山藍紫姫子 花音文庫BLACK 水上シン ☆☆☆


元隠密→殺し屋請負人 × 元上級武士→性奴隷


ある日、油問屋のお澪は危ないところを謎めいた美剣士に助けられた。

男のあやうい魅力に取り付かれ、男の後をつけてみると

男はいわくつきの廃寺に入っていった。

こらえきれず、廃寺の中に入ってみると

そこでは、先ほどの美剣士・佐門(攻)が艶めかしいオンナを組み敷いていた。

 その激しい淫行に心を乱され、二人のことが忘れられず再度、寺を訪ねるお澪。

しかし、その寺には今度は見上げるように大きく猛々しい怪僧・鉄がいて

この間の美しいオンナを抱いていた。

鉄がこのオンナの秘密を見せるといい、オンナの前をはだけさせると

そのオンナはなんと妖しい空気を纏う、男・弁天(受)であった。

男とも女ともつかぬ艶かしい白珠の肌を晒す弁天を恋敵とも、魔性の虜ともなり

お澪はこの謎めいた廃寺の住人たちにのめりこんでいく・・・。


前半というか、上巻まるごと、受の主人公・弁天がかわいそうでなかった

山藍先生の受の主人公はかならずといっていいほど酷交を強いられてますね

それでも、攻→受への激しい執着(愛)がこれでもか これでもかっと描かれていて

一種の救いになるのですが

この作品の攻は他の作品と違って、上巻では受をどう考えているのか見えません

(そもそもがこの二人、藩を取りつぶすためのネタを探りに来た隠密とその藩の元武士にして佐門を敵と命を狙ってきた男という関係がスタートだったので)

ますます、佐門の弁天への狂交や、鉄に弁天を好きなようにあてがう様は読んでてつらくなります。

結果的に二人の仲を裂くことになるお澪さんのほうが弁天の身体を心配し、労わる姿に弁天への愛を感じるくらいでした

(本来なら憎いはずの恋敵にも情をみせるお澪さんのポジションは一読者の視線のような気がしてきになる構成ですね)

しかし、そのお澪に気遣いのせいで弁天はお澪の父・宗左衛門の妾とされ、佐門はお澪により座敷牢に閉じ込められ離れ離れにされてしまいます。

 下巻はほとんど主人公の二人のHシーンがなく

(木につるされ、媚薬に苦しむ弁天を立ったまま後ろから、しかし寸止めのみ)

ほとんど弁天は宗左衛門や昔の藩の知り合いで食い詰め浪人となった男に騙され、

犯されたり、金のためにいろんな男に嬲りものにされたりと悲惨なシーンばかりが続きます。

唯一の救いは、宗左衛門の弁天への執着が身勝手なものではなく、

「誠の愛」であったかもしれないなと思うところですね

そう思って読み返してみると下巻の宗左衛門の言動は他の山藍先生の攻の主人公の言動に近いのです。

(佐門に嫉妬しての折檻や お姫様だっと フェ● 添い寝 etc)

なんだったらこのまま大棚の女将でいいんじゃないの?!って思えるくらいの

宗左衛門の過保護っぷりですが


最後の最後 驚きの事実によって

なんで宗左衛門じゃ駄目なのか!

佐門と(鉄も忘れちゃ駄目よ)と一緒じゃないと駄目なのかが公になります。


そう見ると最後の最後のシーン

牢の格子ごしに再会して思わず待ちきれずに貪るようにKISSする弁天と佐門のシーンは

考え深いものです。

去り行く二人をそっと見守る宗左衛門に目礼する弁天。

いつまでも余韻の残るラストでした。


久々の山藍作品 堪能しました。 

なんだか しっとりです。


イラストはこんなものかな ハードカバーイラストでもみてみたいかな