♦ニュース概要♦

 先月23日より、イギリス大英博物館にて 日本の漫画を展示する『マンガ展』が始まった。日本国外で開かれる漫画展としては過去最大規模だという。同展では漫画を「pictures run riot(想像力を自由に働かせて描いた絵)」と説明し、日本の伝統芸術としての起源から今日のような一大産業へと発展するまでの軌跡を紹介している。扱っている作品は、葛飾北斎といった日本を代表する画人による漫画から、世界的な社会現象にもなったポケットモンスターや米アカデミー賞を受賞したスタジオジブリの作品に至るまで、幅広い。若者を中心に多くの来場者が訪れているが、一方で「歴史ある大英博物館で、まだ日の浅いマンガ文化を紹介するのはいかがなものか」といった非難も出ているという。

 

♦解説・感想♦

 漫画好きの私にとっては、大変喜ばしいニュースです。今や”クールジャパン”の象徴ともなっている漫画、ついにあの大英博物館へ…!普段あまり博物館に足を運ばない若者を中心に来場者が増えているという事で、美術館側にもプラスになっているのでは、と思います。

 

 さて、盛況の一方でマンガ展には批判もあるそうです。漫画は文化として日が浅い、そもそも漫画を博物館に展示するのはどうなのか?と。起源をたどってみると、実は漫画はかなり長い歴史を持っています。日本最古の漫画といわれる『鳥獣戯画』が描かれたのは平安時代後期頃。江戸時代には有名な「浮世絵」が生まれ、その芸術性の高さは海外からも注目を受けました。いわゆる壮大なストーリーに基づく漫画が週刊誌で読まれるようになったのは比較的最近かもしれませんが、その前身はずっと昔から存在しているのです。

 

 漫画自体を正式な文化として受け入れていない人も多くいます。実際、オタク文化にかなり寛容になった今の日本でも、子供の学力低下や犯罪が起きた際の加害者の趣味など、マイナス事項と無理やり結び付けた報道がされることが未だにあります。海外の、漫画自体あまり読んだことがない、という人が批判するのも 無理はないのかもしれません。

 

 しかし、私は「漫画も立派な文化の一つである」と強く主張したいです。歴史の長短に関わらず、作者一人一人の個性あふれる絵、緻密な伏線・作品展開など 日本の漫画作品のレベルは世界でも群を抜いています。特に毎年フランスで開催される「ジャパンエキスポ」には、数十万人もの人々が日本文化、とりわけ漫画を目当てに訪れています。(因みに、フランスにも「バンド・デシネ」という独自の漫画スタイルがありますが、ストーリーはほぼなく、絵の美しさを楽しむものになっています)。すでに2017年にはルーブル美術館で「第9の芸術」として日本の漫画が展示されていますし、博物館展示は妥当なのではないでしょうか。

 

 賛否両論はあるものの、世界一有名ともいえるこの大英博物館での展示が、普段は漫画に慣れ親しんでいないという人にもその魅力を届ける良い機会になることを祈っています。展示は今年8月26日までです。