男性生殖器疾患(その3)パイロニー病 | 鍼灸院 けいらくのブログ

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当時39歳の男性(会社員)が来院されました。主訴はパイロニー病と言う余り聞き慣れない病名ですが、男性生殖器疾患の一つで形成性陰茎硬化症とも言います。これは陰茎に「しこり」ができ、勃起するとその部分が曲がる病気で、上側に曲がる場合が多いようです。

その原因は不明ですが、打撲など外傷が引き金になることもあります。しかし、この症例には該当しないようです。治療としてはビタミンEやステロイド剤の投与、あるいは手術で「しこり」を切除する方法があります。

この方の発症は約1年前で、勃起すると45度ぐらい上側に曲がり強い痛みが出ます。病院からは手術を勧められていますが、まだ踏ん切りがつかず鍼治療で痛みが軽くなればと言うことで受診されました。

身長180?、体重78?と立派な体格をされています。食欲・睡眠・便通は普通にあります。血圧は135/90と、やや高めです。他の症状としては手の平と足底に汗をかきやすいとのことです。また、鍼灸治療は初めてです。

まず切診・切経では左右の肩上部にゴム粘土のような凝りがあり、足の冷えと手の平及び足底の汗が顕著です。腹診ですが、大腹(上腹部)は小腹(下腹部)に比べ虚しており、経絡腹診では肝の診所(みどころ)に少し硬結と圧痛があり実と診ました。比較脈診並びに他の診察結果を総合的に検討し、主証を肺虚肝実証としました。

治療に入り、本治法(全身調整の鍼)として左の太淵・太白穴に補法、右の太衝穴に瀉法を行いました。陽経は脈状に応じて補瀉しました。次に標治法(局所的な鍼)として肩上部の凝りに対し虚の部分に接触補鍼、背腰部を左右調整し足底を円鍼で補い温灸を施しました。更に奇経治療として列缺ー照海と太衝ー通里の十字交差を加えました。最後に腹部に補鍼して1回目の治療を終了しました。

4回目に来院された時の状態では痛みが少し和らいで来たようだとのことでした。以降10回まで継続しましたが、痛みが半分ぐらいになったと言っておられました。その後、手術をすることを決断されたので治療は終了となりました。

この症例では治療回数が少なく治癒までは至らず残念でしたが、勃起時の痛みが半減したので、ある程度の治療効果はあったのではないかと考えております。