土井啓史の経済考察ブログ

人が辞める会社と、続く会社の違いはどこにあるのか

こんにちは。株式会社Career Artおよびグリーン・メディカルの代表取締役、土井啓史です。私は経営者という立場から、日々、経済や組織に関するニュースや調査データに目を通しています。その中で気になったテーマを取り上げ、自分なりの視点で考察を書くようにしています。

今回目に留まったのは、「激動の時代に生き残る組織を作るには? リーダーに必要な6つの力」という内容の記事でした。最近、「人が定着しない」「採用しても成果が出る前に辞めてしまう」といった声を、業界や企業規模を問わず頻繁に耳にします。厚生労働省の雇用動向調査を見ても、若年層を中心に転職率は高止まりしており、人材の流動化はすでに前提条件となっています。

こうした状況になると、「最近の若手は我慢が足りない」「やる気が続かない」といった個人要因に議論が向きがちです。しかし、今回の記事、そして私自身が人材会社の経営者として多くの現場を見てきた経験から感じるのは、人の問題に見える多くのケースが、実は会社のつくり方の問題であるという点です。

ニュースが示していた、会社がうまく回らなくなる理由

記事の中で印象的だったのは、目の前に起きている問題への対処ではなく、その背景にある構造を見極める重要性でした。表面的なトラブルを「技術的な問題」として処理するのではなく、その裏にある「適応課題」を見誤らないことが重要だ、という指摘です。

例えば、ルールが分かりにくい、誰が最終判断をしているのか分からない、上司や部署によって判断基準が違う、といった状態は、社員のやる気や能力以前に、会社の設計そのものが未整理であるサインです。実際、経済産業省の人材版伊藤レポートでも、成果を出し続ける企業の特徴として、役割と権限の明確化や意思決定プロセスの透明性が繰り返し強調されています。

それにもかかわらず現場では、「意識を変えよう」「当事者意識を持とう」といった言葉だけが先行しがちです。しかし、どこで、誰が、何を基準に判断するのかが曖昧なままでは、どれだけ前向きな言葉を投げかけても、現場は混乱してしまいます。

現場でよく見かける、もったいない対処法

私が現場でよく目にするのは、成果が出ないから研修を増やす、人が辞めるから評価制度を一部見直す、といった対処です。これら自体が間違いだとは思いませんが、前提となる「決め方」や「役割分担」が曖昧なままだと、どんな施策を足しても根本は変わりません。

特に新卒や若手社員が、「何を基準に動けば評価されるのか分からない」「正解が日によって変わる」と感じている職場では、本人の能力以前に、会社側の設計が未完成であるケースが大半です。一方で、スタートアップやベンチャー企業では、人も資金も時間も足りず、「整えてから走る」余裕がない場面も多くあります。私自身も、目の前の課題に追われ、判断がぶれそうになることは何度もありましたが、それでも理想の組織像があるからこそ、今どこから手をつけるべきかが見えてくるのだと感じています。

会社の土台が整って初めて、MVVは意味を持つ

ここで、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の話になります。MVVとは、会社は何のために存在するのか、どこを目指しているのか、何を大切にするのかを言語化したものです。ただし、私は「とりあえずMVVを作れば組織は良くなる」とは考えていません。

会社のルールや判断基準が曖昧なまま理念だけを掲げると、現場では「きれいごと」「現実とズレているもの」として受け取られてしまいます。一方で、判断の基準がそろい、役割と責任が明確になっている組織では、MVVは迷ったときの拠り所として機能します。MVVは最初に振りかざす旗ではなく、仕組みが整ったあとに、静かに効いてくる考え方だと私は思っています。

経営者も働く人も知っておきたい、取り組む順番

今回の記事を通じて、改めて大切だと感じたのは、取り組む順番です。まず、何がうまくいっていないのかを冷静に整理すること。次に、会社の仕組みや決め方を見直すこと。その上で、ミッション・ビジョン・バリューを判断の軸として使うことです。この順番を意識するだけで、人材は活きやすくなり、成果も安定しやすくなります。

「頑張れ」と言う前に、会社ができること

仕事がうまくいかないとき、多くの人は自分の努力不足を疑います。しかし実際には、問題の多くは個人ではなく、会社のつくり方にあります。人材を活かし、結果を出し続けている会社ほど、精神論ではなく分かりやすさを大切にしています。何をすればいいのか、どう判断すればいいのかが自然と伝わる組織です。

私自身も、理念を語る前に、まず仕組みを整える経営を続けていきたいと考えています。それが、働く人にとっても、会社にとっても、長く続くための一番の近道だと信じているからです。まだまだ試行錯誤の連続ですが、失敗から学びながら、仕組みと文化の両方を育てる経営を続けていきたいと思います。

 

 

◆土井啓史の実績・プロフィール

 

1979年神奈川県横浜市生まれ。

幼少期を米国で過ごしたのち、慶応義塾志木高等学校、慶応義塾大学総合政策学部(組織論と戦略人事を専攻)を卒業。2003年にNECに入社。

営業職で経験と実績を積み上げ、29才で独立起業。

流通、小売、メディア、ITサービス、不動産、人材などのベンチャーで経営企画に参画した実績をもち、2019年より転職エージェントである株式会社Career Artを創業、同社代表取締役に就任。2025年より訪問看護事業をおこなう株式会社グリーンメディカルを創業し、同社代表取締役に就任。

 

<株式会社Career Art>

https://career-art.co.jp/

<株式会社グリーンメディカル>

https://aoba-houmonnkango.jp/

<wantedlyインタビュー記事>

https://www.wantedly.com/id/keiji_doi_career_art

<連載コラム>

・20代からの仕事術

https://note.com/kay88/m/m771259df2325

・チームの力を最大化する組織論

https://note.com/kay88/m/md55d6c5bd88a

・経済考察

https://ameblo.jp/keijidoidoi/theme-10108304694.html

 <プライベートについて発信>

・Instagram

https://www.instagram.com/kay.g88

 

引用

 

*1 https://news.yahoo.co.jp/articles/f670d0c564ba0232d589c530277088c81653683b