マンションの敷地内。

ラジコンカーで遊ぶ息子。自転車で遊ぶ娘。

私はその近くに座ってボトルに入れたホットコーヒーを飲みながら本を読む。


「ママ何か買ってきてあげる。何でもいいよ~。」

と自転車に乗った娘が言う。


「じゃあ、お花」

「うん、わかった。買ってくる。」

と言って、自転車で一旦どこかに行って戻ってくる。

おままごと。


「はい、お花。次は何がいい?」

「うーん。じゃあランボルギーニ」

と適当に息子が好きな車を言ってみた。


「うん、分かった。買ってくる。」と言って娘はまた自転車に乗ってどこかに行って戻ってきた。

帰りに植え込みに衝突していたから、

「高級車は修理するの高いからぶつけないでよー。」なんて言ってみる。


なんてことのない日常の一コマ。




「何が欲しい?何でもいいよ。欲しいもの買ってきてあげる。」



娘が何度も繰り返すこのセリフ。


お金に上限がなく、何でも欲しいものがもらえるならば私は一体何が欲しいのだろう。

一瞬、真剣に考えた。

何も浮かばない。


広い豪邸だろうか?高級品とされる物だろうか?


仮に宝くじ7億円が当選し、それが手に入れば果たして本当に幸せになれるのだろうか。



物そのものから得られる幸せは一瞬。

本当に欲しいのは沢山の幸せな感情。

だとしたら、私はどんな時に最高に幸せだと感じるのだろう。



死後の世界にお金や物は持っていけない。

それなら、出来るだけたくさんの幸せだった記憶を持ってこの世を去りたいね。