突然の暗雲と雹のような大粒の雨と強風。

竜巻台風注意報が出ていた。

急いで雨戸を閉めて、雷雨雷雨が通過するのを待った。

しばらくして雨が上がり、食料の買い出しに出ようと外に出た。

すると、ガレージの出口のアスファルトの上に、真っ黒なずぶ濡れの小鳥がボーッと立っていた。

つばめ?

車が来たら、轢かれちゃうじゃないショック!DASH!

私は、急いで近寄って、つばめを捕まえて安全な場所へ移そうとした。

全く動かないから、「捕まえられる」と思ったとたん、つばめは渾身の力を振り絞って、濡れた羽根で羽ばたいた。

つばめは、近くの並木の枝に着地しようとしたのに届かず、地面によたよたと着地した。

ふと見ると、つばめがもといたアスファルトの上には、トンボがピクピクと痙攣しているではないですかショック!

あぁ…

エサのトンボを捕まえて、得意気に飛んでいたときに、突然の雨に襲来されたんだわ…

羽が濡れて飛べなくなって、アスファルトに着地した…

雨宿りもせず、トンボと同じ場所でジッとして、雷雨が過ぎるのを待っていたんだわ…

じゃあ、あれは子つばめではなく、親つばめ?

ひなのために、この大きな獲物は失いたくなかったのね。

私は、すぐにトンボをつまんで、並木の根元に着地しているつばめのところへ持って行った。

「ほら、忘れ物。大事なものでしょ?」

つばめは、ジッとしていようとしたのに、私が近づいたことで、再びよたよたと飛んで行ってしまった。


野性の世界では、誰に教えてもらったわけでもないのに、親は子のために、命を惜しまずエサを探す。

子供が巣だっていっても、何の見返りも期待しないし、恩もきせない。

人間界はね。

子供の足をひっぱって、恩をきせ、いつまでも子離れできない親は、わんさかいるのよ。

つばめは偉いね。



買い物から帰ったとき、あのつばめは見つからなかった。

あんな出来事は、生まれて初めてのことだった。

なんだか、つばめに教えられたような気がした。