アサーション~「私メッセージ」 | 立命館大学ビジネススクール教授 高橋慶治のブログ

立命館大学ビジネススクール教授 高橋慶治のブログ

立命館大学ビジネススクール教授、合同会社人間開発研究所代表社員、元臨床心理士、元JOC強化スタッフ(メンタルトレーニング、コーチング)の高橋慶治が、マインドフルネス、メンタルタフネス、ストレスマネジメント、コミュニケーション&人間関係など色々書いています。

先日、大学院のコーチングの授業で学生から質問がありました。それは、「上司の言動が原因で、自分や周りの人々が困った影響を受けており、相手に言動を変えてほしいときは何か方法はないのでしょうか?」という内容でした。

そこで私は、アサーションの話をして「私メッセージ」について簡単に説明しました。時間がありませんでしたので、詳しくはブログで説明しましょうと話しました。

そこで、今回はアサーションの一つの方法「私メッセージ」について紹介します。

「私メッセージ」とは心理学者トマス・ゴードン博士の「親業」の中で紹介されている方法です。
親業とは、親のためのリーダーシップ訓練講座「親業(PET:Parents effective training)のことで、アメリカの心理学者トマス・ゴードン博士によって1960年代に提唱されました。

ゴードン博士は、1990年までに数千人の親業インストラクターを育成し、全米と25の国々で100万人以上の親に「親業」を教えました。日本でも1980年以降に10万人以上の人が「親業訓練講座」を学んでいます。

「親業」は親子だけでなく、対人関係全般に応用できます。上司と部下、教師と生徒、夫婦、恋人同士、友人関係、様々な人間関係の対立を解いて円滑にすることができます。

「親業」は、次の三つの柱からできています。それは、①聞く技術、②話す技術、③対立を解く技術です。「私メッセージ」とは、話す技術の中のひとつです。

ゴードン博士によるとメッセージは2つの種類に分けることができるといいます。それは、「あなたメッセージ」と「私メッセージ」の2つです。

相手の言動が原因で、自分が困った影響を受けており、相手に言動を変えてほしいときは、相手を責めるような「あなたメッセージ」は逆効果になります。

「あなたメッセージ」とは、「あなた」が主語になっているメッセージのことを指します。「あなたメッセージ」を受け取った人は、相手は非難,評価,説教,指示のメッセージを聞かされることになるので、自尊心が傷つき、心を閉ざしてしたり、反発してしまいます。そうなると、当然、自分の言いぶんや気持ちは伝わりません。

「何で(おまえ)はそんなミスをしたんだ」
「約束を守らないなんて、(君は)最低だよ」
「課長(あなたは)は横暴です」

自分の考えを上手に伝えるためには、「あなたメッセージ」ではなく、「私メッセージ」を使いましょう。「私メッセージ」は、自分の考えや気持ちを、「私」を主語にして率直に伝える方法です。

「そのようなミスは、(私は)本当に残念だ」
「約束が守られず、私は本当に困ったよ」
「そのような対応されると私はついていけないと感じます」
などと、自分の気持ちを率直に表現し、あくまでも私のこととして相手に伝えるのです。相手も比較的受け入れやすくなるものなのです。

ゴードン博士は、「私メッセージ」を次の四つに分類しています。

1.対決の私メッセージ
2.返事の私メッセージ
3.予防の私メッセージ
4.肯定の私メッセージ

この中の「対決の私メッセージ」が、相手の行動が原因で、自分が困った影響を受けており、相手に行動を変えてほしいときに活用できます。
「対決の私メッセージ」は次の三部構成で成り立っています。

1.事実(事実のみを、非難がましくなく)
2.具体的な影響
3.自分の気持ち、考え

事実 「今日の会議10分遅刻しましたね」
影響(具体的)「そのため会議の開始が10分も遅れてしまって」
気持ち、考え 「(私は)参加者皆の時間を無駄にして申し訳なかったよ」

<例>
「なぜ、(おまえは)自分勝手に~するんだ!」
→「指示を守ってくれないと、周にりも迷惑がかかるし、私はとても困る」          
      
「君は人の意見を聞かないね」  
→「私は君に意見を聞いてもらってないように思えて、状況は改善できないし非常に残念だ」

「課長は(あなたは)横暴です!」
→「現場の意見を聞いてくれないと、現場ののモチベーションは下がるし、私はとてもついていけないと感じます。」

単に事実と気持ちを主語を私にして伝えるだけでも効果はあるのですが、具体的な影響も伝えることで、気持ちだけでなく具体的にどう困っているのか伝わるのです。

「相手が悪い」と責める「あなたメッセージ」から、「自分は相手の行動を受容できない」と伝える「わたしメッセージ」へと発想を転換しましょう。