ソングテーマの「アメリカ」を題に詠める歌、1首。

 

人と国の  光と影の  入り交じる

混沌に立つ  亜米利加よアメリカ

 

ひととくにの  ひかりとかげの  いりまじる

こんとんにたつ  あめりかよ あめりか

 

 

 

 

アメリカ合衆国という国は、

考えれば考えるほど、まことに不思議な国に思えます。

 

イギリスからの独立戦争を戦い、勝利して、

独立宣言を発してから今年でまだ246年しか経っていません。

 

アジアやヨーロッパの古い歴史を誇る国々をおさえ、

今や世界一の超大国になりました。

 

 

合衆国憲法を制定し、ジョージ・ワシントンが初代大統領に就任して、

事実上、新しい国家としてスタートしたころ、日本では、

 

江戸時代の中期、徳川第10代将軍・家治(いえはる)の時代、

田沼意次(たぬまおきつぐ)が老中に就任して政治改革を行ったあたりです。

 

日本が長い鎖国のなかで太平の夢を見ていた頃に誕生した、アメリカ・・・。

 

そのアメリカの海軍提督(ていとく)ペリーが浦賀に来航したことが、

近代日本の幕開けとなるのですから、

日本とアメリカは江戸末期から現代まで浅からぬ因縁で結ばれているようです。

 

 

さて、その現代の世界一超大国を誇るアメリカですが、

建国以来、その道のりはやはり決して平坦なものではなかったのです。

 

「自由の女神」が象徴するように、

自由主義と民主主義の旗を高々と掲げて世界をリードしてくるなかで、

 

「人種のるつぼ」と言われるその内側には様々に累積する問題を抱え、同時に、

「世界の警察」としての役割を担わざるを得ない状況をつくってしまいました。

 

なかなかにたいへんなポジションです。

 

 

アメリカは様々なジャンルの音楽の発祥の地でもあり、

アメリカを好きになるキッカケにもなりますが、映画や小説も同じです。

 

私が、米軍基地問題を乗り越えて、アメリカという国に、

深い関心と興味をもつようになったのは、ある小説との出会いでした。

 

それは、ジョン・スタインベックの「怒りの葡萄」です。

 

世界恐慌と重なる1930年代の末、

オクラホマ州などのアメリカ中西部に発生した「干ばつ」と「砂嵐」によって、

 

農作物の耕作ができなくなった土地を追われ、

「新天地」と言われたカリフォルニアを目指して流浪する、

一家一族の不幸と苦難と不屈の人間像を描く大作です。

 

この作品によって、

スタインベックは、1940年にピューリッツアー賞を受賞し、

1962年にはノーベル文学賞を受賞しています。

 

ブロードウェイやマンハッタン、ハリウッドなど華やかなアメリカとは違う、

貧しくて勤勉で親切な多くのアメリカ人の典型が描かれていて、

読むたびに新しい気づきのある作品ですが、詳細はここでは省きます。

 

「怒りの葡萄」の「葡萄」は、一般的には、

神の怒りで踏み潰される「人間」を意味すると解釈されているようです。

 

メンフィス・テネシーのジャズ、ジョーンバエズやボブ・ディランなどの歌を、

歌詞を追いながら聴くようになったのは、

この小説と出会って以降のことでした。

 

矛盾と混沌(カオス)のなかに、

危うい均衡を保ちながら立ち続ける、アメリカよ、アメリカ・・・。

 

「好き」と「嫌や」の感情の入り交じる、不思議の国、アメリカ。