で、私たちの罪をその 身に負われた。それは、私たち
が罪を離れ、義のために生きるため。その打ち傷のゆえに、あなたがたは癒され
た。」(ペテロの手紙第一2:24)

「リンカーンの遺産」

アメリカの第26代大統領のセオドア・ルーズベルト(1858〜1919)は、次のように証言しています。
「リンカーン大統領は、聖書で作られた人だ。彼は聖書の中から学んだ真理を、自
分の生活に適用し、自分の一生をこの上なく栄光ある人生にした。彼は聖書とと
もに呼吸し、聖書とともに生きた偉大な神の人である。」