娘にとって初めての中間試験が目前に迫っていた。
日曜日の朝、娘が「試験っていつからだっけ? 明日から?」
と聞いてきた。

ひっくり返るほど驚いた。
自分が受ける試験の日程を知らないとは思わなかった。
実際は翌週からだったが、もし本当に明日からだったらどうするつもりだったのか。
腹が立って、「出ていけ!」「外で勉強してこい!」と怒鳴ってしまった。
そして、英語で語順がめちゃくちゃだったり、動詞が無い文を作っていたりしたのが、外で勉強して帰ってきた頃には直っていた。

入学してからも、家で日に1時間以上勉強したことがない。
中学受験の直前期でさえ、1日1時間ほどしか勉強していなかった。

娘の感覚は、一般の人とは恐らく大きく異なる。
後になって分かったことだが、娘のIQは129だった。  
「賢い」というより、
理解の仕方が独特で、得意と不得意の差が極端に大きいタイプ  
と言った方が正確だと思う。

中学受験では、この理解の速さが確かにプラスに働いた。
ただし、これはあくまで「入り口」の話で、
中学・高校と進むにつれて、IQだけでは通用しない世界になる。  
ここから先は、本人の努力が必要になることも、親として感じている。

小学校の頃は、もっと大変だった。
毎朝「学校に行きたくない」とよく言っていて、
先生が朝、家まで迎えに来てくれることもあった。
毎日のように遅刻をしていて、9時ごろに登校していた。

人との距離感を掴むのが苦手で、
本当に仲の良い友達はほとんどいなかったと思う。

忘れ物が多く、
優先順位がつけられず、
やるべきことを後回しにしてしまう。

親としては、
「どうして普通にできないんだろう」
と悩む日が多かった。

そんな娘が、中学に入ってから変わってきた
毎朝6時に起きて、少し遠い学校へ通っている。
表情が明るい。
学校が楽しいと言う。

小学校ではあれほど苦しんでいたのに、
中学では別人のように見える。

なぜなのか。

娘に合っていたのは、「無理に合わせなくていい空気の場所」だったのかもしれない。
いわゆる大学の系列校となる、中高一貫の女子校に通っている。
この学校は、良い意味で「ガツガツしていない」。
異なるベクトルがぶつかり合う世界でもない。

成績至上主義ではない
みんな同じペースを求めない
穏やかな空気が流れている
先生も生徒も、どこか余裕がある

そして、
女子校特有の「人間関係の柔らかさ」も、娘には合っていたのだと思う。  
男子の目線がないことで、必要以上に気を張る場面が減り、
同性同士だからこそ、多少のズレもそのまま受け止めてもらえる。
自分のペースを乱されずにいられるのが、娘には合っていたのだと思う。

娘のように、
マイペース
自分をコントロールするのが苦手
人間関係の距離感を掴むのが難しい
感受性が強い

こういうタイプの子には、
この「ややゆったりした空気」が本当に合っていたのだと思う。

・「姉妹で通う子が多い」という事実が示すもの
クラスを見ていると、
姉妹で通っている子が思いのほか多い。
これは偶然ではない気がする。

姉妹で通わせる家庭は、
教育方針が穏やかで、
子どもの個性を尊重する傾向がある。

つまり、
家庭の空気と学校の空気が似ている子が多い。
娘にとっては、それが居心地の良さに繋がっているのかもしれない。

・「勉強ができる子」よりも、「健やかに過ごせる子」へ
娘は、この学校に入ってから、
いつも「学校が楽しい」と言っている。

親としては、
勉強ができる子になってほしい願いよりも、
「できるだけ自分を押さえ付けずに学生生活を送ってほしい 」 
という気持ちの方が強い。

そのうえで、
中高一貫という安心感がある。
大学進学についても、
内部進学が可能という環境がある。

これは親にとって大きい。

ただし、
中学・高校の学びは、受験勉強とは質が違う。  
理解の速さだけでは乗り切れない場面も増えていく。
だからこそ、
娘には「努力する力」も少しずつ身につけてほしいと思っている。

娘は、小学校ではうまく過ごせなかった。
でも、中学では救われた。
少なくとも、今のところはそう見える。
これからも、穏やかに過ごせる日々が続いてほしい。

子どもは、
環境が合うだけで本当に変わる。

中学受験は、
良い大学に行くためだけのものではない。
子どもに合った環境を見つけるための選択肢でもある。

そして、
ここから先は、特性だけに頼らず、努力も必要になる。  
そのことを、娘にも少しずつ学んでほしいと思っている。