相手に何かを伝えるとき、一方的に自分の言い分を押し通したり、時には大声や怒りの感情を使ったりいわゆるマウントをとったりしながら相手より優位にコミュニケーションをとろうとする方法は、多くの方が好まないコミュニケーションスタイルだと思います。

 

一方で、過度に周りの意見や反応が気になり、自分の意見を言えなかったり、相手に合わせすぎるコミュニケーションスタイルも、自分の意見や感情を抑えすぎてストレスがたまったり、生きづらかったり、時には心身の不調につながったりして、決して好ましくはありません。

 

とはいえ、前者はそういう方法やコミュニケーションパターンしか持ち合わせておらず、自分のほしい反応や結果を得るために、ある意味必死にそのやり方でおしとおしているのかもしれませんし、後者は一見思いやりや相手に配慮しているようですが、実は自分に自信がなかったり、「間違ったことを言いたくない」「否定されたくない」などの恐れからその方法を選んでいる場合もあり、どちらの方法の方をみていても、生きづらいだろうな、と感じます。

 

少し前から注目されている「アサーション」という考え方・コミュニケーションスタイルは、相手を尊重しつつ、自分の意見は伝えていくというバランスの良いコミュニケーションスタイルで、立場は違っても意見を伝えるという点ではお互いが対等な関係性の中でコミュニケーションをとることができ、きちんと気持ちや考えを伝えることで結果として良好な人間関係を構築することにつながると言われています。

 

アサーティブなコミュニケーションでは、相手の主張や意見は丁寧に受けとめますが、相手の立場や自分との関係性、その場の状況等に応じて適切な表現方法を選択し、柔軟な姿勢で、自分の意見もきちんと伝えていきます。

その際、感情的になることはなく、適切な言葉と態度で「伝える」ことを重視しますので、相手も自分も不快になることも負担になることもなく、いわゆるWin-Winの状態で話が終わります。

 

具体的な場面では、まず相手の主張に対して、相づちや表情、リアクションなどの非言語的コミュニケーションも駆使しながらまずしっかりと聴き、意見・主張を受けとめることあら始めます。

 

その上で「あなたの意見はこういう点で良いと感じました」「こういうご意見ですね」「なるほど、そのような視点は気づきませんでした」など、受けとめたこと受け取ったことをしっかり言語化し、場合によっては率直な意見や提案をくれたことに対してお礼を言います。

 

そのあと、疑問点や確認したいことがあれば、指摘ではなく「ひとつ確認したいことがあるのですが、よろしいですか」などの前置きの上で、「確認」をし(あくまで確認なので、批判や否定ではなく、相手も不快な感情を持ちにくい)、状況や情報、自分の理解を整理し、深めます。

 

実はこのことは相手にとっても、わかろうとしてくれたという安心感につながりますし、正確に伝わったという安心感になる人もいますし、こちらも冷静に状況を分析したり、整理する機会にもなります。

 

その上で、「自分はこんな風に感じた」「自分としてはこのように思うがどうだろうか」などの提案や主張を、「I(私)メッセージ」で行っていきます。

 

もちろん、だからといって、冒頭のような方の中には、自分以外の意見は一切聞かない、受入れないというかたもおられるので、すべての相手・状況に使えるわけではありませんが、日常場面においては十分に使えるコミュニケーションの方法です。

 

子どもの頃は、親や先生などの周りの大人が真意を組もうとしてくれたり、折れてくれたりして伝えなくてもなんとかなりますが、大人になると、伝えないと伝わりません。

 

かといって、相手を不快にさせたり怒られたりするのも嫌・・・、なんて考えているうちに自分の意見や考えがいえず、飲み込んでばかり、なんてことになると自分がきついことは言う目でもありませんが、理解し合えない相手だって実は困っているなんてこともありますし、職場などであれば伝える力は必要とされるもの。

 

相談場面で出逢う方の中にも、このコミュニケーションスタイルが背景になって悩まれている方が少なくありません。

 

苦手だなと思われる方も、ほんの少し、できそうな場面からでも良いので、アサーティブなコミュニケーションを心がけてみることをおすすめします。