もくじ

  1. はじめに
  2. 氷見事件
  3. 紅林麻雄事件
  4. 和歌山毒物カレー事件
  5. 警部補とは何か
  6. カギを握るのは部長と署長
  7. まとめ

 

はじめに

 

 稲葉事件というものをご存知でしょうか。

 

 ウィキペディアにも単独のページが作成されているような大きな事件ですが、同サイトの記述は必ずしも正確ではありません。

 

 というより、事件を起こした稲葉氏本人の証言をそのまま載せると、警察と検察にとって、極めて都合が悪いからです。

 

 簡単に説明すると、こんな事件です。

 

 北海道警に稲葉圭昭(いなば よしあき)という警察官がいました。

 

 ここはウィキペディアにもありますが、金丸信副総裁狙撃事件があり、警察庁が銃器摘発キャンペーンを行います。

 

上司からの“ヤラセ捜査”を容認する衝撃発言

「初めて首無しを押収したのは北見署にいた頃。この年は、北見方面だけ拳銃を摘発できていないため上司から『なんとかならんか』と言われて、札幌のヤクザに相談したんですよ。

 用意してもらった拳銃を北見から4時間かけて取りに行って、同行した若い捜査員に『これをロッカーにいれてこい』と指示して、自分は身分を偽って役所(警察)に通報した。この電話は『元暴力団風の男から情報提供』という形で記録が残っているはずだよ。それで“駆け付けた警察官”である俺がロッカーから拳銃を見つけて終了。

 めでたく北見署と俺はこの件で表彰されてね。この時は首無しは恥ずかしいことだから、カッコ悪いことしたかなと後悔したけど、ノルマ達成や評価される嬉しさが勝ったね」

 

 それは稲葉氏の上司も同様だったようだ。思うように正規の方法で拳銃の押収ができない中、室長は「首無しでもよい」と発言したという。それはつまり“ヤラセ捜査”を容認する発言だった。


「ヤラセ捜査のために約40億円の覚醒剤130キロを道内に」北海道警が“重い十字架を背負った”大スキャンダルの裏側「文春オンライン」特集班 2022/04/16 より引用

 

 想像を絶する話ですが、数字を挙げると署と署長が表彰されるというので、上司から「首無し拳銃」(所有者のわからない拳銃)でもいいから銃器を摘発しろと指示されて、やらせを行った、と言うのです。

 

 そして稲葉氏曰く、同僚も、上の方もその事実を皆知っていた、と言うのです。

 

 つまり首無し拳銃の摘発のやらせは警察署ぐるみのもので、組織的なものだった、という事です。

 

 しかし更に衝撃的なのはその後の話です。

 

「1999年から2000年にかけてのこと、あるエスが仲介してくれた、東京のヤクザの元親分から持ち込まれた話がきっかけでした。このエスは過去にも暴力団員に扮した俺と一緒に、関東の別のヤクザから拳銃を購入したこともあった。信頼していた相手で、映画では中村獅童さんが演じていましたね。

 そのエスが『拳銃を200丁密輸させ、船員の中国人を逮捕させる代わりに覚醒剤を国内に入れるのを見過ごしてくれ』と持ち掛けてきたんです。どうせダメだろうと思いましたが、函館税関と相談した上司からOKが出てしまった」

 

道内に持ち込まれた約40億円の覚醒剤130キロ

 そして2000年4月、道内にもちこまれた覚醒剤は130キロというとんでもない量だったという。当時の末端価格で約40億円。どれだけ多くの人間が使用し人生を狂わせたか、想像もつかない。

「でも大量の拳銃をどうしても押収したかった道警はこの取引に乗った。上司は『重い十字架を背負った』なんて言っていてね。あの言葉は忘れられませんよ。

 この覚醒剤の一部は俺がチョンボし(盗み)ました。ほかのエスのシノギにしてもらおうと思ったんです。俺の逮捕後に自宅から出てきた覚醒剤はこのときのものです」

 しかし、仲介したエスは密輸成功後に姿をくらましてしまう。

 

「見事にエスにはめられました。『拳銃200丁の押収』と『中国人密輸者の逮捕』という見返りは嘘で、130キロもの覚醒剤の密輸を見過ごしただけになってしまった。さらに東京のヤクザの元親分から、さらに大麻2トンの密輸を見逃すようせがまれた。断ったら、130キロの件をバラされるかもしれない。さすがに上司は反対したけど、俺は受けざるをえなかった。上を説得して、道警は大麻の密輸も見逃しました」

 

「ロシアマフィアが…」また“大規模ヤラセ捜査”に手を染めた

 2度に渡って共犯を強いた函館税関には借りを返さなければならない。そのため稲葉氏はまたもや大規模なヤラセ捜査に手を染めたという。

「俺が別で準備した拳銃とマカロフ20丁をロシア船に仕込み、摘発させました。ちなみに20丁同時の押収は北海道で過去最多。マスコミも大いに取り上げました。ロシアンマフィアの密輸ルートが云々って報道されました。まあ、ヤラセなんですけどね」

 

引用元は上記に同じ

 ※エス=S、協力者(スパイ)のこと

 

 拳銃摘発の数字を上げる為に、なんと道警本体が、大量の拳銃摘発の見返りに、大麻の輸入を見逃して欲しいというヤクザの元親分からの話に乗ったというのです。

 

 しかも函館税関も道警からの話に乗り、共謀して、大麻の密輸を見て見ぬふりをした、と。

 

 稲葉氏はこの件に関して、道警の当時の上層部は全て知っていた、と話しています。

 

 つまり道警の本体ぐるみで大麻の大量密輸の黙認という、重大な組織犯罪を働いた、という事です。

 

 この話ですが、実はまだ続きます。

 

 最終的にはやってきた事が表面化し、起訴されて裁判になりますが、道警は稲葉氏に全ての罪を擦り付け、逃げようとします。

 

 稲葉氏自身もまだ警察に対する気持ちが残っていた為、全て被り、墓場まで真相を持って行くつもりだったそうです。

 

 しかし、弁護士から、公判での被告人質問の際に拳銃の違法摘発が原因で全てが始まった事や、役所ぐるみで違法摘発が組織的に行われていた事実を話してしまえ、と説得されて、公判の場で、問題のさわりだけ話したそうです。

 

 すると検察官の被告人質問の際、弁護士の被告人質問で話した内容に関して、公判を担当した検事が「言わせておけば」と言ったそうです。

 

 稲葉氏は、これは何を言っても駄目だなと思い、真相を話すのは時間が経ってからにしようと決めたそうです。

 

 どういうことかと言うと、つまり地検も道警とグルで、道警の違法捜査に関して全て知っていて、道警幹部らが刑事処分されないように、口裏合わせをし、場合によっては違法な証拠品の隠滅工作も行って、稲葉氏が何を証言しても知らぬ存ぜぬで押し通し、稲葉氏が嘘を吐いている事にして、隠蔽して逃げようとしていた、という事です。

 

 この話も「俄かには信じられない」と思うような衝撃的な内容かも知れませんが、警察や検察の体質についてご存知ない方であれば、ああ、そういう事ね、と腑に落ちる程度の話でしかありません。

 

 また、稲葉氏は、調書の改竄等、その他の不正にも手を染めた事があり、いつ捕まるだろうと感じながら警察官人生を歩んでいた、という話をされています。

 

 これらの話から押さえて頂きたいポイントは、

 

  • 上司からの指示で不正が行われた
  • 警察本体自体が組織犯罪的に不正を働いていた
  • 検察が警察の不正を知りながら結託して隠蔽に加担した
  • 警察官が調書等の改竄をする事が行われていた
という四つの点です。

 

2.氷見事件

 

 冤罪事件としては非常に有名な事件なので、恐らく御存知だと思いますが、簡単に説明します。

 

 富山県氷見市内で同一犯によるものと思われる強姦事件と強姦未遂事件が起きます。

 

 警察は被害者の協力の下に犯人の似顔絵を作成し、似ていた男性(前科・前歴無し)を取り調べます。

 

 しかしこの取り調べは名ばかりで、相手を精神的に追い詰める為に行われた拷問的手法でした。

 

 精神的に疲弊しきった状態で、取調官は 「お前の家族も『お前がやったに違いない。どうにでもしてくれ』と言ってるぞ」と嘘を吐いて男性の心を圧し折り、自白を取り、逮捕しました。

 

 ところがこの際、逮捕状は男性の自供前に取られていました。

 

 その後、取調室で被害者宅の間取り図を置き、薄紙を載せて男性になぞらせて、清書させて、男性が被害者宅の間取りを知っていた証拠とした件を筆頭に、男性を犯人にでっち上げる為の捏造や被害者の証言の改竄などを大量に行い、犯行時刻に男性にアリバイがあった事実を無視、真犯人と男性の身体的特徴が一致しない点も無視、犯人が現場に残した体液と男性のDNAを鑑定する事すらしないという異常な事をしました。

 

 状況的に見て、取調官をはじめ、他の捜査員らも、男性が犯人でない事を認識していたと考えられます。

 

 氷見事件の恐ろしいところは、男性が犯人でないと承知の上で、証拠を捏造して犯人にでっち上げた事です。

 

 この件に関して、取調官であった長能善揚警部補が槍玉に挙がり、ネットでも強烈な批判と非難が寄せられています。

 

 この冤罪事件は、長能氏は主犯ではありません。

 

 警察不祥事にはガン無視を決め込むメディアが多い中、取り上げて報道したテレビ番組に敬意を表します。

 

 しかし、踏み込み不足の感は否めません。

 

 まず第一に、逮捕状の請求権は、警部は持っていますが、実際には所属長名で行われます。

 

 警部と言えば警察署では課長ですが、実際に逮捕状を請求するのは、所属長である警察署長名で行われる、という事です。

 

 警部補に過ぎない長能氏には逮捕状を請求する権限すらありません。

 

 自白前に逮捕状が裁判所に請求されて出させている以上、逮捕状の請求を警察署長が許可している事になります。

 

(通常逮捕状の請求等)
第119条 刑訴法第199条第2項の規定による逮捕状(以下「通常逮捕状」という。)の請求(当該請求と同時に同法第201条の2第1項の規定による逮捕状に代わるものの交付の請求をする場合にあつては、当該逮捕状に代わるものの交付の請求を含む。次項において同じ。)は、公安委員会が指定する警部以上の階級にある司法警察員(以下「指定司法警察員」という。)が、責任をもつてこれに当たらなければならない。
2 指定司法警察員が通常逮捕状の請求をするに当たつては、順を経て警察本部長又は警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後、速やかにその旨を報告するものとする。

 

引用元:昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 犯罪捜査規範

 

  自白前の段階で逮捕状が出されている以上、自白させて逮捕する方針だった事は間違いありませんが、強引な手法で自白させないといけない動機を持っていたのは、長能善揚警部補ではないのです。

 

 また、殺人や強姦のような重大事件が発生した場合、捜査本部が設置されます。

 

 捜査本部というのは警察本部と警察署にまたがって設置される臨時機関で、捜査の主導権は警察本部の捜査課が持ちます。

 

第3条 北海道警察本部(以下「警察本部」という )の当該事件の捜査を主管。する部の長(以下「主管部長」という )又は方面本部長(以下「方面本部長。等」という )は、次の各号に掲げる事件又はこれに発展するおそれのある事。件の発生を認知し、捜査を統一的かつ強力に推進する必要があると認めたときは、警察本部長の承認を得て捜査本部を開設するものとする。
⑴ 殺人、強盗、強制性交等、放火等の凶悪事件
⑵ 大規模な業務上過失致死傷事件
⑶ 公共的施設又は公益事業に対する破壊、火災等による重大な機能妨害事件
⑷ 重要又は特異な知能犯事件又は窃盗事件
⑸ 重要又は特異な暴力団事件
⑹ 爆発物、銃砲、火薬、その他危険物に係る重要な事件
⑺ 重要又は特異なひき逃げ事件
⑻ 重要又は特異な警備事件
⑼ その他捜査本部を開設する必要があると認めた事件

 

引用元:北海道警察捜査本部運営規程

 

 ミステリ愛好家の方であれば御存知だとは思いますが、殺人事件や強姦事件は、警察署では捜査しません。

 

 たとえば遺体が発見された場合、変死体であれば、すぐに警察本部に連絡が入り、殺人なら捜査一課が出てきます。

 

 氷見事件に関して言えば、逮捕状の請求は、当時の氷見警察署長名で出されているでしょう。

 

 しかし、男性を逮捕するという強い意志は、県警察本体の上層部の意向であった、という事です。

 

 長能善揚警部補は、あくまでも、県警上層部から「お前、絶対にオトしてこい!」と指示されて動いただけに過ぎません。

 

 そもそも、存在するアリバイの無視、犯人との身体的特徴の無視、被害者宅の間取りを知っていた事にする捏造、その他、証拠品の捏造による犯人でっち上げなど、高々、県警本部や警察署の係長程度のポストしか得ていない警部補にやれるわけがありません。

 

 こんな芸当は警部ですらやれません。

 

 警視以上の階級の幹部が指示を出してやらせたと考えるのが妥当でしょう。

 

 だから氷見事件が冤罪事件だったと露見した際、下記のような対応が行われたのです。

 

当時の富山県警安村隆司本部長は「結果においては誤認逮捕になりましたけれども、当時の捜査幹部の指揮あるいは捜査員の捜査手法、それを一つ一つをあげつらって捜査の懈怠があった、あるいは、そこに捜査のミスがあったという事で処分に該当するものだというふうに判断できるのか、どうかと言う事になると、当時の捜査状況をつぶさに検証した立場からして(処分を)ちゅうちょせざるを得ない。」として富山県警は誰一人処分されなかった。

さらに、長勢甚遠法務大臣(当時)が再審前の2007年1月26日、甲に対し謝罪した際、自白の強要については違法性が無いと述べ、当時の捜査員に対して処分は行わないことを決定している。 

 

引用元:氷見事件 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 県警上層部の意向に従って犯人でっち上げを働いただけの警察官を処分した場合、誰の指示ででっち上げを実行したのか、警察官が暴露する恐れがあったから、という事なのでしょう。

 

 つまり真相を隠蔽する為に処分しなかったのです。

 

 なお、このような悪質な犯人捏造を働いた動機ですが、強姦・強姦未遂事件の犯人が捕まらず、氷見市民や富山県民の苛立ちが高まると、県警に抗議が殺到する、それを防ぐ為だったのではないか、という話もありますが、はっきりしたものは不明です。

 

 男性を逮捕して県民世論の鎮静化を図ろうとしたのは、恐らく、当時の県警本部長か刑事部長の可能性が高いのではないか、と見られています。

 

3.紅林麻雄事件

 

 昭和の冤罪王と呼ばれた紅林麻雄氏に関しても説明は不要でしょう。

 

 なおこの人物に関しては、真正の悪党だったと言って過言でありません。

 

 理由は下記のような話がある為です。

 

二俣事件無罪判決後
1957年12月26日に少年の第二審が東京高裁で開かれ、少年は逆転無罪となった。判決後釈放された少年が山崎の家に挨拶に訪れた際、山崎は涙を流して少年を抱擁したとされている[6]。その後も少年と山崎は季節の便りを交わすなど交友が続いた[1]。その後、1959年に清瀬一郎監修の下に執筆した書籍『拷問捜査 幸浦・二俣の怪事件』によって、紅林が真犯人と思われる人物からの収賄の疑惑があったことを暴露している。

 

引用元:山崎兵八 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 紅林氏がどのような警察官であったか、ですが、不都合なのか、ウィキペディアでは見事なまでに記述がありません。

 

 実は戦前から表彰を受け、非常に優れた警察官、という扱いを受けていたのです。

 

 冤罪発覚後、紅林氏だけが悪かったかのように語られて、それ以外の部分には「臭い物には蓋」をしてしまいました。

 

 また、袴田事件をはじめ静岡県警で冤罪が多発した問題を、紅林氏の薫陶を受けた警察官らが原因、と論ずる人もいます。

 

 しかし、そこより先に踏み込んで論陣を張る人と言うのを、見た事がありません。

 

 何故、紅林氏の薫陶を受けた警察官らが同様の手法で冤罪を多発させたのでしょうか。

 

 紅林氏の捜査手法を県警上層部が問題視していたのであれば、同様の行為を厳しく禁止しますので、その手法を真似る警察官が大量に表れる事は起き得ないことになります。

 

 仮に中間管理職の立場にある警察幹部が問題視していたのであれば、やはり、部分的な発生に留まるでしょう。

 

 いうまでもない事ですが、県警の上層部や中間管理職の立場にある警察幹部らが、100回以上も表彰を受けたとされる紅林氏の捜査手法を知らなった等と言うのはありえない話です。

 

 つまり、当時の紅林氏の捜査手法を真似た静岡県警の警察官達、並びに、管理職や上層部の面々は、少なくとも、紅林氏の捜査手法を問題があるとは認識していなかった、という事になります。

 

紅林氏は冤罪を起こしたからいけないのだ。だが、捜査で犯人を挙げる為には、紅林氏の手法は有効だ

 

 このような考え方をしている警察官が多く、も同様の認識であった、という事なのでしょう。

 

 県警上層部は紅林氏の捜査手法を承知の上で称賛しており、事件をさっさと解決する紅林氏に信頼を寄せていたのですから、県警上層部は「手法を真似て成果を挙げよ」という感覚でいたのでしょう。

 

 その事を示すエピソードとして、紅林氏の違法な捜査手法を内部告発した山崎兵八氏を、偽証罪で逮捕し、精神障害者にでっち上げる事で告発を無効にし、退職させて社会的に抹殺した事実があります。

 

 紅林麻雄事件の本質は、とにかく成果を重視する警察上層部の姿勢にあったという事になります。

 

4.和歌山毒物カレー事件

 

 この事件も本当に酷い代物で、今ではほぼ冤罪で間違いないとまで言われるようになった事件です。

 

 これは現時点で判明している情報ですが、夏祭りで配られたカレーに毒物が含まれる事件が起きた、偶然、その地区に保険金詐欺を働いている夫婦がいた、犯人としては御誂え向きなので、まずは別件の保険金詐欺で挙げる、マスコミを使って林眞須美氏だったら毒物カレー事件の犯人だったとしてもおかしくないという世論を作る、世論を追い風に林眞須美氏を逮捕して、犯人だった事にして事件を解決した事する、と言うのが、当時の和歌山県警が描いた青写真だったそうです。

 

 氷見事件もそうですが、一体、警察は何を考えているのだろう?と思います。

 

 本当の犯人を捕まえなければ意味がありません。

 

 それなのに犯人が捕まらない事で集まる警察批判の声を嫌がって、犯人にでもない人を逮捕するとか意味が不明です。

 

 一体、何を考えているのでしょうか。

 

 それはさておき、この事件では、検察が異常な行動を取った事でも有名なのです。

 

健治氏:まず、はじめに言っておきたいことがあるんや。それは、私は保険金詐欺では逮捕されたけど、カレー事件に関しては一貫して否認しているということ。今でも「カレー事件の遺族の方に言いたいことは?」と聞かれることもあるけど、やっていないことやから謝罪のしようがない。

 もちろん、私が眞須美の無実を信じている根拠はいくつかある。そのうちの一つが検察の取り調べ。検察は、私を「眞須美に毒を盛られた被害者」に仕立てあげようとしたんや。判決では眞須美と共謀して1億6000万円の保険金を詐取したいうことやったけど、実際に騙し取った総額は8億円にのぼる。懲役6年やったけど、4年7か月で出てこれた。不自然に短すぎると思わん? 私が毒を盛られた被害者にされたからですよ。

 取り調べは本当ヒドいもんやった。検察は「眞須美はオトせない。頼むから眞須美にヒ素を飲まされたと書いてくれ。そうしたら八王子の医療刑務所に入れてやる」と、あの手この手で私を引き込もうとしてきた。本当に眞須美が犯人という確証があれば、こんなやり取りはせんやろ。

 私は保険金をもらうために自分でヒ素を飲んだんです。飲んだのは22回(検察発表では林眞須美の“毒盛り”は23回)。何度かは、量が多すぎて死線を彷徨ったわ(笑)。ヒ素いうのは、素人が扱って量を見誤ると死に直結する。私はシロアリ駆除業を営んでいたから、ある程度の知識はあった。仮に、眞須美が私にヒ素を盛っていたら私はもうこの世にいないはずや。

 

引用元:死刑囚・林眞須美の夫「21年目の告白」 和歌山毒物混入カレー事件 日刊SPA!  2019年10月22日

 

健治の証言によると、逮捕から約1週間後、19時ころに検察庁から小寺検事と事務官2名が健治の拘留されている警察署を訪れた。 健治が「確たる証拠も証人もなく、ワシも口割ってないのに、なぜ逮捕し勾留しているのか」と質問したのに対し、小寺は「アホ、こんだけ世間を騒がしてマスコミが騒いで、パクッて今さら、間違えましたではすまんやろ」と返答したため、健治が「死刑事案なのに、想像でパクッてしまうんか?」と質したところ「いや、今からそのストーリーをワシが考えてやる」、「しかし、証拠がないから困っている」と言い、健治に対して、眞須美にヒ素を飲まされて殺されかかった被害者として初公判の場では「私、今でこそ眞須美が憎くて仕方ない。どうぞ、この女を死刑にしてやってくれ」と述べて泣けと言ったという。 さらに、小寺は健治の事件の公判も担当することから、「求刑も自分が出すので塩梅してやる。ワシに乗れ。ワシに乗ったらお前は身体が不自由だから、エエとこに放り込んでやる」などと言い、また八王子の医療刑務所のパンフレットを健治に見せたが、そこにはMRIなど最新鋭の医療機器が写っていたという。さらに、今、八王子には角川春樹が収監されているので、彼に本を書いてもらえと言った。小寺は「この事件でワシを出世させてくれ」「ワシもお前と同じで4人子供がいる。よい正月を迎えさせてくれ」と事務官2人とともに健治に土下座までしたという。 さらに「お前がどうしても口を割らないのなら、眞須美にひとこと言わせてやる。"私は元日本生命の外交員です。あの日昼頃帰って、主人が何か紙コップに入った薬品のようなものを私に渡して、これカレーの中に入れたら隠し味になって美味しいんで持っていって入れてこいというので、何かわからずに入れました。ヒ素は主人から預かっていたもので、私は知りません。主人の言うままにやっただけです"-これひとこと、眞須美にしゃべられたら、一生お前の人生は裁判になってしまうぞ!」と恫喝したというが、これに健治が応じなかったため、小寺は手を上げたという。なお、健治も眞須美も検察の供述調書には1枚もサインをしなかった。

 

引用元:和歌山毒物カレー事件 健治への誘導尋問問題、司法取引疑惑 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ソース元:#5【林健治と保険金詐欺(後編)】/保険金詐欺を繰り返す最中起きたカレー事件/眞須美に問い詰めると…/ホースで水をかけた真相/検事の思い掛けない言葉とは?/ヒ素は自分で飲んだ【和歌山毒物カレー事件】 
digTV  2020/10/27

 

 この事件は他にも殺人に使用されたヒ素の鑑定にかかわった科学捜査研究所の主任研究員が証拠品鑑定結果捏造による証拠隠滅、有印公文書偽造・同行使の疑いで書類送検され、停職3カ月の懲戒処分となっていたり、県警はメディアに「(研究員は)カレー事件にかかわったが、捏造はしていない」と言い切ったそうですが、普通の国でこんな不正が飛び出したら、証拠が無効になって無罪を言い渡されてもおかしくないとまで言われていて、本当に、この国はどうなっているのだろうと呆れてしまいます。

 

 

 話を戻しますが、この事件からわかる事は、警察と検察は一体で動く事があり、検察が警察による犯罪の捏造に積極的に加担するような、酷いケースもある、という事です。

 

 稲葉事件で道警の組織的不正を地検が庇い、道警と一体化して隠蔽に走ったのは、特殊な動きでも例外的な動きでもなかった、という事になります。

 

5.警部補とは何か

 

 警察では警部補の階級から幹部として数えるようになり、最末端の幹部として位置づけられます。

 

 この記事の目的は警部補の説明ではないので警部補が着任するポスト等の紹介は省きます。

 

 つまり警部補になるという事は、中間管理職として重いポストを与えられるという事です。

 

 実はこの警部補と言う階級、警察の中でも、不正や不祥事による処分が非常に多いとも言われているのです。

 

 警部補に昇任して中間管理職としての仕事が山のように与えられ、しかも階級に見合った働きも要求されます。

 

 その為、非常に重圧を感じるそうで、その事が原因で、効率的な業務処理や点数を上げる為の不正に手を染めるのだとか。

 

 直属の上司の警部の部下の管理能力が優秀で、警部補がそういった不正に手を染めないか、注意深く観察していればいいです。

 

 様子がおかしければ声をかける、本音を聞き出す努力をする、そうして不正を働かないように導く。

 

 しかし、警部自身が警部補になってから、その種の不正に手を染めて昇任した人物だったらどうなるでしょう?

 

 バレないように上手くやってくれればいい――そう考えて黙認するでしょう。

 

 稲葉氏は調書の改竄を過去に行った事があると話されていましたが、その詳細が不明の為、断言はできませんが、業務繁多による改竄等の類であれば、稲葉氏が取り立てて問題のある警察官だった、というわけではなく、魔がさしてやってしまったとか、少しでも仕事ができるところをアピールしたくてやってしまったとか、そういったところだったのではないか、と考えられます。

 

 何が言いたいのかと言うと、証書の改竄をはじめとするこの種の不正は、よくある事で、ありふれた問題に過ぎない、という事です。

 

 時折報道される調書改竄等の事件は、実際に発生している事件のほんの一部、氷山の一角なのだろうと見ています。

 

6.カギを握るのは部長と署長

 

 警察は階級社会であり、上官(上)の者の命には絶対服従の世界です。

 

 警察が行っている犯罪の取り締まり等は、元々は軍隊が行っていたもので、それが分離独立し、専門化して現代に至っています。

 

 だから軍隊時代の名残として階級があるのです。

 

 警察が不正を働く時には、警察本部の部長や警察署長が黒幕として出てきます。

 

 

 

 刑事部長が、何者かからの依頼で、犯罪を揉み消す事に決めたとします。

 

 その為の指示を出したとします。

 

 警察官は全員従います。

 

 上からの命令は絶対だからです。

 

 内部告発するという選択肢も、一見するとあるように見えますが、警察組織では事実上、存在しません。

 

 内部告発しても握り潰されますし、マスコミに情報提供しても、警察と癒着している為、調査すらして貰えません。

 

 だから従う以外にないのです。

 

 警察署長に関しても同じです。

 

 警察署管轄内で起き、かつ、警察署が主導して動かせる事件で、署長が何者かからの依頼で犯罪を揉み消す事に決めたとします。

 

 指示を出せば同じ事が起きます。

 

 無論、こういった組織犯罪的な物ばかりでなく、警察官が私怨から嫌がらせを働くケース等も当然あります。

 

7.まとめ

 

「1.はじめに」の最後に箇条書きした四つの点について、具体的な例を挙げて解説してみました。

 

 稲葉圭昭氏の話を聞いて思った事は、多くの警察不祥事と共通している、という事です。

 

 氷見事件は、県警上層部の意思として起こした冤罪事件で、現場の警察官らは指示に従っただけです。

 

 静岡県警で多発した冤罪事件も、紅林麻雄氏が一人で引き起こしたものでなく、当時の県警上層部が引き起こしたものです。

 

 和歌山毒物カレー事件も県警上層部が引き起こした事件で、この冤罪事件には和歌山地検も深く加担しています。

 

 結局、県警の本部長なり、刑事部長なり、生活安全部長なりが、黒幕となる形で引き起こされている点が共通します。

 

 次は「上司からの指示」で引き起こされているという点です。

 

 稲葉氏に関しては、お話を聞く限り、極悪人でなく、特殊な人でもなく、その時代に存在したごく普通の警察官という印象を持ちました。

 

 もしも上司が稲葉氏に不正を働くよう指示を出さなかったら、稲葉氏が不正に手を染める事はなかったのではないでしょうか。

 

 氷見事件にしても、被害者達の供述をもとに作成した似顔絵と似た男性が見つかったというだけの理由で、犯人だと決めつけて、さっさと自白させて逮捕しろという指示を出さなければ、防げた冤罪事件です。

 

 和歌山毒物カレー事件も同じです。

 

 毒物カレー事件が起きたのと同じ地域で、偶々、毒物を使用した保険金詐欺事件が起きていた。

 

 たったそれだけの理由で犯人だと決めつけて、別件逮捕までする。

 

 恐らくこの事件も、上層部からの指示で、早急に事件解決せよ、犯人を逮捕しろとの圧力がかかっていたのでしょう。

 

 あの保険金詐欺事件は詐欺としてはありふれたものだったそうで、大した事件ではなかったそうです。

 

 しかし、毒物カレー事件の犯人も林氏だとの印象を植え付ける目的で、意識的にマスコミに騒がせたのだそうです。

 

 犯人でも何でもない人間を犯人として逮捕して、一体、誰が得をするのでしょうか?

 

 そしてこの事件では、検察が警察と一体化し、事件の捏造に手を貸している点です。

 

 例としては挙げませんでしたが、実は多くの冤罪事件で、検察も警察による捏造に手を貸しています。

 

 有名なのは名張毒ぶどう酒事件です。

 

さらに、捜査段階での関係者や住民の調書は、途中で一斉に供述が変わり、奥西以外に毒を入れる機会がないという検察官の主張に沿うものとなっていたことについて、判決は「検察官の並々ならぬ努力の所産であり、このことは各該当の調書を一読すれば容易にこれを理解し得るところである」と述べて、暗に捜査の問題性を指摘した。

 

引用元:名張毒ぶどう酒事件 日本大百科全書(ニッポニカ)

 

 他に共通する点は、上層部の仕業である実態を隠蔽しようとするところです。

 

 氷見事件では取調官だった長能善揚警部補が、静岡県警の冤罪多発問題では、紅林麻雄氏が槍玉に挙げられました。

 

 本当の問題点は県警上層部にあったにもかかわらず、そこに切り込んでいるマスコミは、見た事がありません。

 

 ここからは総合的に見た推察になります。

 

 警察で出世したいと考えたら、少しでも効率的に業務をこなし、同時に点数も上げる必要があるのでしょう。

 

 問題が生じない程度の手抜きなら良いですが、不正に該当するような行為が行われる事もあります。

 

 バレなければいいという発想で、不正を働いて、上手く隠し通して出世します。

 

 そうした行為に手を染めた警察官が出世して、幹部になり、上層部で多くの割合を占めるようになった結果、不正が横行するようになった。また、部下が同様の不正を働いていても、バレなければ問題ないと見て見ぬふりをする幹部が増えるだけでなく、自分の手柄欲しさ、出世や昇任の為に、部下に指示を出して不正を行わせる幹部が増えた。自身の不正が露見しそうになったら、手段を選ばずに証拠を隠滅して隠蔽するようになり、酷いケースでは監察官室がそれに加担するようになった。

 

 結果、上から下まで不正が横行する、それでいて監察制度が機能していない為、内部告発すらされない、自浄作用がまるでない、とんでもない腐敗した組織に変わり果ててしまった。

 

 これが現在の警察の姿なのではないか、という事になります。

 

補足

 

 鹿児島県警のように内部告発する警察官がいて、逮捕されるような事態にまで発展している事が報道されているのですから、この記事の内容について、違和感を覚えられる方もいらっしゃることでしょう。

 

 論旨がぼけるかなと(実際、まとめの部分で綺麗に締められているとは到底言い難い、ちょっと「何が言いたいのか解り難い内容」になっていますし)思って、書いた後で削除したのですが、その辺の部分も、言及するつもりはありました。

 

 何があっても不正をしない、働かない人も当然います。

 

 そしてそのようなタイプの中からも、出世して上に昇って行く人がいます。

 

 全員が全員、悪人の組織などと言うものはありません。

 

 また、警察内部でも、実際に某県警で、冤罪を防ぐ為に、科学捜査を徹底的に行うべきだという意見を述べる幹部と、それに反対する幹部とで激しい対立が起きた、等と言う話も過去にあったそうで、深刻な路線対立が起きる事もあるようです。

 

 従って、現状としては、不正に手を染める警察官の方が優勢なのではないか、と言う話をしているわけです。

 

 組織のシステム上の問題として、効率的に業務を手際よくこなしており、また、点数もきちんと稼げていれば出世し易いのですから、不正を働いても露見しないように巧妙に隠しながらやれるタイプの人が、出世では有利に働くという問題があります。

 

 これは問題ではないのですが、警察官になりたくてなった人の場合、現場での仕事にこだわるでしょうから、階級を上げたがらない、出世に興味がないという傾向が見られると言われていて、この人達は不正に手を染める可能性が低いか、あるいはないわけですが、その代わり、上には(本人の意思で)上がって行かないという事になります。

 

 結局、上に上がって行くのは、純粋に仕事ができる効率的に無駄のない動きの出来るタイプの人と、上述のような不正を働いて効率的に業務をこなし、点数も稼いでいるように見えるタイプの人、という事になります。

 

 稲垣氏のお話しにもちらりと出てきますが、警察の仕事は優劣がつきにくいものも多い為、結局、ただ真面目に仕事をしているだけでは出世しにくく、不正をして点数を稼いだ方が出世し易いといった問題もあるのです(これはシステムの問題)。

 

 

 だから結果として、階級が上がれば上がるほど、重要なポストになればなるほど、悪い事をしている人間が占める割合が高くなってしまうという、最悪の問題が起きるわけです。

 

 また、本部の部長や署長が清廉潔白なタイプなら、部下に不正の指示を出す事はないですし、不正を働くなと部下に厳しく命じますので、不正は最小限に抑えられるでしょうが、逆のタイプが本部の部長や署長になった場合、無理難題を部下に指示して、部下が不正を働く元凶を作ったり、或いは露骨に、不正を働くよう指示を出したりして、風紀が大きく乱れる事になります。

 

 結局、どのような性質を持った人間が重要ポストに就くのかによって、その部門の体質が極めて大きく変化するのが、現代の警察の特徴だとも言える、という事なのだと思います。

 

 そして総合的には、やはり、鹿児島県警が象徴的なように、勇気をもって内部告発しようとした警察官らを逮捕し、告発を受けたメディアの代表宅を家宅捜索して、告発したらこうなるのだと見せしめのような事をして内外を脅し、告発できないように委縮させようとするような、悪い警察官、悪徳キャリアが幅を利かせてしまっている状況です。

 

 警察庁ですら火消しに走ってまともに対処しようとしておらず、警察庁まで含めて、全てが腐敗してしまっている。

 

 これが現在の状況であると言えます。

 

おまけ

 

 最近、警察に犯罪者にでっち上げられた、という被害を訴える方が増えていると聞きます。

 

 無論、内容によってかなり話が変わるわけですが、こちらの話は参考になると思います。

 

 この「事件指揮簿」が木原事件とどう関係するのか。佐藤氏が解説する。 

 

事件指揮簿とは、下の者が『これはこういう事件だから着手してよろしいですか』と伺いを立て、上の者が『よろしいですよ』と印鑑を押すというもの。鹿児島県警の盗撮の件でも、生活安全部長が押す前に、現場の捜査主任官、管理官、理事官、参事官と、順々にみんなが、これは事件であるという認識を持って印鑑を押している。だから本部長がいくら『知らない』といっても、それを見ればすぐに、いつ誰が判を押したのか、捜査の流れが判るんです。

 殺人事件でも同じ。聴取でも家宅捜索でも、一課長、刑事部長までが、『これは事件性がありますよ。捜査を行っていいですよ』と判をついていきます。つまり印鑑を押した全員が、『これは殺人事件だ』と思ってやっていることになる。警察の上から下まで事件性があると思って印鑑をついているんですよ。それを長官があんなこと言ってるから、俺は頭に来たんです。昨年の会見ではそこまで言及しませんでしたが、裏にはそういうことがある。勝手な主観で『事件性がある』といっているわけではないんです。厳密なプロセスを無視して『事件性はない』なんていうのは非常に矛盾するし、あり得ない話なんです」


引用元:〈警察の上から下まで…〉警視庁捜査一課“伝説の取調官”が指摘する「木原事件」と「鹿児島県警の不祥事」に共通するもの サツイチの元警部補・佐藤誠氏(65)が衝撃の書『ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録』を執筆した3つの理由 佐藤 誠 2024/06/27 source : 週刊文春出版部

 

 何かする時には必ず上司に報告していたと稲葉氏もおっしゃられていました。

 

 警察という組織の構造上、必ず上にお伺いを立てるわけです。

 

 そして許可が出たら実行に移る。

 

 だから犯罪者にでっち上げられた場合、警察の上層部も、当然、あなたの事件の事は知っている筈です。