相談援助場面では、その方の想いや考え、価値観、真のニーズをしっかりととらえていくことが必要になります。

 

そして、そういうことを話していただけるように、一緒に考えていけるように信頼関係を構築していきます。

 

以前にも書いたように、コミュニケーションは、ことばだけではなく、非言語的な様々なサインをやり取りしながら伝えあったり、理解し合ったりしているわけですが、日ごろのやり取りでもすべてを理解したり伝え合うことは難しい反面、行間を埋めたり、想像したり、推察したりしながら、できるだけ正確にやりとりできるように双方の努力が必要になります。

 

相談援助場面に限らず、何か大切な場面における人と人のやりとりでは、日ごろのコミュニケーション以上に五感をフル稼働させながらやりとりしていくわけですが、その時相手が使ったことばやキーワードに丁寧に触れていく、着目していく、掘り下げていく姿勢が大切となります。

 

「すごく嫌なことがあって…」というような言葉があったとき、「嫌なこと」という出来事やエピソードも大切ですが、その方の「すごく」は聞いている側の「すごく」とは同じ尺度、感覚ではないかもしれませんし、何が「嫌」とか感じるかも十人十色で、その方の感じ方についても理解していく必要があります。

 

そして「嫌だ」と感じた背景に、実はそのエピソードや相手とは別の、過去の出来事や投影している誰かが隠れていたり、実は今までは「嫌だ」と感じなかったのに、今回「嫌だ」と感じたなにか他の理由や背景が隠れている場合もあります。

 

なぜそう感じているのか

なぜ今このタイミングなのか

なぜそれを自分に発信してこられたのか

 

など、表面には見えていない、しかもその人の中にしかヒントや答えがないことについて、ちゃんと見つめて、掘り下げて、一緒に考えていく、そして理解していく必要があります。

 

また、場合によっては今回の場面や相手が本当の理由ではなく、過去の経験なども「嫌」という感情の後押しになっていたりすることが見えてきたとき、

 

なぜそういう出来事に「嫌だ」という反応を起こしやすいのか

なぜ未だにその感情がしこりのように残っているのか

 

などについても触れていく必要があるかもしれませんし、

 

場合によっては、そのこと自体にのみ着目するのではなく、

 

本当はその場でどうしたかったのか

今後どうしたいと思っているのか

今ここで話をされた本当の理由やニーズは何なのか

 

などもしっかりと分析したり、ご本人と一緒に考えていく必要があります。

 

人は無意識でも意識的でも、誰かに何かを相談したり伝えるとき、その「誰か」を選んでいるし、その「誰か」がどのような反応をするのか想定していたり、期待していたりしています。

 

そしてその話をそのタイミングですることにも何かしらの意味や意図があるのですが、そのことを当の本人も気づいていないこともよくあります。

 

ですから、言っていること、表面にみえているエピソードや感情のみを受けとめるのではなく、その背景や奥にあるものにも触れていく、探っていく、受けとめていく必要があります。

 

その時、受けとめる側が、ただ単純に受け止めたり表面あおみるのではなく、ちゃんと「なぜ」という感覚をもって、もっと深く理解しようとする姿勢が大切になります。

 

子どもたちの場合、そういうやり取りを重ねることで、自分の感情や内面と付き合う力がついたり、本当の気持ちに気づく力がはぐくまれていきますし、真のニーズの解決にもつながります。

 

支援者側、大人側が見えているもの、表面にあるもの、語られている言葉やエピソードにのみ着目したり、振り回されたり、解決に急いだりせず、丁寧に掘り下げていくことを行うことがとても大切なことだと思っています。