◆【時代の読み方】インチキ呼ばわりされる中国の高速鉄道 3

 時代の流れを時系列的に見ると、見えないものが見えてきます。NHKの放送や新聞・雑誌などを見て、お節介心から紹介しています。


■■ インチキ呼ばわりされる中国の高速鉄道 3

 近年、中国の高速鉄道がなにかと話題になっています。NHKやまぐまぐニュース、Gooニュースなどをもとに、鉄道についても造詣が深い『冷泉彰彦のプリンストン通信』を中心にまとめてみました。

 ここでは、この分野にあまり馴染みのない方を対象に、ポイントをわかりやすく紹介することを目的としています。詳細は、氏を初めとする、その分野の専門家の情報をご覧下さると幸いです。

 今回は第3回目として、前回に引き続きまして、その続きをお届けします。


■7 故障率が高く、技術格差は明白

 中国では、車両故障率の高さが問題になっています。

 2015年には、210件余りの列車事故が発生し、車両故障による事故が、前年比で45%も増加しています。その車両故障による事故が最も多いが高速鉄道だといいます。

 習近平主席の実績を上げるために、バラ色の計画を提出したつけが回ってきていると言えます。

 バラ色の提案書にいったんはのっても、いざ実行の段になると前に進まなくなるということの繰り返しです。

 この典型的な中国パターンは、経済面よりも、政治的な思考が大原則です。そのため、採算性はもちろん、完成の期日も明記されていません。兆元単位の資金もどんぶり勘定ですので、もめごとに繋がらないのが不思議なくらいです。

2016年春、日本が競合の末に敗れたインドネシアの高速鉄道も、政治案件としてほとんどタダ同然で工事を受注するという破格の条件で中国が獲得しました。しかし、中国の典型的なパターン通りで遅々として進んでいません。

 それもそのはず、中国側がインドネシアに提示した計画書は、日本が提示したものとまったく同じ内容だったと言われています。

 車両の製造技術、軌道の工事技術に加え、運用のための全体的な仕組みが、実積に基づく日本の総合力と比較すれば、万人が認めざるを得ません。


■8 外国の技術をだまし取って我がもの顔

「易姓革命」の国である中国は「国盗り」まで正当化する匪賊国家であり、こうしたパクリに対してはまったく罪悪感がありません。こう言い切るのは、まぐまぐニュース氏です。

「易姓革命(えきせいかくめい)」は、古代中国において、孟子らの儒教に基づく、五行思想などから王朝の交代を説明した理論のことです。(【Wikipedia】)

 中国では、ほとんどの新王朝の場合は史書編纂などで歴代王朝の正統な後継ですと、継承者としての正当性を強調します。また、新王朝の正当性を強調するために、前王朝と末代皇帝の不徳と悪逆が強調されてきました。

 このように中国は、国盗りが正当化されたり、ウソも1000回繰り返すと真実になると教えられたりする国です。すなわち「俺の物は俺の物、人の物も俺の物」的な発想が当たり前の国のようです。

そのような、中国では、世の中の常識は、中国の常識ではないのです。

 2016年、日本が競合の末に敗れたインドネシアでの高速鉄道受注合戦ですが、それを始め、中国は、世界各国で破格の条件を提示してきました。その結果、次々と高速鉄道計画の受注に成功した中国です。しかし、ここに来て、アメリカでは工事の中止が決定、その他の国でも同じような動きが出始めるなど、ここに来て暗雲が立ち込めています。

 その背景には、何があるのでしょうか?

 すでに当ブログ連載でもご紹介しましたが、中国の高速鉄道は、日本の「E2系」、ドイツのシーメンス、フランスのアルストム、カナダのボンバルディアのモデルがベースとなっています。

 日本が営業最高速度は275キロとしていることと見かけ上高速化するために、モーターを強化し、ギア比を大きくしているだけです。当然、そこにムリが生じ、実現の段になって技術力の違う中国がそのまま運用できるはずもありません。

 その好例が、インドネシアにおける、日中受注合戦に見られます。

 インドネシア中国高速鉄道社が、運輸省に提出した複数の言語による書類がありますが、中国語表記のものでさえ、現地の担当官が読めないことがあるそうです。

 インドネシア高速鉄道の受注合戦で日本側が提出した資料の用語で、中国にとっては不適切な表現があるにもかかわらず、その表現がそのまま使われていたという、一笑に付せないエピソードも伝えられています。

 このように、中国技術の底の浅さが見えるにもかかわらず、中国は、すべての技術が自前の研究開発によるものであるとふれ回っています。

 多くの国が、その現実を解っていながら、中国からの経済支援などの腐れ縁もあり、あるいは中国との貿易面でのメリットを考えたりして、中国の強引とも言えるような受注合戦に乗ってしまっているのです。

 EU諸国も、中国の東シナ海や南シナ海でも横暴の事実を知っていながら、貿易面でのメリットを考えて、あまり積極的な発言をしません。それどころか見て見ぬ振りをしてきています。中国も、それが解っていますので、足元を見て、領土問題にしろ、高速鉄道問題にしろ、横暴なことを続けているのです。


■9 日中合戦のインドネシア

 既述の通り、インドネシア高速鉄道においては、まだ記憶に新しい日中合戦が2016年3月に行われました。

 永年の日本との関係があるにもかかわらず、日本を蹴ったインドネシアですがいまだに着工すらできていません。「インドネシア政府は債務保証をする必要がない」という言葉に踊らされて、日本の新幹線技術の優秀性を知りながら、中国の高速鉄道導入を決定してしまいました。

 ところが、いまになって中国側がインドネシア政府の債務保証を求めてきています。インドネシア国民は、当然のことながら衝撃を受けています。

 折しもアメリカの中国高速鉄道の計画中止が報じられました。インドネシアの鉄道関係者の中には、「早期に中止を決定できて羨ましい。中国は机上の空論的な調子の良い話が多い」という嘆きを漏らしているようです。

 それだけではなく、早くも「日本案のほうがよかった」という声すら上がっているそうです。それに加えて、インドネシア政府は、「インドネシア・ジャワの横断鉄道は日本に建設要請する予定だ」と報道関係者に言っているそうです。


 インドネシアと同様に、日本との関係が深いタイでも高速鉄道建設計画で、中国と合意しました。ところが、中国のやり方に懸念を抱いているタイ政府は、高速鉄道建設計画に対して、方針を変更しました。

 中国から借款を受けずにタイの資金でまかなうことを決めました。また、一部区間の工事は自国企業が行い、残りの区間については延期すると発表したのです。これは、事実上、合意の白紙化といえます。


【参考資料】

 冷泉彰彦のプリンストン通信
 まぐまぐニュース
 Gooニュース
 NHKサイ

 

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