ソングテーマの「電話」に連想して詠める歌、2首。

 

当を得ぬ 罵詈雑言を 耐へて聞く

役目なれども 辛くもあるか

 

とうをえぬ ばりぞうごんを たえてきく

やくめなれども つらくもあるか

 

「お客様は神様である・・」とか、
「お客様第一主義・・」とかを掲げている方々からはお叱りを受けそうですが、

「お客を選べ・・!」というのを、かなり前から私は信条としています。

 

お客様から選んでもらうために、こちら側で先に「お客を選ぶ・・」ワケです。

取り扱い業務を、かなり狭く絞り込んで、「専門店」に特化するのです。

 

営業エリアを絞り、取り扱い「商品」を絞り、「お客を選ぶ」のです。

 

「何をやり、何をやらないか」をハッキリと表示して断固としてそれを守ります。

「○○についてはなんでもご相談・ご用命ください」というのをやめました。

 

独り不動産屋さんを、数年間、経験した結果、たどり着いた方法でした。

 

代わりの人がいない独り仕事の最大の問題は、

トラブルやクレームの対応に取られる時間的なロスと、

それによって生じる、心と精神のダメージの深さでした。

 

トラブルやクレームの全てがマイナスなのではなく、逆に、

それらがキッカケとなって仕事が大きく発展することもしばしばありました。

 

問題は、底意地の悪い、解決を望まない、いわゆる「悪質クレーマー」の存在です。

 

直接にお会いして、対面で対応できるお客様は解決の可能性が極めて高いですが、

直接にお会いすることを、断固として拒否されるお客様は、解決する意思が見えず、

 

ただ、電話で感情的な罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせ倒すだけで、それは、

いつ終わるとも知れない「無間地獄(むげんじごく)」となってしまいがちです。

 

電話の切りぎわをつかむことができず、

相手が捨て台詞を残して、受話器を置くのをただただ待つしかありません。

 

 

声とぎれ 息づき荒く 伝わりて

切るに切られぬ 夜更けの電話

 

こえ とぎれ いきづきあらく つたわりて
きるにきられぬ よふけのでんわ

 

 

土地や建物などの不動産は、

その他の商品と違って、別の商品との取り換えや交換ができません。

 

土地も建物も、

この世界で同じものが二つとして無い、唯一無二のものであり、

しかもその他の商品と比べてはるかに高額なものです。

 

このように不動産という特殊な「商品」を取り扱う業界に私は長くいて、

その取引上のトラブルが原因で、「壊れていく人」をたくさん見てきました。

 

いろいろなトラブルがありますが、どのようなトラブルでも、

それが会社内でオープンな状態で発生する場合には解決のしようがあります。

 

しかし、よくデキる社員さんに限って一人で秘かに解決しようとしがちです。

うまく収まればよいのですが、

そうはならないケースのほうがはるかに多いのです。

 

「責任者を出せ・・・!!」というパターンはよくあるものですが、

それを抑え込んで、内密に単独で解決を図ろうともがいて失敗するケース、

 

結局、責任者に打ち明けて難局を打開せざるをえなくなるのですが、

その段階では、もう、手遅れで相当に高い代償を払う結果となりがちです。

 

追い詰められて、打ち明けざるを得なくなっても、

直接に面談を求めて相談するのではなく、

近年は、SNS やメールから始めるということが多くなりました。

 

勤務時間中や日中でしたら、面談のしようもありますが、

夜中に、このような、SNSでの報告・連絡・相談を受けると対応に苦慮します。

 

しばらくは、画面の文字メールで対応しますが、

それではラチがあかないと判断した時、こちらから電話に切り替えます。

 

たいてい、こうした場合、事態は差し迫っていますので、

話の内容はかなりシリアスなものになり、言葉には慎重さが必要になります。

 

話の途中で言葉が途切れてしまい、

問いかけても返答がなく、長い沈黙が続く時、

つくづくと電話という文明の利器の功罪を思わざるをえません。

 

ナーバスでデリケートな危うい状態にある相手の荒い息づきを聴きながら、

とにかく、この場は、なんとか無難な着地点を見い出さなくてはなりません。

 

このような場面を幾度か経験しましたが、慣れるということがありませんでした。