職場の管理職研修では、部下のメンタルヘルス支援を行う上で大切ないくつかのポイントをお伝えしています。

 

まず、部下の変化に「気づく」、次に「声をかける」、そして、適切に「支援」し、「見守り」を継続すること。

 

ひとことで、部下の変化に気づくといっても、変化に気づくには普段のその人の様子や状況を把握していく必要があり、その上で、ちょっとした変化に気づく必要があります。

 

例えば、

・日頃は身ぎれいにしている方が毎日同じ服装になってきたり、襟の汚れが気になったり、整容が整っていない、など

・いつもは頼んだ仕事がすぐにできあがる部下なのに何日も時間がかかったり、精度がさがってきた、など

・いつも時間を守る人が、遅刻など時間を守れなくなっていたり、些細なミスが増える、など

・最近やたらとため息やネガティブな発言が増えている、など

あくまで普段と違うことに対しての気づきです。

 

ですから、日頃から時間を守るのが苦手な方や日頃からあまり整容を気にしない人はまた別で、あくまで「普段のその人との違い」に気づくことです。

 

そして、気づいたらいきなり指摘や指導、本題に入ると言うよりは、

「最近疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

「何か心配事があるならいつでも相談に乗るよ」

などの声かけをしながら、いつでも相談に乗るという姿勢・気持ちを伝えていきます。

 

最初は「大丈夫です」などの反応で終わる方も少なくないので、そのときは継続的に見守っているというメッセージを込めて負担になりすぎない声かけを継続しつつ、「何かあればいつでも言ってほしい」というOPENな姿勢を伝え続けます。

 

ただ、すぐに改善されるケースは良いのですが、業務に影響するような勤怠問題や業務上のミス等が頻発してきたら、待っているだけではいけませんので、より積極的に関わり支援をしていくこととなりますが、それはまた別の機会にお話しします。

 

先ほども述べたように、第一段階の「気づく」とは、「普段と違う」ことに気づくことなので、普段からの観察や関係性が重要ですし、普段会話がほとんどないのに、いきなり踏み込んだ話はできないわけですから、当然日頃からのコミュニケーションが重要であることがいうまでもありません。

 

ちなみに、挨拶や他愛のない日常会話がある職場は、ない職場に比べてメンタルヘルス罹患率が低く、ハラスメント等の問題もおきにくいと言われています。

 

それは、問題が起きにくいと言うこともありますが、問題がおきてもそれを話し合い、協力して解決する雰囲気があり、小さな問題のうちにそれを向き合う心の余裕や余力があり、みんなで取り組もう・支え合おうとできる風土や空気があるからこそなのだろうと思います。

 

子どもや家庭、学校などの組織の問題も同じことがいえます。

 

日頃から良好なコミュニケーションが存在すること、そして何かあればチームで取り組めることと、もし問題や不満等があれば早いうちに、些細なうちに話し合い、解決に向けて取り組めれば大きな問題には至りません。

 

そして、仮に誰かつらい気持ちを抱えていたり、しんどい状況にいても、それを周りが気づくこともできるでしょうし、相談しやすい風土もあるでしょうし、良い方向に向けて一緒に取り組むこともできるでしょう。

 

となると、職場であれ家庭であれ地域社会であれ、上司、親、先生などは、関わる部下、子どもたちの日頃の様子を観察し、変化に気づくことがとても大切で、そのことが何より問題の早期発見・早期解決、あるいは予防につながるのだろうと思います。

 

難しいことではなく、日頃の、些細に見える、日常的なコミュニケーションが、実は何より大切。

何事も基本が大事と言うことなのかもしれませんね。