居候先のスパニッシュ ハーレムから、これまたやばい地区、ローワーイーストサイドに移り住んだ。

そこから日々、126丁目にあるイーストハーレムミュージックスクール(サルサの学校)に通い、週に一度はブロンクスの先生のうちにコンガ修行に行き、夜はサルサクラブをハシゴして、踊り狂い、昼間はジュパニーズ レストランでバイトをするという日々を過ごしていた。

 ある日、友人たちが日本からニューヨークに遊びにやってきた。うちに遊びに来ないかと誘うと 早速 マンハッタンの

地図を広げ、

 ”どこですか?ローワーイーストサイド? アベニューAから東は斜線地区ですから、ダメですね。”

 ”斜線地区って何それ?”

 そう、マンハッタンの地図を広げると斜線が書かれている地区がある。要するにそこは危険だから行ってはいけない地区らしい。

  出たーびっくり 旅行会社の陰謀だ~! 

 その斜線地区こそ、面白い所なのに、、。笑い泣き

安全がモットーの旅行会社。客に何かあったら困る 旅行会社の責任になって評判が悪くなる~って、そんなところだ笑い泣き

 ってか、気がつけば、その斜線地域ばかりで暮らしている私なのであるチュー

 確かにメトロの駅まで歩くと、途中のコーナーに立つドラッグのプッシャー達からは、声をかけられ(顔見知りだから問題ない)メトロの4番線で。イーストハーレムに向かうと、セントラルパークを過ぎる頃には、乗客はほぼスパニッシュかブラックになり、そして121stの駅で降りると、そこはもう、アブチュエラ(プエルトリコの豆料理)の匂いとスペイン語が飛び交う、まさに、ここはプエルトリコの世界だ!

でもって、ここもやばい地区らしく、みんなは私を近所の顔ききのおっさん達に挨拶回りだと連れて行ってくれ紹介してくれたり、ヌンチャクや刃物やピストルやと色々、自慢の武器を披露しながら、誰かが駅までの夜道を送ってくれたりと、(私は空手ができるので武器はいらんということでウインク) マイノリティーの結束は一旦 仲間になってしまえば、みんな優しくあたたかいのだ。

 しかし、ここニューヨークでは、まだまだ 彼らは差別される側だ。でも差別する側の人達に限って、一見 正しく清いことを主張して、戦争反対!人種差別反対!とか社会的運動してたりするんだけど、私は言いたい!

 

 ”自分の内側の闇に蓋して外側の闇しか見ないで ○○はんたーい!って怒りのエネルギー振り撒いている はっきり言って偽善者だよ!”

 

 で それさえ自分は気が付かずいいことしてる自分は偉い的な? よほどアウトローでマイノリティーの奴らの方が純粋で人間くさく明るいエネルギー出していたたりするだよ。

 それは、サルサの音に出ているじゃないか!! 

 

 ある日、友人のうちでコンガやティンバレスやボンゴやと叩き、一人一人が即興で歌いと、やっていると、いきなり、ティンバレスのソロが混入してきた。

 どこから聞こえるんじゃーって、まさかのびっくり

その音はなんと通りを挟んで向かいのアパートの4階の窓からだ。私たちも楽器を窓際に寄せて、大セッション大会が始まった。下の道行く人も、上を見上げて、”チェベレー!(最高!)”と、喜んでいる。さすが スパニッシュハーレムだ!

大騒ぎは次第に高揚する音楽の頂点に達する。すると、

 いきなり、私の足元から頭のてっぺんに彼らの音と同時に気持ちが一気に突き抜けた

 それは怒りの爆発のようだ。しかし、それはエゴイスティックな怒りでなく、もっと正義と真実を主張した怒りのような。心と身体に蓄えられた前向きな人間らしいフラストレーションの噴出!?

 ひ弱は集団が傷口舐め合ってるところからは何も生まれないが、彼らの怒りのエネルギーからは別種のエネルギーが生まれているのだ。そして、彼らの血と誇りに自信を持って。

 それが サルサがニューヨークで生まれた意味だ。