迎撃ミサイルPAC3を配備し、空に向け、自衛隊法を根拠に「ミサイル破壊命令」を出すなど、
「戦争前夜」?
とさえ思えるほどの大騒ぎをした、今回の北朝鮮ミサイル騒動。
自民党内からは、「この状況は、われわれにとって願ってもない、好機」などの声。
この国の政治はあまりに底が浅く、劣化している。
結局、政局がらみで利用しただけの、お遊びに過ぎない。
政府は当初、「発射後、ミサイルと判断されれば、迎撃する」などと言っていたが、発射後にミサイルかどうかを判断するなど、はなから不可能。
ミサイルか、人工衛星用ロケットかの違いは、積んでいるものが爆弾か、人工衛星かの違いにすぎない。
時間をかけて調査しても、落下物の破片を集めるなどご苦労なことをしてもわからない。
つまりは、最初からやれるはずもないこと言い、配備だけはして、物々しい雰囲気をつくり、何も出来ずにすごすごと撤収した。
中国、韓国は、「人工衛星だった」と発表した。
これは、両国の外交戦略上の、次の一手を打つためのものだ。
北朝鮮をめぐる情勢が緊張することが望ましいと思う国や勢力は「ミサイルだった」と言うだろう。
それだけのことだ。
(日本政府は「ミサイルだった」と主張している)
国民の政治に対する不満が高まり、権力を握るものが窮地に陥ると「対外危機」を利用する。
これは昔から繰り返されてきた。
ただ、戦略もなく、力もないものがそれをやれば、惨めな姿をさらすだけになる。
結局、2度も「発射された」と言う誤情報を流し、危機管理能力の欠落をさらした。
ミサイルかロケットかを論じることは意味がない。
ミサイルだとしても、今回の液体燃料を使ったものでは、燃料注入にあまりに時間がかかり、偵察衛星で発射準備の意図はすぐに世界に知れ渡ってしまう。
しかも機体を守る地下サイロすらない。
ノドンなどより飛距離が伸びるにしても、兵器として脅威になるようなものではないのだ。
北朝鮮は政治戦をしかている(政治カードとしてミサイル問題を使っている)にすぎない。
韓国の玄仁澤・統一相は、4月2日の会見で、北朝鮮の意図を「内部体制を引き締めると共に、米新政権をテストし、米国との交渉を早期に再開させたいのだろう」と分析した。さらに「軍事的対応はしない」「(発射が行われても)経済制裁は考えていない」「(決議にこだわらず)安保理で話し合われること自体が、北への制裁になる」と表明した。
「ミサイルだ」「迎撃だ」「安保理決議だ」「制裁だ」と大騒ぎをするだけの日本より、よほど冷静で、戦略的だ。
北朝鮮は、貧困と飢餓に苦しむ国民の潜在的な不満を、軍や警察などの力で権力を維持しているため、対外的な緊張を継続的に必要としている。
物騒なことを行うことで、国威発揚し、内部を引き締め、権力維持に有利になるよう国際政治戦をしかけている。
本当に戦争になんかなったら、それこそ北は終わる。
(北朝鮮は暴発する、といった議論があるが、それは、そう望む勢力が言っているに過ぎず、また、そう望む勢力が本当にイラクのように北をつぶす意図を持たない限りない。なぜなら、北の意図は、自分たちの権力維持が全てだから。)
今回の騒動を受けて、自民党からも、民主党からも、ミサイル迎撃システムの拡大論が出てきている。
稚拙だ。
この国は、他国政府から政治的に大人として見られていない。
米国が現在おかれている地盤沈下的な位置も、それを受けた意図も理化せず、これまで通り米国親分の威を借りて動いていれば事足りると思っている。
しかし、世界は今、大きく変わろうとしている。
平和を創るには、分析と戦略と思想と、戦争を必要としない経済システムへの転換と、構想と具体的な行動が求められる。
アジアの、そして世界の平和を願うなら、まず、国民の力で、この国の政治の貧困を変えることから始めなければならない。