【 エジンバラ 植物園 ここまですれば アートです ! 】







大学から教えられた 医者としての心得を話している間、娘はずっと うつむいたまま・・・・。

「お母さ~ん、私、ミス無しで 医者になれると思う~?」

私、「なれないと思うよ。 ミスすると思うよ。 でも、その為に 先生が指導してくれるんでしょう?
   
   そんなに、大きいミス しない様にしてくれるよ。」

娘 : 「そうかなぁ~? 自信ないよ~。患者さんの気持ちを 私に 話して。」


娘は うつむいたままである。


私は娘が生まれてすぐに 大病を患い 手術の為 入院した。

その時、病室で話した 患者同士の会話を今も 大切にしている。

1ヶ月入院すると 友達も出来る。

そんな友達と 軽い気持ちで話したこと。

私: 「医者も看護婦も すごく この病院 親切だよね。 でも、なんかねぇ~」

友達 :「・・・・・そんなに親切にしてくれるぐらいなら、・・・・ 私の代わりに 死んで欲しい。」

・・・・・・・・・・・・・・ 彼女は 末期ガンでした。

悲痛な話だけれど、私はこれが 正直な患者の気持ちだと思う。

誰一人として、死にたい人間なんていない。 生きたくて もがき苦しむ。

私はこの姿を 見苦しいとは思わない。ごく、自然な行為だと思う。

医者はこの患者の苦しみを 真っ向から受け止めなければならない。


娘が 医学部受験を決めた時 私はこの話を娘にした。 今、また、この話を聞きたいという。

「責任重大だよ。」 相変わらず、うつむいたまま娘はつぶやく。

私:「でも、誰かがやらなければならい仕事だよ。 人の生き死に程、人間にとって重大なことはない。

   それに、関わりを持てるなら、あなた自身の人生だって、重厚になると思うよ。

   いろんな事があると思うけど、どこかに 『落しどころ』 を見つけて やっていくしかないんだよね。」

娘が 初めて 顔を上げた。



正直、私はこの時 娘が何を話したか 覚えていない。

娘の目は 黒目がちで何を見ているか 分からない目をしていた。

そして、眼光は鋭く 眉は つり上がっていた。私は 今まで こんな顔の娘を見たことが無い。

胆の座った、頼もしい 医者の顔だった。 

( こういう医者になるんだなぁ~と心の中で思った。)


私は感動して、

「でも、あまりストレス強すぎたら、大学 スベったと思った時みたいに、泣いて家に帰ってくれば いいジャン !」

娘の顔は いつもの通り、タラ~とした 溶けそうな顔で、笑っていた。