「・・・だって、あれほど殲滅の森には行ってはならないと言われて、しかも1人で行ったんだよ!?皆に心配かけて、謝らない方がおかしいでしょ?」

ラティスは呆れて言った。

「確かに王子の言うことはあっていますし、謝ると言う事もあっています。しかし、どうして俺に言ってはくれなかったのですか?俺は王子の従者なのだから、護衛として就くことも出来たはず。なぜお1人で・・・?」

少年は少し黙り込んで、そしてゆっくりある言葉を口にした。

「・・・・・・シルク草を取りに。」

その言葉を聴いたとたん、ラティスは驚いた。

「王子・・・、聞いていらしたんですね?殿下と俺の話を、だからお1人で森へ・・・」ラティスの目が少し潤む(うるむ)。

「うん。殲滅の森にしかない幻の魔葉(ましょう)・・・魔導師なら絶対に欲しがる一品だって・・・、もう少しでラティスの入隊記念日でしょ?だからそれをプレゼントしようと思って森に行ったんだ。他の人に言ったら、そんなものあるわけないさって・・・」少年は下を向いて言った。

ラティスは少年の頭を少しなでて、優しく言った。

「王子は偉いですね。俺の夢を探してくれるなんて・・・。そのお気持ちありがたく思います。今度は一緒に探しましょう!さて、城の皆も心配してますし、そろそろ王宮へ帰った方が良いでしょう。」そう言いながら少し笑った。

「うん!」少年は元気を取り戻し、ラティスと一緒に王宮へ帰った。

                 ♪

森を出て数時間も経たないうちに、とある大きな街が見えてきた。

街の名前はエミネントタウン。

街中には、たくさんの民家やお店・そして大きな王宮が建っている。

2人はエミネントタウンへ入って行く。

ラティスと少年が街中を歩いていると、街の人たちがざわめき始めた。

「おい!あれってもしかして、王宮の者じゃないか?」

「ん?そう言われれば・・・本当だ!ありゃあ、王子の従者・・・ラティス・シェードだ!」

「何でこんな街中に?」

「私知ってるわよ?なんでも、王子が1人で王宮から出たそうよ。」

「はぁ?ホントかよ!?」

街人たちは2人の噂をしていた。

少年はしきりに辺りを見回す。

「すごい人盛りだね?ここを出て行くときはこんなにざわざわしていなかったのに。」

「そうですね・・・確かにこの騒ぎ場、やはり王子がいなくなったっと言う噂が街全体に広まってしまったのかもしれませんね。」

ラティスは少年に少し急ぎましょうと言った。

~森の中で~

光射すとても静かな小さい森で、1人の少年が何かを探していた。

「ないなぁ・・・シルク草」少年はため息をついて、また辺りを見回したり、木の根っこ辺りや岩の隙間など、細かく調べていった。

                  ♪

数時間後・・・。やはり見つからなかったのかガックリと気を落とし、森を後にしようとした・・・その瞬間!!

周りから何かを“切り裂く音“が聞こえてきた。

少年はその音に気がつき、近くにあった岩の陰に隠れて耳を澄ました。

音はどんどん近く大きくなり、あまりに危険と感じた少年はその場を離れようと、後ろに少し下がった。っとその時!!

「ガァアアアアアア!!」

大きな声とともに、隠れていた岩が切り裂かれ、少年は顔の前に腕をクロスして、硬く目を閉じ受身をとった。

薄っすらと目を開けて、目の前にいるものを確かめた。

すぐさま目に入ったのは、少し湿ったウロコ。他には、尾の長いしっぽにコブラのような鋭い目つき、岩さえも切り裂く先とがった爪・・・。誰が見ても分かる。

ラミアだ!!

ラミアは少年に向けて爪を横に振った。爪は少年には当たらなかったのだが、杖に当たり、弾き飛ばされてしまった!武器も持っていない少年はなすすべもなく今にも殺されそうだ。

ラミアが先とがった爪を少年に向けて、構えた瞬間!!

「やぁーーーッ!!」

杖を持った青年が、何処からともなく少年の前に現れた。

青年は杖を構えて、攻撃態勢に入った。

「王子に、指一本たりとも触れさせるかよ!!」青年は魔術をラミアに向けて放った。すると、ラミアの周りに風の気流が生まれ、鋭い風がラミアを切り裂いていく。

「ギガァアアアアア!!」

切り裂かれたラミアは森の奥底へ去って行った。

「お怪我はないですか?王子」青年は自分の肩と手を貸し、少年を立ち上がらせた。

「うん・・・。助けてくれてありがとう、ラティス」

少年は今にも泣きそうな顔をして、ごめんなさい。っと言った。

ラティスと呼ばれた青年は不思議そうに首を傾げて聞いた。

「どうしたんですか?」っと、 少年は質問に答えた。

「よしっ、誰もいない」綺麗なエメラルドグリーン色の髪に灰色のローブを羽織った少年(エルフ:長い年月を生き続ける種族)が豪華な部屋のドアを出て、長い廊下を走っていく。

長い廊下はいたる所曲がり角が沢山あって、少年は最初の部屋から3回目の曲がり角を曲がった。

曲がった廊下には、見回りをしている兵士が1人。兵士は少年を見つけた。

「王子!?なぜこのような所に!?」兵士は少年に近づいて行く。

「ごめん!!」少年は手に持っていた杖で魔術を唱えると、兵士に向けて放った。

兵士は術にかかり、その場に倒れると・・・寝息を立て始めた。

「他の兵士に気づかれる前に、急いで殲滅(せんめつ)の森へ行こう!」少年は警戒しながらもまた走り出す。その後も何人か見回りの兵士に見つかったのだが、全員魔術によって眠っていた。

                  ♪

「王子は見つかったか!?」白と青の色が混じった髪を、頭の後ろで1本縛りをしている青年(ビート族:動物のような耳と尾が生えている人間)が城中の兵士をかき集め、少年を探していた。

「城中を込まなく探せ!見つけ次第保護するんだ!!」

青年は指示を出し終えると王広間へと向かった。

王広間の王族用椅子にとても美しい女性が座っていた。

青年は片膝を折り、頭を下げた。

「女王陛下。必ずや王子をお見つけいたします。」

「えぇ、・・・居場所は分かったのですか?」女性は心配した顔つきで言った。

「いえ、まだ決定したわけではないのですが・・・。街の者が王子らしき人物を見かけた。との目撃情報がありました。街の者の予想では・・・殲滅の森かと・・・。」

「そうですか・・・。引き続き、お願いしますよ。」

「承知しました」青年はその場に立ち、青く細い線の入った黒いコートを羽織ると、王宮から街を渡り、北東にある殲滅の森へと向かった。