「お母さん、まだ 私の大学の正門を見ていないんでしょ?」

今回の旅行の一番の目的、『娘の大学生活』を 見てくること。

しかし、この娘の質問には 少々困った。「見たとも言えるし、見てないとも・・極めて曖昧。」


実は この大学に娘と一緒に初めて 来訪したのは、娘 12歳の時。

6年前なんて 私にとってはついこの前の話。昨日のことの様に思い出す。


その時は、ロンドンの大学以外に Royal Hollowayも 来訪した。

大学のOpen Dayか もしくは、それに代わる学生による案内があるかどうか、娘に事前に

大學にメールで問い合わせをさせてRoyal Hollowayからはとても温かい返事まで頂いていた。


International School は正確に言えば 大学まで 探してくれない。

娘の友達など、「イギリスの大学も受験したい」と自分の InternationalSchool に言ったところ

受験担当者から「イギリスの大学のシステム、私、知らない」と はっきり言われたそうである。

だから、卒業の前の夏休みになると 家族であのアメリカ大陸を車で横断するなんて、

「どれだけ、お金がかかるの?」と思いたくような話を 他の人達から始終聞いていた。

私自身、英語が出来ないのに 何をどうやって 大学を決めて良いやら....

兎に角、娘本人が 大学を見つけなければ 我が家の場合 誰もどうしてやる事が出来ないのだ。

6年前、途方にくれながらも アメリカよりも公共機関の整っているイギリス、個人的には大好きなイギリスに 

日本で言えば小学校6年生の娘をその予行練習を兼ねて やってきたわけだ。

しかし、今の娘の学校から結局 事務的な返事しか もらっていなかった。

ロンドンに着いても なかなか、大学の窓口に電話もできない娘に、「今日こそ電話をしよう!」と言った。

娘は その時点で もう泣き声だ。失敗しても良い、何しろ 娘に電話させた。

「International Studentの窓口に来てください。」至極、当然な返答を頂いた。

しかし、大学の地図を見ても、場所は分からなかった。

今自分たちが学校内を歩いているのかも分からない。

「誰かに聞くしかないよ。」

娘は 恥ずかしくて緊張のあまり 泣き泣き女の人に尋ねた。

「とにかく 学校の正門まで行って 誰か他の人に聞くと 教えてくれるわよ。」

女の人は 娘が泣いているのに気づかぬふりをして 答えてくれる。

こういう優しさは イギリス人特有だと思う。 

この国でなら 娘だけでもやっていけるかな ? その時 そんな事を考えた。

しかし、正門に行って 教えてもらった入口を入ってもまだ、迷った。

「イギリスの建物の中は迷路の様」覚悟していたものの それ以上だった。

また、男の人に尋ねた。

今度は、案内するでも しないでもなく 少し先のドアを次々に開けながら 歩き続けてくれた。

まるで、自分がInternational Studentの窓口に 用事がある様な素振りで・・・・

本当に 感謝である。

そして、窓口にやっと たどり着いた。

窓口の人は 娘から届いていた日本からのメールを 探し、丁寧に対応してくれた。

その間、私の顔は見ずにすべて、泣きっぱなしの娘に 説明してくれている。

「この国になら、子供一人でも 行かせられるかな?」

と また 考えた。

最後に 担当者の女の人が言った、イギリス人にしか 言えない言葉

「メールより 電話。 電話より Face to Face !」

その時だけは、泣いている娘だけじゃなく 私の顔も見て 「よく頑張ったわね」 の意味を込めて 
いたずらっぽく笑った。

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あの泣きながら歩いた道を 今 娘は 誇らしそうに、

「お母さん、正門見てないでしょ!」と言ってさっさと 私の前を歩いている。

娘は ほとんど 最初の訪問を 覚えていない。それも、良いと思う。

こんな積み重ねあって 今の娘が ある。 感無量。