父と息子 | keiのpierce

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愛するイジュンギさんのことを中心に、日々の出来事を綴るブログです。

ikujo でございます。

『悪の花』の登場人物の中で、

最も不可解な人物が ト・ミンソクなのではないかと思います。

 

何よりも、殺人を楽しむというその異常性は、

理解の範疇を超え、嫌悪を感じさせる。

 

本編に登場する回数は少ないものの、

インパクトは大きく、

死んだ後でさえ、

主人公の人生を大きく左右するほどの

影響力と支配力をもった人物でした。

 

 

ト・ミンソクにとって、

息子ヒョンスはどういう存在だったのでしょう。

 

また、逆に ヒョンスにとって、

父ト・ミンソクはどんな存在だったのでしょうか。

 

 

ヒョンス自身の言葉によれば、

ヒョンスの記憶は

「10歳の時、森で迷い,

彷徨い歩いている時、父に見つけられて

ホッとした」

というところから始まっているそうです。

 

 

 

 

 

 

それ以前の記憶は一切なし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


とても、謎の多いシーンです。

何故、ヒョンスは森を彷徨っていたのか、

何故、それ以前の記憶を失ってしまったのか。

 

その疑問に答えるシーンは

何も用意されておりません。 


ただ、あるのは、

一見、優しく諭しているかのような

トミンソクによって、強烈に植えつけられる

死のイメージとしての「崖」の存在でした。

 


 

もしかしたら、

ヒョンスは衝撃的な父の犯罪を目撃してしまい、

それがもとで記憶を失ったのかもしれません。

 

あくまでも、推測の域を出ませんが。

 

 


「殺人を芸術の域にまで高めようとする」

ト・ミンソクにとって、共に「喜び」を分かち合う

仲間を得たいという欲求は常にあったのではないかと

思います。


 

ト・ミンソクは、息子ヒョンスを、

自分のパートナーとして値する人物であるか、

細心の注意を持って

観察してきたのではないでしょうか。

 

それらしきシーンがこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素手でも道具を使ってでもいいから、好きにしろ」

トミンソクの中では、

捕らえたウサギを、あくまでも殺すことが前提になっています。

 

ウサギを手に入れた ト・ヒョンスは、

この後、ウサギをどうしたのか。

ト・ミンソクがヒョンスをパートナーとして

選ばなかったことから見ても、

ヒョンスは殺したりせず、

大事に育てたのだと思います。

 


このような確認作業は、

おそらく何回も行われたことでしょう。

 


姉のヘスを除けば、

ヒョンスに「反社会的な傾向」がないことを

誰よりも知っていたのは、ト・ミンソクであり、

失望も大きかったのではないかと思ったりしました。

 

 

そんなトミンソクの満たされない思いを

埋めたのが、ペク・ヒソンだったのだと思います。

 

ヒョンスが通う児童相談所で出会った

トミンソクとペクヒソン。

 

 

 

 

内部に同じ闇をもつ者ならではの、

問題行動の解釈。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、理想的なパートナーを手に入れた

ト・ミンソクはより殺人にのめりこんでいったのだと思われます。

 

 

 

ト・ミンソクは息子ヒョンスを

愛していたのでしょうか。

こんなシーンがありました。

 

拉致の現場を見られてしまうという

ミスを犯した ペク・ヒソンに、

ト・ミンソクは、

「楽しむための」殺人はお預けにして、

あくまでも、事故を装って被害者を

崖で処理した上、自首しろと言い渡します。

 

ヒソンがヒョンスにやらせればいいとこたえると、

トミンソクは怒りを露わにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このシーンを見る限りでは、トミンソクは

父親としての愛情を、もっていたのかもしれません。

 

 

ヒョンスの方は、

トミンソクをどのような父親として見ていたのでしょうか。

 

 

ヘスの「何を言われても、『はい』と答えないと

地下室で勉強をさせられる」という言葉からも、

また先の、ヒソンとの会話からも、

 

ト・ミンソク の支配的で威圧的な一面がうかがえます。

だいたいが、殺人を楽しむ行為自体が

支配を好む人間だと思われますが。

 

 

 

また、

子ども達が、地下室を生理的な感覚で

忌み嫌っていたのだとすれば、

すでに、殺人は行われていて、

 

ヒョンスは父が発する 生臭い血の匂いに

体が反応し、

相容れない距離が存在していたのかもしれません。

 

 

けれど、むしろ ト・ミンソクは

死んで、その犯罪行為が明るみに出てからの方が、

ヒョンスに大きな影響を与えたのだと思います。

 

 

村人からお祓いを強制的に受けさせられ、

精神的にショックを受けてしまった後は、

 

父の残虐性、異常性、

邪悪な知性は肥大化を続け、

ヒョンスを飲み込もうとする

より恐ろしい存在と化してしまいました。

 

 

ジウォンの愛は、

自分を捕らえようとする父の亡霊を追い払ってくれました。

 

 

ジウォンの愛を失うかもしれないと思った時、

感情が爆発して、それをきっかけとして

自分の感情をつかむことができるようになったヒョンス。

 

そんな彼に、殺人犯の疑いがかかり、

ジウォンに信じてもらえなかった時から、

再び現れるようになった父の亡霊は、

やみくもに怖かった

以前の亡霊とは、姿が変わっていたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が進みたい 光の方角ではなく、

暗がりの方へ引き戻そうと語りかけてくる 

父の幻影。

理性的にさえ思える、その言葉。

 


けれど、ただ怖がっていた以前とは違い、

冷静に受け止める ヒョンスの姿が

そこにありました。


 

父が問いかけた

「自分の本性」とは。


 

悪の象徴である「父」。

ヒョンスがこの時見つめていたものは、

父に姿を借りた 自分の「負」の感情

だったのかもしれません。