<概要>

17日、イギリスでは与党である保守党が12月12日の総選挙で勝利した場合に、2021年1月にEUからの移民に対して現在採られている優遇措置を撤廃するという公約を発表した。これは、2020年末にEU離脱後の移行期間が終了することを受けてEU離脱後の方針を示したものである。具体的な内容としては、EUからの移民が社会保障給付の受給資格を得るまでの待機期間を現在の3か月から5年に延ばすことが挙げられる。また、保守党は公共医療を提供する国民保健サービス(NHS)の利用に際して移民が支払う上乗せ額を来年から400ポンドから625ポンドに引き上げる案を示している。この案では、全ての外国人労働者がNHSを利用できるようになるため、年間5億ポンド強の収入が見込まれている。ジョンソン首相は今回の公約により、移民制度が平等になるという見解を示している。

                                                                                     

<イギリスに移民が増加した背景/近年の傾向>

イギリスはEU28か国だけでなく、スイス、欧州経済領域(EEA)加盟国と移民協定を結んでいる。それに加え、歴史的には移民政策が比較的寛容であったことが理由として挙げられる。近年では、景気の低迷や若者の失業率上昇から国民が移民に対して懸念を示すようになっている。保守党政権下では、厳格な移民政策が出されており、EU域外の国からの移民は減少した。しかし、EUに加盟している現状ではEU域内からの移民の制限は難しいため、EU域内からの移民は増加している。

 

<考察>

今回の保守党の公約は、確かに制度上はEU域内、域外の移民を平等に扱うものであると感じられる。これが本当にEU域内からの移民の流入を減少させる効果をもつのかどうかについて、今後の総選挙の結果とともに着目していきたい。

 

Reference>

https://jp.reuters.com/article/uk-conservative-immigrant-idJPKBN1XS00X

https://www.dir.co.jp/report/research/economics/europe/20140724_008784.pdf