文献紹介 パーキンソン病とすくみ足 | Y

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院内の神経難病ワーキンググループに所属しています。


その関係もありパーキンソン病について調べることが、ここ2年で増えました。


で、今回ご紹介させていただく文献はこちらです。
簡潔な文章のみですので、詳細は本論文をみて下さい。
(英語力のない私が紹介しますのであしからず・・・)


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Gait-related cerebral alterrations in patients with Parkinson's disease with freezing of gait

Snijders AH, Leunissen I, Bakker M, Overeem S, Helmich RC, Bloem BR, Toni I.
Brain. 2011 Jan;134:59-72




この文献では、パーキンソン病者を対象にmotor imagery(MI:運動イメージ)想起中の脳活動をfMRIを用いて計測しています。


対象。
すくみ足を呈するパーキンソン病者(FOG+群)12名、すくみ足を呈していないパーキンソン病者(FOG-群)12名、コントロール群21名です。



方法。
各群にはvisual imagery(VI:コントロール)とMI のtaskを実施してもらいます。その際、どの脳領域が活性化しているかfMRIで測定します。VIはあるtargetが歩行路を移動しているイメージ、MIは実際に自分が歩行路を移動している(歩き始め~終わり)イメージを想起してもらいました。また歩行路は2m・4m・6m・8m・10m5段階にわけられ、各々でイメージ時間を計測しています。
パーキンソン病者は歩行路の幅によってもすくみ足の出現を大きく左右されますから、幅の広い・狭いの2種類の歩行路幅を提示し、そのときのイメージ時間も計測しています。

その後、実際に歩行路を歩いてもらいその歩行時間も計測することで、パフォーマンスの関係性を確かめています。



結果。
まずイメージ時間について。FOG-群では歩行路が長くなるにつれ、他群よりもイメージ時間が長くなる傾向にありました。また、FOG-群、FOG+群のイメージ時間は実際の歩行時間と有意な相関を認めました。他の報告ではこのイメージ時間と実際の歩行時間に大きなズレがある場合、転倒リスクを有するといった報告もありますが、結果よりそのようなズレはなかったと考えられます。

運動イメージ中のfMRIについて。
コントロール群ではパーキンソン病者と比較し前帯状回(運動関連領野)、上頭頂小葉(注意の制御など)の活動が高い傾向にありました。
FOG+群は他群と比較し、中脳歩行関連領域(歩行誘発野)の活動が増加し、補足運動野(運動プログラムに関与)の活動が低下していました。さらに、この中脳歩行関連領域の灰白質の萎縮を認めました。
この中脳歩行関連領野の活動増加はすくみ足の重症度、疾病歴との正の相関を認めていまが、萎縮の程度とは相関を認めませんでした。



今回の結果から私が思ったことです。

通常のパーキンソン病では歩行誘発野の活動は抑制されると言われています。基底核ー脳幹の関係性から。

しかしFOG+群では活動が増加し、補足運動野での活動が低下していました。

この結果は、すくみ足が中脳レベルの問題のみでなく、大脳皮質レベルにも問題があることを示唆しています。

つまり、歩行誘発野は下肢交互運動の中枢になりますので、この部位は働いている。しかし、いつ歩き出すのか、いつ歩幅を縮めるのかといった補足運動野から歩行プログラムの命令が降りてこない。

こんな解釈になりました。

ただ解釈に気をつけていただきたいのは、あくまで運動イメージ中の脳活動ということです。




以上です。




パーキンソン病は中脳レベルだけの問題ではありません。間違いなく。

教科書で習うことはもちろん大事、パーキンソン病について理学療法士養成校で学ぶことはホント一部です。たぶんあらゆる疾患に対して共通することだと思いますが。



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こういった文献紹介は簡潔にまとめる作業の練習になるのでいいですね。
できるだけ短時間でまとめられるように。

と言いつつ分かりにくかったらごめんなさい。



(過去記事もご参考になれば)
『パーキンソン病 ~腰曲がり・首下がり~』
『文献紹介 Freezing of gait』





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