■■【経済の読み方】 2013年1月中旬を時系列的に見る

 世の中の動向は、アラカルト的に見ることも大切ですが、時系列的に見ると、また異なった面が見えてきます。
 ここでは、これまでの流れをコンパクトにまとめてご紹介します。


◆ LINEの普及と波紋 2013/01/20

 韓国のIT企業「NHN」の日本法人が提供しているスマートフォン向けに開発された「LINE」をあなたもご利用かもしれません。

 アプリケーションをダウンロードすれば、登録者同士は無料で通話やメールのやり取りができるので利用者は1億人を突破しました。2011年6月にサービスが開始されたばかりでの急増です。

 利用者の中で日本人が圧倒的に多いですが、「LINE」を運営する「NHNジャパン」の森川亮社長は、今年は本格的なグローバル展開を目指すと公言しています。L

 フェイスブックやツイッターのような世界的サービスに並ぶ可能性を秘めています。

 無料であるために携帯電話会社の収入を圧迫することは必定でしょう。また、SNS的な利用者が多いですので、未成年者が犯罪に巻き込まれる危険もあります。

 ICTは両刃の剣ですので、利用者が正しく利用することを願います。

◆ 振るわぬデパート業界の昨今 2013/01/19

 専門店、コンビニ、スーパーなどに押されて、平成8年から売上高が減少傾向にあったデパート業界です。

 日本百貨店協会のまとめによりますと、全国のデパート249店の去年1年間の売り上げは、合わせて6兆1453億円余りでした。前年同期比で0.3%の増加で、これはなんと16年ぶりにプラスに転じたことになります。

 東京や大阪などの大型店で売り場の面積を増やす改装が相次ぎました。また、一部の消費者の間で高級時計や宝飾品などを購入する動きがいくぶん強まったこともあります。

 東日本大震災のあとに消費が大きく落ち込んだ反動で衣料品の販売が回復したという要因もあります。

 いずれの要因も特殊要因と考えられますので、デパート業界の凋落が底打ちしましたと楽観視はできそうもありません。

 業界も「このところの株価の上昇などを受けて、消費が上向くことを期待したい」という見方で、アベノミクス頼みという感がします。


◆ コンピューターが小説を書く!? 2013/01/18

 NHKの番組の中で、菊地夏也解説委員が、コンピューター作家の話をしていたのを興味深く聴きました。

 星新一さん並みの、400字詰めの原稿用紙で10数枚程度の短い小説をコンピューターが書くというのです。

 短い作品ですと、起承転結が明確で、最後にオチがついて終わるなど、小説のプロット、
構造が分かりやすいという特徴があり、それを利用するようです。

 このプロジェクトに、人工知能の研究者や作家、それに星さんの遺族などが加わり、星さんの作品名にちなんで、「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」という名称がつけられているのもおもしろいですね。

 作品が分析されますと、それに基づいて幾通りも文章を書かせ、文章の組み合わせを何度も試すなどして、小説としての面白さも高めていきます。

 まだ、このシステムが完成しているわけではないのですが、4年後には完成、覆面作家として新人賞に応募することも検討しているそうです。

 コンピューターによる小説といいますと、キャリアウーマンの恋と成功を題材としたハーレクインが話題となります。完全にコンピューターで作っているのかどうかの真偽の程は解りませんが、少しずつですがその様な時代に入ってきているのでしょうか。

 データマイニングなど人工知能研究が進んできた今日、グーグルの検索エンジンでも利用されるようになり、従来型のSEO対策(検索エンジンの上位表示技術)では対応できなくなってきていますね。


◆ ドイツ経済の昨今と見透し
 2013/01/17

 EU信用不安が払拭されたわけではないですが、ユーロ高に診られるように、ここに来て落ち着きを示しています。

 ヨーロッパ経済をけん引するドイツの景気が気になります。

 2012年のGDP(国内総生産)の伸び率が、前年同期比で0.7%のプラスとなり3年連続でプラスを維持しています。2011年が3.0%のプラスでしたから、伸び率が鈍化していることが気になります。

 2012年の後半から企業の設備投資の落ち込みが顕著となり、景気が減速傾向になっているように見えます。

 一方、新興国などへの輸出が引き続き好調だったことや、自動車の好調にみられるように、個人消費が堅調ですので、心配するほどではないといえるのかもしれません。

 信用不安がくすぶっていますので、ドイツの景気減速状況の先行きについては注視する必要があります。


◆ トヨタ首位へ返り咲き、ドイツ車は? 2013/01/16

 トヨタは、2008年から3年連続、世界販売で首位でした。2011年は東日本大震災やタイの洪水の影響で大規模な減産を余儀なくされました。その結果、2011年はGM、フォルクスワーゲンに次ぐ3位でした。

 2012年は、グループ全体の世界販売が約970万台で、GM(ゼネラル・モーターズ)の928万台を超えて2年ぶりにトップの座に返り咲く見通しとなりました。因みにフォルクスワーゲンは907万台だったと発表しました。

 ドイツの大手自動車メーカー3社が2012年に世界で販売した新車の台数は、中国やアメリカでの事業が34.2%、中国でも24.5%のそれぞれの対前年比と好調だったことからいずれも過去最高を更新しています。信用不安問題の影響でヨーロッパの自動車市場が低迷するなかでも好調を維持しています。

 また、「BMW」も10.6%増えて184万5000台、ダイムラーも高級車、メルセデス・ベンツの販売が日本で25%近く伸びるなどと好調です。

 自動車市場が大幅に回復しているアメリカや、販売の拡大が続く中国やロシアなど新興国を中心に事業を強化しています。

 中国では落ち込んでいるトヨタですが、燃費の良い小型車でアメリカでは強さを発揮しているといえます。


◆ ロンドンの地下鉄は開業150年 2013/01/15

 多くの人が地下鉄を利用していると思います。近年は、主な都市に行くと地下鉄が走り、公共交通機関だけで、かなりいろいろなところに移動できます。

 その便利な地下鉄ですが、150年も前にロンドンでお目見えしています。当時は蒸気機関車が牽引していたのですから、煙に悩まされたのではないでしょうか。

 ロンドンで地下鉄に乗った方はご存知のように、車両が大変小さいです。幅も高さも寸詰まりの感じがするだけではなく、トンネル部分が小さいです。チューブのように遠景をしているので地下鉄のことを「チューブ」の愛称で呼んでいます。

 東京の大江戸線も小型車両ですが、こちらはトンネル工事費を大幅に削減することができたそうです。リニアモーターで動いていることは、意外と知られていません。ただし、リニア新幹線のような磁気浮上式ではないので音は他の地下鉄と同じでうるさいです。

 パリはメトロ、ニューヨークはサブウェイと呼び名がそれぞれ異なります。

 私は1970年代にニューヨークにいましたが、当時は車両も汚く、犯罪率も高い場所でした。薄暗く、そこにいるだけでも良い気分ではありません。

 東京と同様に、いろいろな路線が走っていて、色分けされています。地下鉄専用の地図は結構大きく、持ち歩くには不便ですが、不可欠です。

 料金は、ロンドンも、パリもゾーン制で、一駅でもゾーンから出ると料金が上がります。ニューヨークは一律料金で、私が住んでいた頃は25セントでした。

 これからも地下鉄は重要な交通手段の一つといえますね。


◆ タブレット端末がノ一トPCを超えるか? 2013/01/14

 アメリカの調査会社「NPDディスプレイサーチ」は、2012年の全世界での出荷台数は、タブレット端末が推計で1億4724万台、ノートパソコンは2億1765万台と発表しました。

 まだ、ノ一トPCが代数的には5000万台も多いのですが、タブレット端末の伸びは、予測以上に大きく、これまでの予測を2年前倒しにするほどです。

 それが今年に当たりますので、今年にはタブレット端末が逆転することになります。今年の予測は、タブレットが2億4170万台、ノートパソコンが2億705万台になるとみられています。

 私もiPadとアンドロイド端末を持っていますが、私の場合にはパソコンが中心です。閲覧とかメールなどの情報発信が中心であればタブレット端末が便利だと思います。私のように、クライアント様や所属協会のデータや情報加工、パワーポイント利用が中心な業務ではパソコンが今のところ便利です。

 タブレット端末で特に不便を感じるのは、アプリ間のC&Pがスムーズに行かないことです。(上手な利用法法があるのかもしれません)

 しかし、進化のスピードが速いタブレット端末も、使いづらさを解消してくれるようになり、いずれ、パソコンもタブレット端末も融合してしまうのだろうと思います。


◆ 年末年始に大量移動 2013/01/13

 この年末年始に、空の便や新幹線などを利用した人は、前年同期比で13%上回ったと発表がありました。取り方によっては9連休になるなど、長期の休みが取りやすい曜日配列がその一因のようです。

 1月2日には東名高速道路上り線、神奈川県の大和トンネル付近で57キロとなったそうです。新東名ができて渋滞緩和を見込み、多くの人が遠出をしたからかもしれません。

 成田空港を利用した人は119万人余り6%余り増加と、長期の休みで海外旅行に出かける人も増えたようです。海外旅行利用者は、ここ5年間で最も多い84万人でした。円高が続いていたことも背景にはありそうです。

 アベノミクス効果で、良くなることを期待します。


◆ 信用不安の中での欧州中央銀行のユーロ金利政策は? 2013/01/12

 財政状況の厳しいスペインの国債の利回りが、一時的とはいえ4%台後半まで低下、比較的落ち着いた状態が続いています。

 記者会見でドラギ総裁は、「国債の利回りは下がり、株価も上昇するなど、ユーロ圏の傷は徐々に癒えていますが、実体経済の面では依然として、弱さが残る」と述べました。

 ヨーロッパ中央銀行は、ユーロの金融政策を決める定例の理事会を開きました。

 厳しい景気の現状を金融面から下支えするため、過去最低になっている今の政策金利の水準を当面、維持することを決めました。金利の据え置きは、6か月連続です。

 低い金利を維持して金融面から景気の下支えを図る考えです。


◆ 社会インフラが老朽化して危険 2013/01/11

 中央自動車道・笹子トンネルの天井崩落事故は、ドライバーをはじめ多くの人にショックでしたね。「まさか、日本で・・・このようなことが・・・日本の品質は・・・」と思いましたら「日本の土木建設は手抜きがあたり前」とある人に言われて、さらにショックでした。

 NHK解説委員の松本浩司氏の番組を見られた方も多いと思います。

 日本の高速道路やトンネル、橋、上下水道などの社会インフラは、高度経済成長期に大量に造られました。それがいっせいに寿命を迎え、安全に使い続けるためには維持管理や作り替えに莫大な費用が必要になるからです。

 安倍新政権では、老朽化対策を含めて公共事業に重点的に投資をするとしています。しかしインフラ老朽化の全体像すら十分把握できていないのです。維持管理や造り替えの長期計画もないというのが実情です。

 インフラの寿命は、建設から50年ほどと言われています。現在約9%が寿命切れ、10年後には26パーセント、20年度には50パーセントを超えるそうです。

 これまでの公共事業は「新しく造ること」だけを考えてきましたが、今後は「壊れたら直す」という考えかたから、老朽化で危機的な状況になる前に手を打つことが求められます。

 松本氏は、老朽化が進むインフラの安全を確保していくために何が必要なのか、下記のように整理しています。

 ・工程表を作り、効率のよい長期的な維持管理をすること

 ・インフラの寿命を伸ばすさらなる技術開発

 ・自治体への技術的、人的な支援を強化すること、この3点があげられます。

 新規事業を行うのも、役所の古い基準を早急に見直すべきと私は考えます。

 私が知っているあるベンチャー企業ですが、従来の塗料よりは格段と耐久性、耐候性、耐光性等ですぐれている特許をもっています。ところが、資金不足と役所の規則で、商品化の一歩手前でにっちもさっちもいかなくなってしまっています。

 このように、日本ではまだまだ高い技術が埋もれています。それを利活用できるように、お役所の固い頭を柔らかくしてほしいと思います。

◆ ロシアのグローバル・エネルギー戦略とその背景 2013/01/10

 エネルギー大国ロシアがエネルギーのグローバル戦略の見直しを迫られています。

 NHK解説委員の石川一洋氏のテレビ番組「シェール革命に揺れるロシア」を興味深く見ました。

 「シェール革命」とオーバーな表現で言われるほど、シェールガス採掘技術の開発は大きな影響をエネルギーの世界に及ぼし始めています。今まで採掘不可能と思われたシェール層と言われる地層から、天然ガスの採掘が可能となったのです。アメリカエネルギー省の予想によりますと2030年までにアメリカの天然ガス生産は2倍近くに増えて、その40%がシェールガスになるとしています。

 アメリカでは、さらに最近ではシェールオイルと言われる原油も同様の方法で採掘が可能となりました。

 アメリカ国内のガス価格は下落を続け、日本などアジア市場の5分の1以下の安さとなっています。オバマ大統領も、シェールガスやオイルなどの生産の増加によってアメリカはエネルギーの純輸出国となると自信を示しています。

 ロシアは、2030年までに天然ガスの生産量、輸出量ともに1.4倍以上に増やすという強気の戦略を取ってきました。その背景には、ロシアのガス輸出の60%を占めるヨーロッパ市場へのパイプラインによる大量供給です。ほかに競争者がいなかったため、売り手市場の殿様商売を続けていました。

 ガスOPECのようなガス生産国の組織を作り、他のガス生産国カタールやイランと手を結び、世界のガス市場への影響力を増すことも考えていました。

 しかしこの戦略はアメリカのシェール革命を想定していませんでした。昨今の状況から、この前提条件はすでに破たんしていると言ってよいでしょう。このためロシアはあわてているのです。現在、戦略の改定を余儀なくされています。

 それ加えて、これまでは北米輸出をしていた中東のカタールがヨーロッパに向けて安値で輸出を始めたのです。この状況に乗じてヨーロッパ諸国は当然、ロシアにガス価格の値下げを要求しています。

 当然ロシアの目は、今まであまり重視していなかったまずアジアに目を向け始めました。東シベリアのガス田を開発、ウラジオストクへの3200キロにもおよぶガスパイプラインを敷設と、短期間にLNG液化天然ガスの基地作りの計画を決定しました。

 地球温暖化の影響を受けて氷が減少した北極海に新たな航路を開き、北極海沿岸の天然ガスや原油を日本や中国に輸出しようと考えています。

 高額なエネルギーコストを払い続けている日本としても、このさい対応を真剣に考えるべきです。

 石川氏はポイントを3つ上げていますので紹介して起きましょう。

 第一点は、原油価格連動性など既存のガス価格決定方法に代わる、新たな価格メカニズムを造ること

 第二点は、液化天然ガスによる世界市場形成

 第三点はアジア市場でのマーケッティングです。

 プーチン大統領が北方領土問題を含め対日外交に積極的な姿勢を示すのは、シェール革命に揺さぶられ、否応なくアジアに顔を向けるロシアの事情があります。安倍・プーチン両首脳は、平和条約締結に向けた作業を活発化させることで一致しています。

 日ロ関係は新たに誕生した安倍政権とプーチン大統領との間で、ゆっくりと動き始めています。北方領土問題を動かすためにもエネルギーも含む日ロの戦略対話を始める機は熟していると言えるでしょう。



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