久々に読んで面白かった本。
本中で近代アメリカ史を要約してわかりやすく説明してくれている。
近代アメリカ史の事を理解してアメリカ文学を読むととても理解できる。
特にレイモンドカーヴァーの章が面白かった。

既にレイモンドカーヴァーのいくつかの短編は読んではいたが、読んだあとにモヤっとする感じの正体がイマイチわからなかったが、この本を読んでカーヴァーを読み返してみるととてもしっくりきた。

本を読んだ後に心の奥底に深い余韻が残る。
今ドキの言葉でいうところのエモいということでしょうか。

本中から抜粋します。

「カーヴァーの功績を一言でいえば、それまで言葉をもたなかった人たちに言葉を与えたということかもしれません。彼の作品でこれでもか、と描かれるのは、中流白人たちの失業、経済的な破滅、婚姻関係の破綻などです。題材が題材なので暗いだけのように思える作品も多いのですが、初期の作品には独特の鋭さがありますし、後期の作品には何か光を見いだせないかと模索するようなニュアンスが感じられる。ちょっと優しくて明るい感じに変わるのですが、それでも、単純なハッピーエンドにはならないのがカーヴァーの面白いところです。」

—『教養としてのアメリカ短篇小説』都甲 幸治著

「言葉を持たなかった人たちに言葉を与えた」の部分がとても印象的だった。

カーヴァーの小説の登場人物って結構みんな短気ですぐ怒って感情的になって言い争いになってしまうんですよね。登場人物たちが中流白人社会、もしくは中流社会以下の白人達の設定なので、そんなに語彙力がないんですね。そして途中で争いを辞めてしまってそのまま話が進んでいく。
その場面に残っている心のモヤモヤが、文中に漂っているんですよね。そしてその部分は、読者が「多分こういう風な気持ちなんだろうな」とイメージさせる。そしてそのままラストに進んでいく。イメージの断片があちらこちらで作用して、物語が進んでいくんですね。

こういう本は自分が読んだ本の中ではなかったので目からウロコでしたね。