<概要>

 オーストラリア放送協会(ABC)のシドニー本社が5日に、連邦警察により家宅捜索を受けた。警察は、ABCの記者名と報道局長人への捜索令状を根拠に家宅捜索を行った。ABCは今回の家宅捜索に抗議しており、メディア業界や権利団体からも報道の自由に対する侵害であるとして批判の声が高まっている。英国放送協会(BBC)も同じメディアという立場から「公共の利益のために報道をしていることで、公共放送が標的となっているとしたら非常に気がかりだ」という声明を発表した。また、オーストラリアの全国放送クラブは、今回のように公共放送への家宅捜索を行うことは、ジャーナリストの職務遂行の権利を侵害するとの懸念を示している。今回の家宅捜索を受けてABC側は、政府の機密事項に関する問題であっても公共の利益のために今後も偏りのない報道をするという姿勢を示している。

 

<今回の家宅捜索の背景>

 連邦警察は、今回の家宅捜索は「機密情報を公表した疑い」に基づき行われたものだとしている。ABC2017年に「ザ・アフガン・ファイル」という報道シリーズを発表していた。同シリーズの中で、オーストラリア軍によるアフガニスタンでの違法行為や不法殺人疑惑が報じられた。この情報源が極秘の国防文書ではないかという疑いがかけられ、今回の家宅捜索に至った。

 

オーストラリアのような民主主義国家で公共放送への家宅捜索が行われたことは珍しいことだと感じる。今回のように、報道の内容や情報源に関し政府による介入が行われるケースが増えてしまうと報道する側もそうした制約を恐れ、政府が好む内容ばかりを報道する危険性がある。そのような報道内容の偏りは、報道の受け手の意思決定にも制約をかけうる。これらのことから報道の自由は守られるべきだと思う。それに加え、私たち情報の受け手側もメディアからの情報を鵜呑みにするのではなく、様々な情報の中から正しい情報を取捨選択する能力を身につけていく必要があるのではないかとも感じる。

 

<注目ワード>

 報道の自由

 

Reference

 https://www.bbc.com/news/world-australia-48537377