終身雇用制度とは文字通り、定年まで雇用され続けるという制度です。

これは日本の会社では当たり前の制度であり、且つ実現され続けたものでもあります。

ただ、先日とある有名自動車会社社長による発言でその制度が崩壊しようとしています。

 

先程も言ったとおり、日本の終身雇用制度は神話ではなく、現実としてありました。

そのある社長が会見で

終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた。

と発言したのがすべてのきっかけです。

そもそも、日本で王道とされるキャリアは「できるだけ良い大学を出て、できるだけ良いところに就職」です。

大学のレベルによってあらゆる会社の入りやすさが変わってくるので、大学受験から戦争が始まります。

そうなると高校もより良いところに。

さらに小中学校からお受験!みたいなことになるわけです。

 

しかし、思い返すと、大学を出ることと就職になんの因果関係があるのでしょう。

大学は高等教育を受ける場であって、その殆どがビジネスマンとしてのハウツーを教えてくれるものではありません。

会社員のノウハウを学ぶために大学に行っていたわけではないのに、就職できてしまうのです。

例えば、ドイツなんかは就職前にインターンをするのが当たり前となっております。

大学で勉強だけしてきて実務経験が無い人を雇っても仕方ないから、という最たる例です。

そういった制度があれば大学に行ってから就職という流れが分かるのですが、日本はそうではありません。(もちろん個々人でやっている人もいるので、あくまで全体の傾向の話です。)

結果として、日本の企業の新人研修の長さは異常です。

友人の大手銀行マンは1年間研修と言っていました。

大学生のうちにビジネススキルを国民全体が習慣として/制度として得ていれば、こんなにも長く研修なんてないはずです。

企業としても勉強させて、且つ給料も払うわけですから。

 

では、なぜほとんどの人が日本のシステムに反対しなかったのか。

それが終身雇用制度への安心感です。

終身雇用制度があれば、一度就職すれば人生が保証されます。

ですから、「研修期間のムダ」や「何のための大学なのか」などの問題を置いておいても幸せになれてしまうのです。

そして、今そのシステムが崩壊しようとしているのです。

 

先の社長の発言は終身雇用制度を廃止するという予言なわけです。

もし本当に廃止になってしまえば、これまでの日本企業のあり方がおそらく変わっていくことでしょう。

そうなると、就職方法も今度は変わってきます。

つまり、あらゆる方のこれまでのキャリアが崩壊してしまうのです。

ですから日本は揺れるわけです。

 

不幸中の幸いといいますか、実はこれはとてもいいタイミングでもありました。

この時点で気づいていなければ、日本はリーマンショックのように突然失業者があふれかえる事態になりかねなかったのです。

その原因の一つが2045年に迎えるであろうシンギュラリティです。

人工知能が人間を上回る、というものですね。

シンギュラリティが起こると、人間の職業の大部分は人工知能に変わっていくといわれています。

ですからいずれにせよ終身雇用制度は強制的に終了させられる可能性があったわけです。

それを今回の社長の発言で我々が備えられる、と考えればこれはかなり良いきっかけであります。

 

だからといって安心というわけではありません。

先日日本が貧乏だという記事(リンク)も書きましたが、あれは憶測なんかではありません。

日本のビジネスモデル自体、既に海外と比べてかなり古いと言われています。

終身雇用制度もそのうちのひとつです。

日本が貧乏になった原因のひとつはこの企業体質にあります。

既に遅れていることを自覚して備えなければなりません。

 

というのも、両親の世代ですと100年企業をいう言葉がありました。

100年続くほどすごい企業を指す言葉です。

100年続く企業に入って終身雇用制度があれば本当に安泰なのです。

しかし、それが2000年に入って50年企業と言われ、今は25年と言われています。

そうです、技術革新が起こり続けている昨今、企業の寿命が短くなっています。

大学卒業が22歳だとして、25年後は47歳です。

終身雇用制度があったとしても、私達の還暦まで企業の寿命が持たない時代なのです。

終身雇用制度がなくなるとこの寿命もどんどん短くなります。

悪い意味で企業を守ろうとする人が減りますから。

 

ここ数年で、急速に転職サイトのCMが増えました。

転職しないと人生を全うできないからです。

つまり、転職が当たり前の時代なのです。

転職先が好むような人間はどのような方でしょう?

有名大学卒?大手企業卒?いいえ、即戦力ですよね。

そのためには今までの日本人特有のキャリアの作り方ではいけないのです。

どこの世界に行っても戦えるようなスキルが本当に大切なのです。

最低限の生き抜く力こそが大切なのです。

 

会社に勤めていない人間がこんな事を言うのが、甚だおかしいと思うかもしれません。

しかし、私が言うことに意味があるのです。

なぜなら、私の世界の人は、大学にきちんと通って就職してきた人以上に危機的状況にいます。

就職も転職もそのような概念を持っていないために、です。

このブログの「就職」=一般会社に入ること、ではありませんよ。

職に就くことです。

 

 

下平