こんにちは。税理士の武田です。

今回は部門別損益計算書についてです。

私のような会計専門職をしていると、いままでも数々の部門別損益計算書といわれるものを見てきました。そもそも、このような損益計算は制度会計ではないので、全体として制度会計に合致していればあとは社内で好き勝手やっていただけば構わないのですが、経理がしっかりしている会社になればなるほど、作成されている部門別損益計算書の作成意図が分からなくなるケースを多々見てきました。長年会社内部で作成してきたものなのでしょうから、その努力には一定の価値はありますが、経営に役立てるという意味では、価値を持たないものが多々あります。その典型が配賦に関する考え方です。通常、間接費の配賦とは原価計算で用いられる考え方です。それがなぜか部門別損益計算の中に紛れ込み、意味不明な数字を生み出しているという疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。例えば、本社経費を各部門に売上高で配賦するというケースを考えてみましょう。部門別損益計算書を作成している会社ではこのような配賦基準をとっている会社は多いと思います。要は、適正な配賦基準が分からないため、何となく売上の多い部門には多く本社経費を負担させ、少ないところには少しだけ配賦するのが、妥当な気がするということなんだと思います。

そもそも原価計算で行う配賦とは製品の原価をもとめ、販売価格の決定に役立てることからスタートしています。だから、多少の不確実性があったとして一応配賦を行い、販売価格の基準値を出す必要があります。しかし、通常作成される部門別損益計算書では販売価格の決定のためではなく、部門ごとの業績把握を目的に作成されます。その時点で、目的を異にしており、配賦自体の考え方も異なるはずです。業績評価のための損益計算書を作成する場合の配賦とは、責任の転嫁を意味します。先ほどの本社管理費を配賦した部門別損益計算書では、本社管理部の責任はどこにいったのでしょうか?全て直接売上にかかわる部門に経費が配賦される結果、本社の管理部は、社内で責任を負わない特権階級になっていることに気づかなければなりません。

本当に経営に役立つ部門別損益計算書の作成では配賦を行う必要はないのです。

この点に気付いていない経営者や経理スタッフは意外と多いと思います。今一度自社の部門別計算を見直してみてはいかがでしょうか。