モーツァルト「フィガロの結婚」の第二幕、幕が上がって前奏に続いて歌う’Porgi,amor~愛の神よ、安らぎを与え給え’を、聞いた。
オペラでは、舞台板付きでキリ・テ・カナワが歌う。短い曲だが、愛に生きていた過去と、今の現状の違いを神に切々と歌う。ここに、伯爵夫人の気品と、恋に生きた情熱が出ていなければならない。彼女はかって街娘だったのだ。激しい情熱で伯爵と恋に落ち、結果、夫人になったことを思い出しての歌なのだ。キリはこの役にぴったりだ。当代随一だと思う。キリが歌う歌の抑揚、そして表情がそれを物語っている。そして、歌い終わってすぐに下手の袖にはいる。結果、彼女への拍手は無人の舞台に向けて行われた。余韻が残る演出だ。
そして次の幕に、再び同じような趣旨の歌をうたう。スザンナを待っていて思い出したのだ。モーツァルトが繰り返して強調した部分だ。失われた愛への追悼の歌’Dove sono’だ。(ブログにて記述済み)
そして、フィナーレ。夫人の「私は素直なのですぐに許します。」からの夫人のパートの歌。
愛の歌なのだ。キリの高く張る音と、そっと囁く歌。素敵な、寛容と愛情に満ちた包容力ある歌声だ。キリが歌うだけで、なぜかほのぼのした雰囲気が舞台に漂う。その彼女が恋の苦しみを歌うのだから説得力はある。
オペラの一幕もいいし、コンサート形式での歌唱も素晴らしい。最近はもうあまりステージにはたたないのだろうが、どうしているのだろうか。ライブで聞かれた方達は、幸せな方達だ。もう一度、映像で楽しもう。世紀の歌姫の歌を。