コミュニケーション能力と人間関係能力 | 立命館大学ビジネススクール教授 高橋慶治のブログ

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立命館大学ビジネススクール教授、合同会社人間開発研究所代表社員、元臨床心理士、元JOC強化スタッフ(メンタルトレーニング、コーチング)の高橋慶治が、マインドフルネス、メンタルタフネス、ストレスマネジメント、コミュニケーション&人間関係など色々書いています。

最近の若い人と話すと、「コミュ障」という言葉が出てきます。


「私はコミュ障害で友達がいないんです。」と言った具合に使ったりしています。


「コミュ障」とは、「コミュニケーション障害」の略語で、コミュニケーションが上手く取れずに人間関係を築けない、友達がいないといった程の意味で使われているようです。

コミュニケーションに関する能力を、狭い意味でのコミュニケーション能力、そして人間関係能力と分けて考えることができます。


人と親しくなったり、人間関係や信頼関係を築く、好かれたり好感を持たれる、近づきやすく感じさせる、仲良くなったりするようなコミュニケーションの能力は人間関係能力と言う事ができます。


前述の「コミュ障」は、教義のコミュニケーション能力と人間関係能力の両方かどちらかに問題があると思われます。

コミュニケーション能力と人間関係能力の違いについて説明しましょう。


教義のコミュニケーション能力の目的は、的確な情報や意思の伝達です。自分が伝えたい情報や意思をきちんと相手に伝える事ができ、また相手が伝えたい情報や意思をきちんと受け取る能力です。


論理的に分りやすく話すこと、きちんと聞き、質問したり確認することが求められる主な能力の一つでしょう。頭と心と比喩的に表現すれば頭を使うものです。

人間関係能力といった場合は、自分と相手と親しい関係、信頼関係、友好な関係、ラポールを築く能力です。つまり心、真心とかが大切になります。

人間関係能力には、当然、一定レベル以上のコミュニケーション能力は必要だけれども、それ以上のトータルな(全人的な)要素がいっそう必要とされます。

ディベートで勝利を得るには高いコミュニケーション能力が必要なことは言うまでもありません。しかし、ディベートの達人が人から好かれ信頼される人間関係を築くのが上手いという訳ではないのです。


自分と相手と親しい関係、信頼関係、友好な関係、ラポールを築くには、

思いやり、気配り、寛容さ、深い人間理解、誠実さ、一貫性、価値観、暖かさ、情緒安定性、共感性、心の広さ、関心を示す、感謝の心、好意、約束を守る、正直さ、まめさ、気づき、愛想


などが求められます。これらは、まあ、能力というと語弊があるかもしれない資質、人間性なのかも知れませんが。


高いコミュニケーション能力を持っていても、心が狭く、上から目線、不誠実、二枚舌、気分屋、冷たい、言い方がきつい、独善的、共感性がない、関心を示してくれない、思いやりがない、愛想がない
、空気が読めない、冷笑的、皮肉っぽい、協調性がない

ような人と信頼関係や友好な人間関係、チームワークを築くことは難しいでしょう。

しかし、
思いやり、気配り、寛容さ、深い人間理解、誠実さなどを持っていても的確な情報や意思の伝達が上手く出来なければ、伝わらなかったり、誤解されたりして良い人間関係を築くのは難しくなります。思いやりや好意を上手く伝えるコミュニケーションのスキルは人間関係能力に入るかも知れません。


この社会でより良く生きていくには、コミュニケーション能力と人間関係能力(人間性、資質)の両方を高めていく事が大切なのです。