こんにちは、土井啓史です。
私は大学卒業後、NECで7年間、営業職として現場を経験したのちに独立しました。現在は、転職支援とITスクールを運営する株式会社Career Art(キャリア・アート)、そして訪問看護事業を営む株式会社グリーンメディカルの代表を務めています。
これまで本ブログでは、「日本経済の構造変化」「市場価値の高め方」「人材を活かす組織論」といったテーマで発信してきました。
今回は、最近よく耳にする「年収350万円で、NISAを月2万円やっている」という相談を切り口に、今の時代において本当に優先すべき投資先について、経営者の視点から考察します。
1. NISAより重要な「稼ぐ力」と入金力の限界
まず前提として、NISA(少額投資非課税制度)自体は非常に優れた制度です。しかし、多くの人が見落としているのが、インフレ(物価上昇)と運用額のリアルな関係です。
2024年以降、日本の消費者物価指数(コアCPI)は前年比2から3%台で推移し続けています。一方で、厚生労働省の調査によれば実質賃金は長らく伸び悩んでおり、生活コストだけが上がる「手残りが増えない構造」が定着しています。
ここで、冷静にシミュレーションしてみましょう。
■ NISAの期待値
月2万円を年利5%で20年運用すると、資産は約820万円(元本480万円)になります。
■ 物価の現実
仮にインフレが年2%続くと、20年後の820万円の購買力は、現在の価値に換算すると約550万円程度まで目減りします。
つまり、月2万円の積立だけでは「将来の生活を維持する」のが精一杯であり、豊かさを手に入れるための入金力(=稼ぐ力)が圧倒的に足りないのです。20代、30代のフェーズで最も優先すべきは、金融商品以上に、自分自身の稼ぐ力という資本への投資です。
2. 自分を磨く「環境」が市場価値を決定づける
では、その稼ぐ力はどこで生まれるのか。答えはシンプルです。それは「環境」です。
経済産業省の調査(未来人材ビジョン)でも指摘されていますが、日本企業の能力開発費(OJTを除く)はGDP比で見ても他国より著しく低い水準にあります。つまり、成長できない環境に居続けることは、それだけで将来の市場価値を棄損するリスクを孕んでいます。
特に若手時代は、どれだけ実績を積めるかがその後のキャリアの基礎票を決定づけます。ここで重要なのは、単に頑張っているかではなく、成果が出る構造の中にいるかどうかです。
例えば、私が経営している訪問看護事業のような成長市場では、需要が供給を上回っているため、個人の努力がそのまま実績(価値)に直結しやすい構造があります。一方で、縮小している業界では、どれだけ努力しても1人あたりの生産性が上がらず、給与に反映されにくいのが残酷な現実です。
どの銘柄を買うか以上に、どの市場、どの組織に自分を投下するか。このアセットアロケーション(資産配分)こそが、人生の利回りを左右します。
3. 転職の本質は「自分を活かせる組織」への移動
「転職して年収を上げるべきか?」という問いに対し、私は経営者として明確に肯定します。
厚生労働省の雇用動向調査を見ても、賃金が1割以上増加した転職者の割合は年々増加傾向にあります。転職はもはやリスクではなく、自分の価値を適正価格へ修正する手段です。
採用をする立場から言えば、評価したいのは「環境のせいにせず、自らの価値を高め続けられる人」です。しかし、どれだけ優秀な人材でも、その強みが活かされない組織にいては宝の持ち腐れです。
だからこそ、いい会社の定義を今一度見直してみてください。
× 消費される会社:安い給与で、現状のスキルを切り売りさせる組織
〇 投資される会社:人材を資産と捉え、市場価値を上げる仕組み(教育・権限移譲・正当な評価)がある組織
こうした組織に身を置き、自分自身の時給を上げることこそが、NISAの運用益を遥かに凌駕するリターンを生み出します。
4. まとめ:自分という資本を最大化するために
NISAでの積立は、長期的な資産形成の基盤として継続すべきものです。しかし、優先順位を間違えてはいけません。
20代、30代において最大の武器は、運用利回りではなく入金力(=稼ぐ力)です。そしてその力は、あなたが選ぶ環境によって決まります。最後に、明日から意識してほしい3つのポイントをお伝えします。
自分の「時給」を意識する
月2万円の投資益を出すには数百万の元本が必要ですが、スキルアップで月収を数万円上げるのに必要なのは、わずかな時間と正しい学習です。自分という資本を磨く方が、圧倒的に資金効率が良いことに気づいてください。
「成長領域」の隣に座る
どれほど漕ぐ力が強くても、逆流する川では前に進めません。人手不足が深刻なIT分野や医療・福祉、あるいはデジタル化の余地が大きい伝統産業など、構造的に価値が高まりやすい場所に身を置いてください。
会社を「利用」する視点を持つ
給与をもらう場所としてだけでなく、自分の実績(ポートフォリオ)を作る場所として組織を捉え直しましょう。その実績は、会社が倒産しても、あなたがどこへ行っても消えない「真の資産」となります。
金融資産の数字を追う前に、まず自分という資本をどこへ投資し、どう成長させるか。
今の年収350万円という数字は、あくまで現時点の「仮の評価」に過ぎません。未来のあなたが手にする資産額は、今どれだけ自分自身の成長にレバレッジをかけられるかで決まります。この「自己経営」の視点を持ち、一歩を踏み出していきましょう。
◆土井啓史の実績・プロフィール
1979年神奈川県横浜市生まれ。
幼少期を米国で過ごしたのち、慶応義塾志木高等学校、慶応義塾大学総合政策学部(組織論と戦略人事を専攻)を卒業。2003年にNECに入社。
営業職で経験と実績を積み上げ、29才で独立起業。
流通、小売、メディア、ITサービス、不動産、人材などのベンチャーで経営企画に参画した実績をもち、2019年より転職エージェントである株式会社Career Artを創業、同社代表取締役に就任。2025年より訪問看護事業をおこなう株式会社グリーンメディカルを創業し、同社代表取締役に就任。
<株式会社Career Art>
<株式会社グリーンメディカル>
https://aoba-.jp/
<wantedlyインタビュー記事>
https://www.wantedly.com/id/keiji_doi_career_art
<連載コラム>
・20代からの仕事術
https://note.com/kay88/m/m771259df2325
・チームの力を最大化する組織論
https://note.com/kay88/m/md55d6c5bd88a
・経済考察
https://ameblo.jp/keijidoidoi/theme-10108304694.html
<プライベートについて発信>
・Instagram
https://www.instagram.com/kay.g88