崎谷はるひ  シャイノベルズ 佳嶋 ☆☆☆☆


10歳年上の義理の叔父× 自分に自身のもてない箱入り高校生

互いに問題をかかえるヤンデレもの


名門エスカレーター高校に通う遠山由宇(受)は多忙な両親に代わり、義理の叔父である瀬名匠(攻)に

よって大切に大切に育てられる。

誰よりも自分を甘やかしてくれる匠を由宇は心から慕っていた。

でも、もう甘えることができない・・。

なぜなら、自分の中にある背徳と禁忌を知っていまったから・・・。

「僕を、大切な甥としてではなく、可愛い女の子みたいに愛してほしい」

けれど、どうしようもなく心が破裂してしまいそうに高まったとき、由宇の欲望があふれだし、

ふたりの新たな関係がはじまる=

心と身体を支配 服従 する甘く残酷な官能の扉が開く。


崎谷さんってもっと軽いタッチの文章を書く作家さんかと思っていたら

こんなディープな作品も書かれるんですね

あとがきでも本人「かなり実験的作品」とおっしゃられているように

かなり濃ゆい作品です

一言で言ってしまうと「ヤンデレ」ジャンルなんですが

そんな一言で片付けられないお話です


そう この作品の主人公二人はそれぞれに病んでいます

まず 受の主人公、由宇は愛する匠のために

ことさら自分は可愛らしい女の子らしい生き物にならないといけない

そうしなければ匠に愛されないと思い込みすぎて女装に逃げ込みます

匠に抱かれるときはかならず、女性の下着、フリル、レースがふんだんに使われた繊細なドレスを着て

自分の顔が隠れるメイクをほどこされないと身体を開くことができません。

行き過ぎた自己評価の低さです


対して、攻の匠は由宇が5歳のころから目をつけ、自分の色に染め上げるために大事に大事に育てます

(小学生のころ歯列矯正器具をつけてうまく食事ができない由宇の自分が咀嚼したものを口移しで食べさせるくらいのかなり危ない過保護っぷり)

それが、

「急に男の人に愛されたいから女の子になりたい」と由宇に言い出され

別にすきな人ができたのかと誤解し、

それならばと、精神的支配で、調教と快楽の地獄で無理やりに由宇を愛玩人形に作り変えていきます。

行き過ぎた庇護愛です


男の人に愛される女の子にしてあげる、 なりたいという二人の共通関係上

(このときは二人はお互いの両思いを知りませんが)

その調教シーンはねっとりと甘く、時に恐ろしく

特に言葉攻めが大好物な方には かなり刺激的な作品かも

(また 受になにをされているか、どうして欲しいかちゃんと口にしないと放置するという攻め方も過激です)

「分かってるよ。ゆうのやらしいお尻、いっぱい突いてくださいって言ってごらん」

「俺にして欲しいんだろ、由宇のかわいいおちんちんから出たミルク、全部しゃぶって、だよ 言ってごらん」

う~、おぼこい高校生じゃなくてももだえ戸惑っちゃいますよね

其の上で

イクときは申告しないといけないし、

自慰が禁止で出すときはかならず、匠さんが見ている前でだけとか

すべて由宇の肉体は匠に管理されていきます。


しかし、このお話の醍醐味は

私見ですが二人の苦悩の逆転にあると思います

上記、 作品の前半だけ見ていると

匠が酷い鬼畜攻なストーリーに見えると思いますが

お話がすすむにつれ

後半 本当に酷いのは?本当に辛いのは?本当に寂しいのは?

切なくて、か弱くて、愛しい匠の心が見えてきます


最後は この依存関係は二人にとって最高にハッピーな結末に向かっていきます 

めでたし めでたし


また こういった退廃的、病んだ作品にどこかメルヘン調でもある

佳嶋さんのイラストも今思えばあってると思いました

(最初はすご~く違和感感じてたんだけど、結果オーライかな)