右手を上げたまま、膝から崩れ落ちた。宇野は笑っていた。今季初めて後半の4回転トウループを2本そろえて演技を終えた。
「結果は自分の実力不足。自分が求めているものはもっと上だけど、後半のジャンプを久々にまとめることができたことがうれしかった」
最終滑走の金に逆転されたが、五輪を戦う新構成で収穫も手にすることができた。
冒頭のループはきれいに降りたように見えたが、回転不足を取られた。続くフリップは転倒。ここで“宇野流”の切り替え術が光った。
「2つは失敗の確率が高いジャンプ。フリップはじゃんけんで負けてしまったと思って切り替えた」
強い気持ちで鬼門の後半へ突入。4回転―2回転の連続トウループ、続く4回転トウループを次々と決めた。
4種類5本の4回転を、今大会からサルコーを抜いた3種類4本に絞った。五輪を戦い抜くための決断だった。鍵に挙げたのは
SP、フリー共に後半に跳ぶトウループ。練習での成功率は一番高いが、試合になると確率が落ちる。樋口美穂子コーチは「曲の中で疲れているところで跳べない。単発で跳べてもだめ。そこの調整が難しい」。
全日本選手権後は曲かけ練習を増やし、後半を強化してきた。
上半身がゴールドの金衣装を初披露。これまでの青から替えた意図を尋ねられ、打ち明けた。
「多分(五輪の)フリーは青で滑ると思うので、この衣装は今回だけです」
ワックスで固めた新髪形も
「やれって言われたからやりました。気に入っていません」。
いつも通りの飾らない言葉に、周囲は笑いに包まれた。






